たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

Entries from 2021-01-01 to 1 month

竹の子ご飯 山本文緒『紙婚式』

竹の子ご飯と茄子の漬物。いーなーいーなー。 「おはよう。食欲ある?」エプロン姿の妻が私を振り返って微笑んだ。ギンガムチェックのテーブルクロスに温かいパンの皿、一輪挿しのガーベラ。幸福を感じていいはずの風景なのに、私は不吉な空気を感じた。妻は…

マラソンメシ 柳美里『貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記』

ジンギスカンが供されるという「遠野じんぎすかんマラソン」。ここまでど真ん中ではなくても、地方のマラソン大会ではだいたい地域の名産をふるまってもらえる。大会公式の配布ではなくても、沿道で近所の人がお八つをくれたりして交流できるし。開催する側…

シリコンバレーメシ Uncanny Valley

知ってたけど、日本の報道、いよいよやばい...感染者数減ってきてますね、だとぉぉぉ。そもそも全然検査足りてないじゃん。ちゃんと検査方法が変わったことも報じなさいよ。「専門家」も何も指摘しないし、怖いよー。 「回転寿司が満員だった」とか、去年か…

職員室で朝食を 芦沢央『汚れた手をそこで拭かない』

家庭科室の醤油、とはなかなか不潔そうである。今は学校が食品を置きっ放しにすることはないだろうな。ていうか、英語もプログラミングも必修になった小学校課程に家庭科はまだあるのか? 調理実習のことは小中高ともに不思議といろいろ思い出せるな。お酢か…

「お母さん食堂問題」の背景 唯川恵『瑠璃でもなく、玻璃でもなく』

こうしてみると、ひたすら女性が男性の顔色を窺いながら飯炊きに徹している話だ。disgusting.たとえ袋ラーメンであっても私が作ることにこだわった過去の男性たちを思い出してしまった。でも2008年刊。結構最近だなぁ。。。 料理教室といっても自分たちで作…

いろいろな家メシのかたち 柳美里『人生にはやらなくていいことがある』

私の世代は小学校で全員で料理、裁縫などをするのに、中学・高校では男女別だった。私は意識が低かったので、それについて疑問を持ったことは一度もなかった。田舎のことで、40人の教室内に特別変わった家庭もなかったように思う。知る限り、ひとり親ゼロ、…

ネコとの食事 山本文緒『眠れるラプンツェル』

そういえば、気温が下がってからアパートの住人が餌をやっていた野良猫を見なくなった。どこかのおうちに引き取られたのだったらいいのだけど。この小説を最初に読んだのはたぶん20年以上前。何も覚えていなかったので初読と同じ。団地しんどいな。同じ空間…

音威子府へ 酒井順子・ほしよりこ著『来ちゃった』

青春18きっぷであちこち廻ったのが懐かしい。時刻表の読み方が分からなくて、覚える気もなくて、路線図だけをたよりに乗り継ぎ、何もない駅で2時間待たされたりなんてこともしばしば。私もきしめんのためだけに名古屋で下車したりした。 動物を愛でたその足…

酒井順子著『地震と独身』#東京五輪の中止を求めます

AERAの記事同様、「陽子さん(仮名)」というのは実在の人物じゃないんだろうな...と思われるエッセイが多い酒井氏の著作。本作はさすがに真の声が聞こえてくる。震災が起きた日、私はサンフランシスコで聖パトリックデーの緑一色のパレードに浮かれていたが…