たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

Entries from 2021-05-01 to 1 month

お店のおにぎり 石田ゆり子『旅と小鳥と金木犀』

「嬢」呼びにかなりの抵抗あり。気持ち悪いと言ってもいい。 「ゆりこさんっ! おみやげです!!」と、おいしそうなチーズを持ってきてくれた尾崎嬢。「わたしと、管野からですっ!! く、栗の葉で包まれた、チーズ、ですっ!!」(中略)おいしいプリンを持ってき…

チープ細雪 山内マリコ『あのこは貴族』

華子さんの婚姻までのくだりは『細雪』チーパーバージョンの趣。マキオカシスターズはもう少し自身を俯瞰してこらえるところはこらえる品があった。 オークラの旧本館、心底惜しいですね。アンティーククラッシャーといえば大阪維新だが、五輪のために東京も…

殴り倒されるように眠る 柳美里『JR上野駅公園口』

本当に翻訳するのがめちゃくちゃ難しそうでドキドキした。日本語話者でも理解できない台詞あった。 コンビニエンスストアも、店の裏にあるゴミ捨て場に、賞味期限切れの弁当やサンドイッチや菓子パンがまとめて置いてあって、回収車が取りにくるまでの間に行…

大根粥 in NZ 小林聡美『キウィおこぼれ留学記』

日本への渡航中止勧告が出て、この1年間何やってたのかと呆れつつ、外国体験記が読みたくなり手に取る。 英語圏に暮らして10年を超えるが、まだやってみたいんだよねー「語学留学」。『かもめ食堂』の前の体験が書かれた作品で、著者のまるっとした「ガイコ…

焼き芋の力 石田衣良著『再生』

Kindleの表示にもよると思うが、「終わりかな」と思ったところから数ページ続く作品が何本もあった。ハタを楽にする「働く」の瞬間が詰まった作品集。「たべる」の表記もいい。 ネクタイを締めた白いシャツのうえに、梨枝子が残したエプロンをする。メニュー…

イニシャルKな食べ物 湊かなえ『花の鎖』

3代ごひいきにしているとはいえきんつばがよく出てくるなー、どころじゃなくて、「この人、きんつばきんつば言い過ぎじゃない...?」と笑えてくる。そしてきんつばのイニシャルも、からあげのイニシャルもKなのであった。 花の鎖 (文春文庫) 作者:湊 かなえ …

クレイマー、クレイマー 林真理子『小説8050』

先日、内館牧子、桐野夏生の最近の小説を手に取ったのだが、家族同士のダイアローグが耐えられず、冒頭だけで読むのをやめた。彼女たちも長く書き続けている人たちだから、筆力はあるはずなのだ。でも、それ以上にいらんもんがそぎ落とされている林真理子の…

再読だけど初読(初読の記憶なし)山本文緒『みんないってしまう』

「ガツーンと食べようと思って」とな。「がっつり」という言葉が生まれる前のこと。もう20年以上前のケータイ、テレクラの走りの時代。 私は食べる気のしない焼き魚を箸でつついて時間を潰した。 「お母さん、あったかいカルピス飲みたいよ」「そうね。今日…