たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

おせいさん『お目にかかれて満足です』さあ、おあがり、おあがり。

実に、「これ食べよし」「こっちも食べなさい」と恵みが眼の前に与えられるの、泣けるほどの至福ですよね。
教会ではよくある。

人間にとって、
(さあどうぞどうぞ、おあがり。あれもこれもおあがり)
とタベモノを供され、しかもそれが、こまかいやさしい配慮で、熱いものはうんと熱く、冷いものはよく冷やして、ほろあたたかいものは、按配よいほろあたたかさで(ほろあたたかい、というのはへんないい方だけれど、たとえば、手でむすぶおにぎりなどは、あまり熱すぎても冷すぎてもいけない、炊きあがって芯にその熱さがのこっている、舌に快い、ほんのろしたあたたかさの御飯でないといけない)出されたとき、人は、
(やさしくされる幸福、ということの意味)
を考えないではいられない。

田辺聖子著『お目にかかれて満足です』より