ポートランドの知と夢の殿堂、Powell's書店で日本語の古本を見つけ買ったのがこれ。
他はいかにもブックオフ的ラインナップだった。在米日本人エッセイとか、英語本とか、全巻揃ってない村上とか、古いベストセラーとか(ワイルド・スワン...)。
あとまあ当然、買い取り側に日本語の本の知識があるわけもなく、値段も疑問いっぱい、逆さに並べてある本も。トホホ。
でも、そう日本人が多いわけでもないので見つけたときは嬉しかったです。
しかも、今どき珍しくしょうもない箇所に蛍光マーカーやシャーペンで印がたくさんつけてあって(全体がしょうもないので仕方ない)、胸にせまるものがあった。
ここに長く住んでいる人なのか、短期滞在で売り払って行ったのか。
移動中に読んだのだが、これほど旅に合わない、一期一会感の希薄な下らない本もないだろう。
ポンとでも呼びたい((c)中野翠)。
40代女性向けのSTORY誌に連載していたエッセイらしい。
(雑誌の衰退が激しいので、廃刊になっていないか一応確認した。まだあるっぽ)
新宿のパークハイアット東京の、ニューヨークグリルに行ったときの驚きを、今でも忘れることはできない。
52階から眺める夜景の素晴らしさに加え、インテリア、サービス、すべてが洗練されている。料理がアメリカ風で、あまりにも量が多過ぎるという声があるけれども、取り分けてもらうことも可能だ。何よりも、パンや野菜といった基本もののが本当においしい。(中略)
いつも夜訪れていたニューヨークグリルに、ランチがあることを知ったのは本当に偶然であった。ある人と待ち合わせ、新宿で行くところがないので、たまたま入ったのである。(中略)
私は知らなかったのであるが、ここのランチはものすごい人気なのである。なるほどと思うに、ビュッフェのいいところをうまく取り入れているのだ。
どんなに豪華なところであろうと、ビュッフェにあまりおいしいところはない。時間がたってしまうのと、たくさん盛りつける浅ましさとが、かなり味を落としてしまうようだ。
ニューヨークグリルでは、まず席に通された後、飲み物をゆっくりいただき、そしてビュッフェのテーブルに行く。ビュッフェはすべて冷菜だが、その豊富なことといったらない。
どこかの安いビュッフェのように、焼きソバやチャーハンということはもちろんなく、新鮮なサラダ類や、チーズ、テリーヌ、といったものがどっさり置かれている。これをたっぷりいただいた後、今度は注文したメイン料理をゆっくり食べる。最後は別の席に移り、今度は食べ放題のスイーツとコーヒーをいただく仕組みだ。一流のホテルのパティシエがつくるケーキやプリン、ゼリーといったものを見ると、女の人たちは目の色が変わる。これで4,900円というのが、高いか安いかは考え方次第であるが、優雅なランチを食べる女性たちで、いつもすごい人気である。林真理子著『「綺麗な人」と言われるようになったのは、四十歳を過ぎてからでした』
書く人によるのか、「いただく」という丁寧な言葉が鼻につく。
パークハイアット東京ももう25周年か...。
私は映画 Lost in Translation (2003) で「単なる高級ホテルじゃないらしい」と知った。
関西にも外資系高級ホテルが増えているけど、人手不足かついわゆる富豪向けのサービスが未熟な日本で、本物の要人対応のできる人がどれほどいるんだろう、と思うんだよね。
帝国ホテルでもバイトが働いていると聞いたときはわりと驚いたけど。