たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

Entries from 2015-01-01 to 1 year

神様のいる食卓 坂直子『空が微笑むから』

京都教会牧師夫人、坂直子さんのメモワール。彼女は3年前に召天されている。縁あって本書を手に取った。教えとして印象に残ったのはヨンス牧師の口癖、「クリスチャンは日曜と水曜に教会に行くもの」。確かに日曜の礼拝を守るだけでは、霊の乾きが出てくる。…

カニだ、肉だ、膜の張ったミルクだ<キライ 林真理子『断崖、その冬の』

食べることが好きな人なんだろうな。 「ちょっと」本を読む人、特に女性なら、一度は林真理子を読みまくる期間があるのではないだろうか。といっても、流行モンが書かれているだけに廃れるのも早く、描かれた女性も古くさく、これからはどうか分からない。御…

私を支える言葉 吉田修一『悪人』

カレッジの日本映画講義で取り上げられたので、仕方なく電書で買って読む。この手の映画化前提みたいなクラスタの作品を読むのは時間のムダである。 一点、物語とはそれつつ挿入されいているオッサンのモノローグが、昔、飲み会でクライアントから聞かされた…

みそ汁と魚 吉本ばなな『TUGUMI』

えーと、この本、私が懐かしのセンター試験を受けたとき、現代文で出題されてえらい話題になりました。 「既読の人が多く不公平では」というヘンな意見が噴出したのです。私は受験当日に初めて読んだひとりです。ばななさんが流行っていることは新聞の書籍広…

砂漠で朝食を アガサ・クリスティー 中村妙子訳『春にして君を離れ』

松本清張ばりに面白いユニークなサスペンス。発表当時はメリー・ウェストマコットという別のペンネームで出されたほど、誰も殺されず、誰も探偵のマネゴトをしない。で けれども日常にひそむ秘密、真実が、時には一番コワーイのである。人生に満足しきってい…

メシ作りの耐えられない軽さ 神谷美恵子『神谷美恵子日記』

この本が電子化されていたのはちょっと意外で嬉しかった。偉人の日記を読むと、「人生ってあれこれ詰め込めるものだな」と思う...。とにかく凡人よりも生きてる時間が濃い。彼女は意志の医師である。 で、千葉敦子氏が『ななめ読み日記』で「(彼女に)弁当…

コンビニのサンドイッチが懐かしい 五十嵐貴久『年下の男の子』

例の黒服の男が食前酒を運んできた。すぐ後ろから、作務衣のような服を着た若い男が前菜をテーブルに並べてくれた。「左から、タケノコと湯葉のポワレ、壬生菜と鮎の煮浸し、空豆とゴルゴンゾーラチーズとフォアグラのパテ、一番右が浅蜊のソテー、ガーリッ…

キャシー・フリードマン優勝 村上春樹『シドニー!』

『村上さんのところ』をきっかけに、村上さんの紀行本を読み返しまくっている。この本については何の記憶もなかったのだが、キャシー・フリーマン優勝のシーンに感動。彼女自身の言葉もいい。 シドニー! コアラ純情篇 (文春文庫 む 5-5) 作者:村上 春樹 文藝…

チンパーティ 内館牧子『女盛りは意地悪盛り』

車社会に引っ越してさみしいのは、出かけた先で気軽に飲めなくなったことだ。「自分チ」か、「人んチに泊まるとき」が唯一の飲酒の機会である。 (実際のところ、私の住むカウンティでは「1杯くらいのアルコール量まではOK」的なルールがあるので、たいてい…

サンドイッチとコーヒー 村上春樹『色彩を持たない、多崎つくると、彼の巡礼の年』

この本を読んで「かもめ食堂」を思い出し、今、そばで流している。 「かもめ食堂」は折々に見返したくなる不思議な作品。 ところで、村上作品を読んだのは久しぶりだったが、メタファーに富んでいることに驚く。質問サイトで彼の戦争や原発に対する意見を読…

63個のミートボールの縁 Jason Priestley: A Memoir

ビバヒルのジェイソン・プリーストリーが昨年出したメモワールから。 後半2つのエピソードはなかなか印象深かった。 彼はカーレースの事故で生死をさまようのだが、家に戻ってしばらくの間、毎日昼いっぱいかけて料理に挑戦し続けたのは良いリハビリだった…

食べられさえすれば 山本文緒『再婚生活 私のうつ闘病日記』

小さな佳品集『絶対泣かない』で鮮烈なシーンを焼き付けられて以来、山本氏の作品はほとんど読んでいる。 彼女が闘病生活を送っていたことは何かで読んだことがあった。 寛解を迎えたときの記述が、『絶対泣かない』の読後感に似て映像のようだった。 本書で…

京都チーズポテト 佐藤優『同志社大学神学部』

バイブルスタディをしているので、「神学生」がどんな学びをし、どのような生活を送っているのか非常に興味がある。 ましてや日本の大学であれば希有。 さらに同志社は10年前しょっちゅう仕事で訪れ、散歩を楽しんだ地である。 とても楽しく読んだ。 大山君…