たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

Entries from 2020-12-01 to 1 month

ポケベルが鳴らなくて 山本文緒『ブラック・ティー』

ポケベルや固定電話の留守電の使い方について知りたい人はこの短編集を読もう。 ちょうどやかんのお湯が沸いたようなので、僕は台所へコーヒーを淹れに行った。彼女はブラックが好きなのだ。ミルクと砂糖をたっぷり入れないと飲めないと僕は違う。ゆっくりと…

仙台の芋煮会 内館牧子『養老院より大学院』

この本は文庫2回、電書1回買ってしまった「特定のエピソードのために読み返したくなる」エッセイ。今読むと、院試の英語試験を「これでもかの意訳」で乗り切った、と繰り返してあるのが気になる。どうも「意訳」を原文に不誠実なネガティブな仕事だと思って…

ヨーロッパあちらこちら 犬養道子『お嬢さん放浪記』

本書で、犬養さんが療養していたサナトリウムが近所にあったことが分かって驚いた。 お嬢さん放浪記 (角川文庫) 作者:犬養 道子 KADOKAWA Amazon <アメリカ> アメリカに行ったら、浴びるほど飲もうと楽しみにしていたアイスクリーム・ソーダも、ついぞ口に…

アメちゃん 山本文緒『あなたには帰る家がある』

20年ぶりに改訂版を再読。とても良かった。 自宅外での食べ物の気軽なやりとりがしにくくなって、「アメちゃんコミュニケーション」は簡単ではなくなってしまいましたねえ...。 教会の屋外礼拝に行ったら、そうはいってもリフレッシュメントはあるんだけど、…

田辺聖子『女の日時計』から

「…まあ、その話は止そう。肉が美味い……。空気がいいからよけい美味いのかな」 彼はよく食べた。沙美子にも炭火で焼いた肉や野菜がおいしかった。そのことが、気持ちを楽にした。運転するからと、彼は酒を飲まなかったが、それもよかった。 「沙美子さんて、…

ほとばしる食欲 山本文緒『自転しながら公転する』

人間同士をつなぐ、そして人間の本能を呼び覚ます(無心に箸を動かす描写多し)会食の場面がいっぱい。そして、空気を変える甘味の時間も折々に。自転しながら公転する(新潮文庫)作者:山本文緒新潮社Amazon ものすごく美味いんだと連れて行かれた店は、バ…