たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

ニューヨークの魔法の食事

私ノ、話ヲ、大切ニ、シテクレテ、アリガトウ、ゴザイマス。

ウィルダは目覚めると、すぐに朝食用のオートミールの準備をし、大きな鍋でお湯がわくのを待ちながら、両足を伸ばしてベッドにすわり、手を組んでぶつぶつとインドネシア語で祈りをささげる。それが毎朝の日課だという。

テーブルの上に置かれた冷水を、一気に飲み干す。
きりりと冷えた白ワインと一緒に、ナスとベーコン、4種類のチーズを、それぞれトッピングしたピザを食べていると、隣のテーブルに外国人カップルが座った。

2ドルちょうどの差はあきらめたものの、それにより近づけようと、カロリー過多には目をつぶり、レタスとトマト付きのベーコンチーズバーガー・デラックスに、フライドポテトを添え、11ドル45セント分を注文する。

薄切りのハムとチーズを中にはさんでロール状に巻いて焼かれた、ジェネファーお望みのチキンがテーブルに運ばれてくる。
満足げな彼女を上目で見ながら、巨大なバーガーをため息と一緒に流し込む。

インドネシア出身のウィルダは、熱血クリスチャンだ。礼拝が終わると、手作りのパウンドケーキとコーヒーを手におしゃべりに余念のない教会員に、にこやかに歩み寄っては、寄付金を集めて回っている。

ようこそ、ニューヨークへ。さあ、歓迎のディナーを食べようか。
そう言って私は、夫をインド・レストランに案内する。香辛料の香りが店内に充満し、食欲をそそる。メニューには、カレー各種やタンドリーチキンが並んでいる。
インド料理はいつ食べても美味しいねえ。私はご機嫌だ。

そんなある日、私は母と新宿のデパートの地下食品街にいた。
夫がカレー粉をサラダにかけてくれたら、とても美味しかった、と母に話した。

岡田光世著『ニューヨークの魔法のかかり方』

このシリーズが売れたのは、つくづく上杉忠弘氏の装画の功績がめちゃくちゃ大きいと思う。
例えば、著者が撮影した写真とかだったら、同じ内容でもこれほど手には取られなかったはず。
ハレルヤブックです。