たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

Entries from 2022-01-01 to 1 year

『山女日記』(3) ウニ、フランスパン

アメリカ人は山の上でも下でもトレイルミックスが好きだが、私はあれを食べたいと思わないんだよいな。なんかナッツを消化すること自体が疲労する。 汗をかいたときはスパムむすびがものすごく美味しいと思う。 二人の前にはせんべいの袋やチョコレートの箱…

『そして、バトンは渡された』(6) 試験前の夜食

中学生になって初めて夜食を許されたことは忘れられない。ま、最初は小学校のテストとの違いが何もわかってなくてひどい成績でしたけどね。夜食まで食べて遅くまで何をやっていたのかと。 「はい。うどん」夜、部屋で勉強をしていると、ノックをして森宮さん…

『山女日記』(2) 山で沸かすコーヒー

山の中でコーヒー沸かすのいいな〜。私は山コーヒーの経験はないが、味噌汁を沸かしていただいたことはある。軽装備で行けるコースながら、地元のレスキュー隊で副業でガイドをしている方に案内をしていただいたとき。登る前にスーパーに行ってお弁当を買い…

『そして、バトンは渡された』(5) アズる

料理をいやそうにいじり回す人(父親語では「アズる」という)と同じ食卓についていると落ち着かないのはよくわかる。もちろん、食事は命にかかわることであっていろいろ事情もあるから絶対ジャッジはしないけど、アズっていることを相手になるべく気取らせ…

『そして、バトンは渡された』(4) 手作り餃子

餃子は数多ある大人になってから好きになった食べ物のひとつだ。ただ、これに関しては「実家のしか知らなかったときはとくに興味がなかったが、外のを食べてみて美味のポテンシャルがあることを知った」料理である。実家のはニラがやたら多かったんだよね。…

『山女日記』(1) いちご大福

実は、途中まで、『淳子のてっぺん』『バッグをザックに持ち替えて』の著書がある唯川恵先生の小説だと思い込んで読んでいた...。もちろんそれで読書体験が変わることはないのだが、なんかすいませんという気になった。Kindleだと毎度表紙を見ることもないの…

『そして、バトンは渡された』(3) 学食

日本の大学の学食、好き。と言っても在学時はそんなに安いとも感じられずほとんど行かなかったが、卒業してから、幸い?仕事で方々の大学に行く機会があって、中でも同志社大、阪大、京都芸大のは思い出深い。女子大はオサレメニューやデザートもいっぱいあ…

『そして、バトンは渡された』(2)ザ・優しい味

瀬尾まいこさんの文章にはハッとする修飾が随所に見られる。「まっすぐに涙を落とした」とかね。でも、写経してみると、「優しい味」をわりと多用していることがわかった。 「優しい味」は私にとって思うところの多いフレーズで、最初にピックアップしたのは…

『そして、バトンは渡された』(1)勝つ丼

日本食レストランでバイトをしていたとき、かつ丼は大人気だった。でも、アメリカ人、結構ご飯を残すんだよな〜。あの店の飯比がおかしかったのかな〜。 こないだ3年ぶりに日本に行って、なか卯の丼(かつ丼ではなく牛玉丼)を食べられたのはほんとうに嬉し…

『オール讀物』と大判焼きとパジャマと 林真理子『成熟スイッチ』

あまりにも共感した箇所。本のある光景はしあわせよ。今はさらに書店や「貸本屋」に行かなくても、ゴロゴロしたまま本を買って読み始められるという20年前は想像もしなかった世界なのだが、学生時代に図書館から出てくるときのホクホク感、就職してからの湯…

桐野夏生『ハピネス ハピネス・ロンリネス』タワマンの食生活

本筋に関係ないけど、高〜いビルに住みたがる人の気がしれない。高〜い集合住宅で育つ子と土のそばの一軒家で育つ子では人生観が全然違うだろうな(どっちのほうがいいという話ではない。もちろん)昔、一瞬不動産の広告を作っていたことがあった。まだ入居…

林真理子著『テネシーワルツ』

この昭和の終わりに発表された小説を20年ほどの間に3形態で読んでしまったことになる。単行本、文庫本、そして文庫本を底本にした電子書籍。スタアが出先で振袖の着付け直しができなくなったところに洋服を持ってかけつけ、その表情の不潔さにゾッとする、と…

海を渡る「ジャワカレー」湊かなえ『往復書簡』から

そう、アメリカで入手できる日本のカレールーの中でも私の観測範囲ではジャワカレーが一番人気だ。この彼のようにあえて「ジャワカレー」を指定する。他のと比べて高めなことが多いが、こくまろよりゴールデンカレーよりジャワカレー。最悪妥協して一部の米…

『幸福な食卓』から

初めて手に取った瀬尾まいこ氏の小説。大変よかったのだが、兄妹で「愛おしい」「ぎゅっとしたい」と言い合うのが気持ち悪い。フィクションだけど。フィクションだから。 最近、空腹だけど何も食べたいものが思いつかない、無理には食べたくない、みたいな状…

ご飯食べた?『僕の狂ったフェミ彼女』

韓国の小説を読んだのはたぶん初めて。LAのコリアン系の友人たちはみんな礼儀正しくて大好きな人たちなのだが、確かにちょっとルッキズム、家父長制に縛られているな...という傾向はある。 ただそれは日本も同じだし、米国から韓国のエンタテイメントの表象…

林真理子『ミルキー』

些末なことだが、会話の中で「カレーライス」とは言わないよね。でも、中学校で美術の先生と理科の先生が結婚することになって、異動が決まったほうの先生が朝礼で挨拶に立ち、「みんなの目が三角形になってるんだけど...。XX先生(お相手)とはパチンコに行…

『日の名残り』夕食として申し分のないサンドイッチ

原書でしか読んだことのなかったイシグロの邦訳を初めて手にとって感激した。解説で丸谷才一が述べているように「土屋政雄の翻訳は見事なもの」。私は『アンネの日記』などの深町眞理子氏の翻訳が好きで書き取って勉強したりしているのだが、土屋氏のテキス…

湊かなえ『母性』から

「当時の少女マンガの主人公はこれが好きだったし、タイトルにもミントという言葉はよく使われていた」←わかる。荒川静香氏が歯磨き粉みたいで苦手だと言っていたっけ。 そんな状態で、喫茶店で売っているケーキを2つ詰めてもらった箱を、お母さんと一緒に食…

『燕は戻ってこない』から

『東京島』(何も覚えてない)以来、10年ぶりに手に取った桐野夏生。最近の作品は、冒頭の5ページで無理になったりしたのだが、今回本作を読むことができて、ずっと書き続けてくださってありがとう、という気持ち。面白かった。終わりもすごくよかった。私も…

富士日記(57)ついに完結

中断を経た終盤はやや毛色が変わって夫氏のセリフの書き取りが増え、初めから読んできた読者にとっては『エースをねらえ』11巻以降のような寂しさがある。 この「おいしいと言う」の連打が「あめゆじゅとてちてけんじゃ」っぽい。 9月14日裏の氷川様の祭礼。…

富士日記(56)私もごめんなさいと言わない

来訪者にパイナップルとコンビーフの罐詰をあげて喜ばれる、というのは微妙に戦時中っぽい。 8月22日(日) 快晴朝食 麦飯、味噌汁(大根)、炒り豆腐、焼肉、いんげんと玉ねぎ中華風サラダ、切干大根とあぶらげ炒め煮、桃。夕食 早めに、焼きにぎり、さけ。…

富士日記(55)天ぷら、奈良漬、たい焼き

思えば、寿司やすきやきだけにとどまらず、大人になってから好きになった食べ物は本当に多いなあ。天ぷらも奈良漬もたい焼きも全然興味なかったのよ、子どもの頃は。 朝 麦飯、豆腐味噌汁みょうが入り、さつまあげ大根おろし、切干と豚肉いり煮、きゅうりト…

『南相馬メドレー』と「お父さん、違憲なの?(目に涙)」

「フルハウス」は日本に行ったらぜひ行きたい書店。前回帰国したときはSNSなどでよく目にしていた大阪の隆祥館書店に足を運んだが、ネット上の情報のイメージと裏腹にあまりに小さなところでびっくりした。でも7冊買ってトランクで持って帰ってきたけどな。 …

富士日記(54)すいみつ桃、ぶどう、プリンスメロン

このあたりを読むと、山梨の甘い果物も糖尿の原因になったのではという感じ。 田中角栄の拘置所食は理想的では。 6月30日(日) 雨朝 麦ごはん、けんちん汁、とりささみバター焼、紫キャベツ酢漬、プリンスメロン。昼 トースト、とりスープ、果物ゼリー。夜 …

山内マリコ『かわいい結婚』ズワイ蟹のトマトクリームのタリアテッレ

2編目の「悪夢じゃなかった?」がよかった。男女の関係として理想的。だから夢なんだとはいえ。 グラタンとタリアテッレ食べたーい。 都会の有名な洋菓子店で何年も修行も修行したという職人が帰郷し、実家の裏に作ったという小ぢんまりしたパティスリー。ロ…

富士日記(53)糖尿病対策

糖尿病になりやすい日本の食習慣...。1型糖尿病は社会文化病だよね。金持ちも貧乏人もそれぞれ別の理由でかかる。アメリカに来てから知人2人を糖尿病でなくした。1人は爪先を切る手前まで行って亡くなり、もう1人はせっかく移植を受けられたのに数か月で力尽…

富士日記(52)「カツ丼が270円でカツライスが150円なのはどうしてだろう」

植木屋さんのじゃがいも弁当を「とてもおいしそう」という百合子さん。日本の見本ろう細工、新しい飲食店にはほぼないだろうけど、意外と廃れないですね。すごく面白いカルチャーだと思う。工場は一度行ってみたい。 4月23日(日) くもりのち雨朝 ごはん、…

金原瑞人『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』

いつからか積ん読になっていたのだが、本を減らしたいと思い苦痛を乗り越えて読みきった。こういう微妙な雑談が長い翻訳講師いる。縦書き・横書き考は収穫。 父親は釣りが大好きだったが、釣って帰った魚はよく自分でさばいていた。そしてそのうち、息子にさ…

富士日記(51)颱風

「颱風」。この本で初めて見た漢字表記。きちんと活字があって素晴らしい。 すきやきと言えば、昨日Hマートで買ったブタバラにハングルですきやきと書いてあるのが読めて嬉しかった。どんなあんぽんたんでも10日で読めるようになるというハングルだが、私は1…

富士日記(50)おいしがって汗を出す

西海岸ではとりあえず冷凍の巨大鰻が手に入る。先週もうちのアメリカ人が1人でどんぶりを作成して嬉し気に食べていた。私は本当においしい鰻というものを食べないまま人生を終える気がする。イメージとしては浅草で扇ぎながら焼いてるやつ...。獲れないとい…