たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

トマトとシャンボン『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(18)

XXを食べると疫痢になる、という親の心配は向田邦子のエッセイにも書かれていたな。 「トマトだけ切ってくれればよいわ」 といって、トーストにトマトをはさんで、 「あーおいしい」 なんて思っているのだから、人間の好みも変るものだ。トマトを好きになっ…

肉畜とわたし『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(17)

ニワトリを絞めてカレーを作る体験をさせてもらったのは貴重だった、と肉を買って食べるたびに思う。畜産、屠畜、流通を誰かがやってくれているのだということ。そして、できればたぶん、週数日でも食べない日を作って地球全体の消費量を減らしていったほう…

油くさいわ『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(16)

「ランチから帰ってきた人の油くささ」といえば京都で勤めていた1年弱の間を思い出す。途中まで何のにおいなのか謎で、冷気の中を歩いてくるとこういうにおいになるのだろうかと考えていた。決まった定食店かラーメン店に行くのが原因であることは徐々にわか…

アメリカでおいしいのは?『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(15)

「アメリカでおいしいのは、なんといってもローストビーフ」だそうだが、私の住む街でそこまで美味しいのに出会ったことはないなぁ...。その手の業態のお店もどうしてもステーキ、ハンバーガーになってしまう。ニューヨークを中心とした東海岸のダイナーのほ…

ドリアン『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(14)

「日本は果物にめぐまれた国で、あまり高価でもなく」という記述があり、イチゴ、白桃が挙げられているけど、今の日本は米国と比べると果物の敷居が高いと思う。こっちの人は手軽にスナックにしてるけど日本では日常食とは言えない感じ。 1年ズレこんだはず…

クレープとは何かを説明『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(13)

ギャレットではないが、ひとつ「アタリ」が入っているちぎりパンはキンダーで何度か食べたことがある。食べ物に異物が入っているというのはどんなに注意しても結構危険だ。ましてや幼児なら、私が教員だったら絶対食べさせたくない。今のアメリカではやらな…

食缶とアセロラドリンク『スペードの3』

「アスパラとベーコンのクリームペンネ」、私がパスタでよく作るやつ。この文字面を見ただけで食べたくなる。 「食缶」がなつかしい。ていうか、給食にフランスパンが出るの? アセロラのドリンクもなつかしい。 「ごはんは? 私たちはもう食べたけど」ハイ…

紅茶『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(12)

朝吹登水子さんの登場。関係ないが私の英国の家族はみんなミルクのほうが多いミルクコーヒー派で、彼女みたいな優雅な紅茶の趣味をもたない。さらに日本にきてミルクティーに「ありえん」と引いていたのにはこっちが驚いた。 私はかやくごはんが好きだ。人参…

戦後のアメリカからの恵み『らんたん』(9)

「いちご水」は私も憧れたぞ。活版のくぼみが厳かな村岡訳で読んだので。何よりも、何杯もおかわりした欲張りのダイアナも悪い、とアンをかばったマリラ、子どもに対してすげえこと言うなーと印象に残った。 赤毛のアン 赤毛のアン・シリーズ 1 (新潮文庫) …

豆料理の缶詰『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(11)

最低限の健康な食生活の原則として、いちばん簡単でシンプルに聞こえる助言が「1日1回マメ類をたべる」「ひたすら食べるものの種類を増やす」である。それを聞いてからChipotleでも必ずマメを入れてもらうようになったし(それまではメキシカン料理のマメは…

戦時中『らんたん』(8)

ヨーロッパの大戦中の手記を読んでもよく「代用コーヒー」なるものが登場する。いよいよ危機の時、とっておきの本物を飲んだらいかにエネルギーが湧いたかということも。 「お疲れですよね。そうだ、授業が始まる前に、ご気分を変えてみませんか? 今日は涼…

おつけもの、レタス『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(10)

スナッキングといえば、西海岸のおつまみとしての枝豆の浸透ぶりに驚く。日本食レストランで名指しするのはもちろんのこと、普通に冷凍の「エェダマァミィ」を買って家でも食べている。鮨店に加えてどんどん増えてるラーメン店が出してるんですかね。 一般の…

ピーナッツ・ウィーク『らんたん』(7)

「ピーナッツ・ウィーク」、遠い記憶が刺激された。似たような誰かにこっそり親切にするならわしのことをどこかで聞いた気がするのだが、はっきり思い出せない。自分でやっていたら絶対に相手のことを覚えているはずなので体験はしていないのだろうが...。特…

おじやは太る?『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(9)

私は80年代の大半を地方で過ごしたが、うちにはなぜかサフランがあってたまに食卓に黄色いご飯のピラフやドリアが出てきたんだよな。母はチャレンジャーだった。アメリカに来て体感しているが、ちゃんこなべとかご飯みたいな元の素材の形が見えるものは、パ…

うなぎ『らんたん』(6)

私はたぶん生涯authenticなうなぎの蒲焼きを食べることはかなわないだろうなという予感がある。まあ、食べられたとして違いがわかるかといえばわからないかもしれないが。 昭和2(1927)年4月、道は日本に帰国した。 一年ぶりにタクシーで軽子坂をのぼり、甘…

学生のたべもの『もういちど生まれる』

勤めの傍ら通っていた今はなき某IT専門学校は、週末、オールでマシンが開放されていたのでクラスメートと誘いあさせてしょっちゅう利用していた。たまに1時過ぎに行くココイチも楽しみだったが、校内でホットの紅茶花伝を買って夜景を眺めながら止まり木で飲…

田舎の流行メニュー『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(8)

私が田舎の高校生だったころ、ココスのオニオングラタンスープがめっちゃ流行った時期があった。最初にそのおいしさを教えてくれた友人宅に行ったら、大ブームで手に入りにくくなっていたナタデココが出された。「うちでは数年前からデザートにしていて常備…

すき焼きの生卵『らんたん』(5)

カリフォルニア州は、飲食店で生卵を出せない。オーバーイージーとかも結構危ういと思うけど。 二人は有名なすき焼き屋さんを予約し、士官になったばかりでお金のないフェラーズに、お腹いっぱいご馳走した。鍋を囲み、煮えた肉を端から取って食べるという行…

しゃぶしゃぶなるもの、フォンデュなるもの『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(7)

私は大阪出身だが、実家にしゃぶしゃぶという料理は存在せず、初めて知ったのは関東の友人宅で(毎週末に夕食を共にするという離れのおばあさんから友人宅の内線に電話がかかってきて、何が食べたいか聞かれたらしく「ひさしぶりにしゃぶしゃぶでも〜」と8歳…

大正9年のマンハッタンの日本人『らんたん』(4)

ゆり(30代)はコロンビア大学に、道(40代)はユニオン神学校に通学。ふたりで留学生活。こんなの楽しいに決まってる。そこにロックフェラー家との邂逅が。 訪問客の誰もが遠慮なくよく食べるので、道とゆりは週の最初に一週間分の献立を女中さんも交えてよ…

夜食のたのしみ『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(6)

おとなって楽しいよね〜〜〜〜 リヨンは絹の産地として知られているほか、ブルゴーニュ産ブドー酒がおいしいし、食事のおいしいところといわれるだけに、楽屋ではそれこそ食べものの話ばかりだった。 皆、自分がいったレストランが一番おいしくて安いとがん…

のどを使うプロのタブー食と駅弁『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(5)

日本の駅弁の思い出は残念ながらあまり良いものではない。冷たくくっついた俵おむすびのまずさ。今だったら食べてみたい銘柄がいろいろあるのになー。そういえば、昨年帰国時に551に行列ができていて驚いた。20年前、毎日のように阪急を利用していたころはい…

ブナの実入りのサンドイッチ『らんたん』(3)

欧米の物語にでてくる食べ物の描写にうっとりするのは大正の時代も今も変わらない。 アーラムは進歩的な学校で何をするにも男女平等です。だけど、女子寮の門限が6時で男子は夜間外出自由なことだけがどうにも納得が行きません。でも、その分、男子たちは私…

パリのこどもパーティ『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(4)

これ読んで「バタと粉チーズをふっただけの」パスタを食べたくなり、夜の10時から作成した。家に常備してある材料だけでできてしまうのが問題だ。 「今夜はまかせるから、何かおしいもの作ってよ」姉にそういわれて、私はロンシャン通りに、買物袋をぶらさげ…

ワインではない、ブドー酒だ『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(3)

まだ「ワイン」というカタカナ語を使ってないんだよな。子どものころうちにあった絵本や聖書も「ぶどう酒」表記でそれなりに思い巡らしたものがあったので、どうもwineと同じ飲み物だという感じがしない。ましてや「白ブドー酒」=シャルドネだとは思えない。…

フレンチドレッシング『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(2)

手作りしたフレンチドレッシングのおいしさは、小学校の調理実習で知った。英語だのプログラミングだの壺仕込みの道徳だの、新しい科目がぎっしり詰め込まれた今の小学校で、調理実習をやる時間はあるのだろうか。そもそも家庭科の授業は...。 昼間ご馳走を…

たまごとセーヌ河『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(1)

レシピの説明がちょいちょい出てくることもあり、他の作品になく数字の扱いが興味深い。単語のひらき方は堺雅人のエッセイに似ている。どちらが先かはわからないが、連載誌だった『暮しの手帖』のかなづかいも思わせる。XX風を「ふう」に開くとことか。活版…

絵に描いたようないじめ『殿下とともに』

東宮侍従を務めた「オーちゃん」が今上天皇の婚礼を前に綴った手記で、雅子さまに一歩下がることを知恵として伝えなかった宮内庁や災害のお見舞いに動かない皇室への「苦言」は、賛同するか否かは別として今はもうこれほど親身な提言ができる人はいないだろ…

ベトナム料理流行時代『永遠の途中』

ザ・週刊誌連載小説。ずっとあらすじ文を読んでいる感じ。「ジェンダー」という語に注釈がついている。私は学生のときに上野ゼミに連れて行ってもらった程度には女性学に関心があったが、2007年当時に自分はどのくらい認識をアップデートできていたっけと思…

ソーダ水『けむたい後輩』(2)

ユーミンはリアルタイムでは『天国のドア』から入って、そこから遡ったクチだが、荒井時代の楽曲には十分ノスタルジーを感じる。オールナイトニッポンも結構しつこく聞いていた。リスナーが流行歌を地元の方言で歌う、という企画があり、工藤静香の『慟哭』…