たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

茎わかめラーメン『武道館』

人間は、何らかのアイコンを推す人と推さない人に分けられると思う。私のある友人は推す人であり、常にライブ通いとファンクラブ入会をする程度に芸能人にはまって課金している。他方私は推さない人である。これからはわからないけれど、彼女と同じレベルで…

林屋!『野ばら』

昨今の宝塚のあれやこれやに触れて思い出したので再読し、なんだか感動してしまった。ダラダラと飴をしゃぶるような快楽を味わえるサービス満載の一級レジャー小説。斜陽を前にした桜の木の下のシーンなんて「細雪」だし...。自分のメモによると実に17年ぶり…

最終回『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(24)

もう20年前だが、ドイツは、ペットボトル大国から出かけていくと、大都市でさえ手軽に買える飲み物が全然売られていなくてちょっと困った。もちろん、わかっていれば対策できることなので、今もエコ先進国であってほしい。 二度とも仕事で、ヴィスバーデン、…

ザ・名物『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(23)

名物が自分の口には合わないことはままある。これは地元の人は食べない典型的な作られた名物だが、ローテンブルクで食べたシュネーバルは泣きたいくらい美味しくなかった。当時ミスドで売っていた生地の切り屑を集めたドーナツと比べると全然ダメだった。 だ…

家の献立『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(22)

私の世代でも、「家で食事を用意してくれるのは家族以外の人」という子はたまにいた。商売をやっている家の子とか。 たべものに淡白で、クッキーにバタをぬって、「こんなおいしいものはない」といってるのだから、簡単なものだ。姉も私も下の弟も甘いお菓子…

一番高級なおいしいアイスクリームの作り方『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(21)

コルドンブルーで作り方を教えている「一番高級なおいしいアイスクリーム」は向田邦子のエッセイに描かれた昭和の一般家庭での作り方と同じやぞ。材料も今よりはるかにいいだろうし、そりゃ美味しいにきまってる。 一番高級なおいしいアイスクリームの作り方…

コルドンブルー体験記『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(20)

『BUTTER』の個人宅料理教室の場面に続き、本場のコルドンブルーの授業風景は大変興味深い。うちの近所にも大手の学校があって「見てくれ」とばかりに窓が大きいのでそばを通るときはめっちゃのぞく。たぶん生徒は100人以上いる。独学で玄人はだしになって成…

日本人会『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(19)

日本国外で日本人ばかり誰かんちに集まって日本のもんを作って食べるのはたしかにとても楽しい。でも、彼女たちみたいな寿司は、面子に職人がいた一度だけだな。目の前で巻いてくれた手巻きが最高だった。これまでやったことがあるのはお鍋とかお好み焼き、…

トマトとシャンボン『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(18)

XXを食べると疫痢になる、という親の心配は向田邦子のエッセイにも書かれていたな。 「トマトだけ切ってくれればよいわ」 といって、トーストにトマトをはさんで、 「あーおいしい」 なんて思っているのだから、人間の好みも変るものだ。トマトを好きになっ…

肉畜とわたし『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(17)

ニワトリを絞めてカレーを作る体験をさせてもらったのは貴重だった、と肉を買って食べるたびに思う。畜産、屠畜、流通を誰かがやってくれているのだということ。そして、できればたぶん、週数日でも食べない日を作って地球全体の消費量を減らしていったほう…

油くさいわ『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(16)

「ランチから帰ってきた人の油くささ」といえば京都で勤めていた1年弱の間を思い出す。途中まで何のにおいなのか謎で、冷気の中を歩いてくるとこういうにおいになるのだろうかと考えていた。決まった定食店かラーメン店に行くのが原因であることは徐々にわか…

アメリカでおいしいのは?『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(15)

「アメリカでおいしいのは、なんといってもローストビーフ」だそうだが、私の住む街でそこまで美味しいのに出会ったことはないなぁ...。その手の業態のお店もどうしてもステーキ、ハンバーガーになってしまう。ニューヨークを中心とした東海岸のダイナーのほ…

ドリアン『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(14)

「日本は果物にめぐまれた国で、あまり高価でもなく」という記述があり、イチゴ、白桃が挙げられているけど、今の日本は米国と比べると果物の敷居が高いと思う。こっちの人は手軽にスナックにしてるけど日本では日常食とは言えない感じ。 1年ズレこんだはず…

クレープとは何かを説明『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(13)

ギャレットではないが、ひとつ「アタリ」が入っているちぎりパンはキンダーで何度か食べたことがある。食べ物に異物が入っているというのはどんなに注意しても結構危険だ。ましてや幼児なら、私が教員だったら絶対食べさせたくない。今のアメリカではやらな…

食缶とアセロラドリンク『スペードの3』

「アスパラとベーコンのクリームペンネ」、私がパスタでよく作るやつ。この文字面を見ただけで食べたくなる。 「食缶」がなつかしい。ていうか、給食にフランスパンが出るの? アセロラのドリンクもなつかしい。 「ごはんは? 私たちはもう食べたけど」ハイ…

紅茶『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(12)

朝吹登水子さんの登場。関係ないが私の英国の家族はみんなミルクのほうが多いミルクコーヒー派で、彼女みたいな優雅な紅茶の趣味をもたない。さらに日本にきてミルクティーに「ありえん」と引いていたのにはこっちが驚いた。 私はかやくごはんが好きだ。人参…

戦後のアメリカからの恵み『らんたん』(9)

「いちご水」は私も憧れたぞ。活版のくぼみが厳かな村岡訳で読んだので。何よりも、何杯もおかわりした欲張りのダイアナも悪い、とアンをかばったマリラ、子どもに対してすげえこと言うなーと印象に残った。 赤毛のアン 赤毛のアン・シリーズ 1 (新潮文庫) …

豆料理の缶詰『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(11)

最低限の健康な食生活の原則として、いちばん簡単でシンプルに聞こえる助言が「1日1回マメ類をたべる」「ひたすら食べるものの種類を増やす」である。それを聞いてからChipotleでも必ずマメを入れてもらうようになったし(それまではメキシカン料理のマメは…

戦時中『らんたん』(8)

ヨーロッパの大戦中の手記を読んでもよく「代用コーヒー」なるものが登場する。いよいよ危機の時、とっておきの本物を飲んだらいかにエネルギーが湧いたかということも。 「お疲れですよね。そうだ、授業が始まる前に、ご気分を変えてみませんか? 今日は涼…

おつけもの、レタス『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(10)

スナッキングといえば、西海岸のおつまみとしての枝豆の浸透ぶりに驚く。日本食レストランで名指しするのはもちろんのこと、普通に冷凍の「エェダマァミィ」を買って家でも食べている。鮨店に加えてどんどん増えてるラーメン店が出してるんですかね。 一般の…

ピーナッツ・ウィーク『らんたん』(7)

「ピーナッツ・ウィーク」、遠い記憶が刺激された。似たような誰かにこっそり親切にするならわしのことをどこかで聞いた気がするのだが、はっきり思い出せない。自分でやっていたら絶対に相手のことを覚えているはずなので体験はしていないのだろうが...。特…

おじやは太る?『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(9)

私は80年代の大半を地方で過ごしたが、うちにはなぜかサフランがあってたまに食卓に黄色いご飯のピラフやドリアが出てきたんだよな。母はチャレンジャーだった。アメリカに来て体感しているが、ちゃんこなべとかご飯みたいな元の素材の形が見えるものは、パ…

うなぎ『らんたん』(6)

私はたぶん生涯authenticなうなぎの蒲焼きを食べることはかなわないだろうなという予感がある。まあ、食べられたとして違いがわかるかといえばわからないかもしれないが。 昭和2(1927)年4月、道は日本に帰国した。 一年ぶりにタクシーで軽子坂をのぼり、甘…

学生のたべもの『もういちど生まれる』

勤めの傍ら通っていた今はなき某IT専門学校は、週末、オールでマシンが開放されていたのでクラスメートと誘いあさせてしょっちゅう利用していた。たまに1時過ぎに行くココイチも楽しみだったが、校内でホットの紅茶花伝を買って夜景を眺めながら止まり木で飲…

田舎の流行メニュー『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(8)

私が田舎の高校生だったころ、ココスのオニオングラタンスープがめっちゃ流行った時期があった。最初にそのおいしさを教えてくれた友人宅に行ったら、大ブームで手に入りにくくなっていたナタデココが出された。「うちでは数年前からデザートにしていて常備…

すき焼きの生卵『らんたん』(5)

カリフォルニア州は、飲食店で生卵を出せない。オーバーイージーとかも結構危ういと思うけど。 二人は有名なすき焼き屋さんを予約し、士官になったばかりでお金のないフェラーズに、お腹いっぱいご馳走した。鍋を囲み、煮えた肉を端から取って食べるという行…

しゃぶしゃぶなるもの、フォンデュなるもの『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(7)

私は大阪出身だが、実家にしゃぶしゃぶという料理は存在せず、初めて知ったのは関東の友人宅で(毎週末に夕食を共にするという離れのおばあさんから友人宅の内線に電話がかかってきて、何が食べたいか聞かれたらしく「ひさしぶりにしゃぶしゃぶでも〜」と8歳…

大正9年のマンハッタンの日本人『らんたん』(4)

ゆり(30代)はコロンビア大学に、道(40代)はユニオン神学校に通学。ふたりで留学生活。こんなの楽しいに決まってる。そこにロックフェラー家との邂逅が。 訪問客の誰もが遠慮なくよく食べるので、道とゆりは週の最初に一週間分の献立を女中さんも交えてよ…

夜食のたのしみ『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(6)

おとなって楽しいよね〜〜〜〜 リヨンは絹の産地として知られているほか、ブルゴーニュ産ブドー酒がおいしいし、食事のおいしいところといわれるだけに、楽屋ではそれこそ食べものの話ばかりだった。 皆、自分がいったレストランが一番おいしくて安いとがん…

のどを使うプロのタブー食と駅弁『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(5)

日本の駅弁の思い出は残念ながらあまり良いものではない。冷たくくっついた俵おむすびのまずさ。今だったら食べてみたい銘柄がいろいろあるのになー。そういえば、昨年帰国時に551に行列ができていて驚いた。20年前、毎日のように阪急を利用していたころはい…