たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

野草マスター  大原扁理『年収90万円で東京ハッピーライフ』

なぜか筆者を女性と思い込んで読んでいて、途中で「男」という言葉が出てきたときちょっと脳内補正を必要とした。
男女関係ない内容なんだけど。

白湯の後は紅茶を淹れます。セイロンを濃い目に淹れて、ミルクを少し混ぜるのが定番です。冬はしょうがのすりおろしたのと、たまにはちみつも入れる。

冬の朝ごはんの定番はスープ。季節の野菜とか豆腐をテキトーに入れて、コンソメで煮て、塩コショウで整えるだけのカンタンなもの。

昼ご飯は麺類が多いです。最近はお蕎麦か中華麺。具は、肉以外を基本的に1~2種類。冬なら人参とかしょうがをすりおろしたものか、春の間に自分で摘んできて乾燥させておいたヨモギ、もしくは桑の葉の茶殻など。あんまり入れると素材の味がわからなくなるので、これぐらいが良いのです。

ほぼ予定がないので、夕飯は17時ごろ食べてしまうことが多いです。定番は玄米とお味噌汁とたくあん。たまにギョーザとかを買ってきて食べることもあります。お米とお味噌汁もだいたい3日分は作っておきます。炊飯器がないので、鍋で炊いてタッパに入れとく。

動物は秋にたくさん食べて脂肪を蓄えておき、冬眠の直前は何も食べずに胃を空っぽにしておくそうです。胃の中に未消化の食べ物を入れたまま長い眠りに入るのは命取りになるんですって。

その年のクリスマスの朝、わたしが目覚めると、食卓にはまがりせんべいが置いてありました。チラシの裏に「来年はこうご期待!by サンタ」とか見たことある筆跡で書いてあって、まがりせんべいには堂々と、隣のファミリーマートの値札が。198円って。

こないだ家で作り付けのコンロが壊れたときなんか、業者が交換に来てくれるまでの1週間、オーブンでスコーンを焼いたり、ロンドンにいた頃よく食べてたミューズリ(グラノーラみたいなやつ)を久しぶりに買ってきてヨーグルトにかけて食べたり。

玄米菜食になってから、他人が何しようが本当にどうでもいい。

わたしの食事は、俗にいう玄米菜食ってやつです。だいたい玄米、おみおつけ、漬物。納豆とか、サバの味噌煮とかを食べることもありますが、基本はこれを1日1食。あとは気分でアレンジを加えるというゆるいスタンスです。
粗食をするにあたって、無視できない言葉が「一物全体」です。これは食養という日本古来の栄養学の基本的な概念のひとつ。「野菜でも魚でも、食べ物は全体で完全な栄養素。まるごといただくのが、栄養のバランスがいい」という考え方です。

たとえば、お味噌汁。だしの素とかは使わないので、昆布を細長くハサミで切って、これを一晩水に浸けておくだけ。水出しっていう、れっきとした調理法です。昆布は切った断面からだしが出ますから、切って一晩入れとくだけでいい感じになるんです。で、朝起きたら、これを火にかけて、ふつふつしてきたら絹ごし豆腐を切らずに投入。絹ごしは柔らかいので、鍋の中で箸を使ってお好みのサイズに切ればいいんです。昆布も取り出すのめんどくさいのでそのまま食べればムダになりません。で、あとは沸騰させないように味噌を溶かして終了!

こないだ歴史の本を読んでたら、平安時代の食事が載っていました。貴族は、当時の贅沢品である白米に、漬物に魚介に海藻に汁物に甘味にお酒に、調味料も味噌に塩にお酢と少しずつたくさんお皿に載ってきて、1食に10品ぐらい食べてるんですよ。
(中略)
それに引き換え庶民の食事の質素なこと! ごはんは玄米か、麦やあわ、ひえを混ぜた雑穀米。おかずは漬物1品に汁物。これだけ。庶民は働かなきゃいけないし、そんなに時間もお金もかけられないから、効率よく栄養が摂れる食事に自然となっていくんですね。逆に言えば、お金も時間もかからないのに栄養は摂れてるっていうことです。

◎月曜日
朝:トースト、りんごジュース
昼:桑の茶殻入りラーメン
夜:ごはん、かぼすと鮭のホイル焼き、たくあん
かぼすを友人にいただいたんですね、あんま使わないしとうしようかなーと思って。秋だし、鮭と薄く切った玉ねぎとかぼすに塩コショウ&バターを載せて、ホイル焼きにしたら美味しかったです。

◎火曜日
朝:トースト、りんごジュース
昼:ごはん、かぼすと鮭のホイル焼き、たくあん
夜:さつまいもと大豆のカレー、ごはん
昔買ったカレーのルーが、もう賞味期限切れそうになってて。あんまり肉食べれんもんで、代わりに国産大豆の水煮を買ってきました。基本、料理に使う材料は2種類までと決めてるんです。それで、秋っぽくて大豆にも合う野菜ってことで、さつまいもを1本まるごと使いました。
(中略)

◎水曜日
朝:トースト、りんごジュース
昼:ヨモギのかけそば、納豆
夜:さつまいもと大豆のカレー、ごはん
秋はあんまり野草が採れないので、春のうちに保存食にしといた乾燥ヨモギが活躍します。常備菜がない! なんてときにひとつまみ入れると彩りが加わります。

◎木曜日
朝:トースト、りんごジュース
昼:小松菜そば、納豆
夜:ごはん、ヨモギの味噌汁、たくあん
(中略)

◎金曜日
朝:スコーン、紅茶
昼:小松菜ラーメン
夜:鶏釜飯(外食)
小松菜は常備菜です。麺類にもごはんにも合う。小松菜じゃなくても、季節の野菜ならなんでもいい。葉物は軽くお湯にくぐらせてから、ごま油としょうゆで炒めるだけ。冬になると、根菜のすりおろしたのを常備菜にします。にんじん、だいこん、しょうがが多いかな。すりおろしても、冷蔵庫に入れとけば2~3日は大丈夫。オレンジに白に黄色、鮮やかな色を見ていると寒くても元気になります。

◎土曜日
朝:スコーン、紅茶
昼:ごはん、ギョーザ
夜:ごはん、ヨモギの味噌汁、納豆、小松菜炒め
たまに食べたくなるギョーザ。普通のチルドのやつを買ってきて、焼いて食べました。
(中略)

◎日曜日
朝:トースト、りんごジュース
昼:ごはん、ギョーザ
夜:ごはん、豚肉と野菜のサムジャン炒め
最近、朝はだいたいトーストにりんごジュース。しょうがのすりおろしを入れて、レンジでチンします。(中略)夕食は介護の仕事先で作り、一緒にいただきました。

紅茶とスコーンが好きです。
スコーンというのは、イギリスの代表的なお菓子のこと。ちょうど、パンとケーキの中間みたいなやつ。ホテルとかでハイティーを頼むと、必ず3段プレートに載って、円盤型のゴツゴツしたのが出てきますよね。あれらを少しずつ食べながら、ゆっくりと紅茶を飲み、会話に花を咲かせるのが優雅なひととき。
(中略)
庶民はスーパーで1箱1ポンドちょっとで売ってる、PG Tipsとかテキトーなブレンドのティーバッグのやつを買って飲んでます。労働者階級が1日に何度も飲むんだから、いちいちポットを温めて、茶葉から淹れてられません。庶民はマグカップにお湯を注いで3分!
これでも、ロンドンなんかは水が硬質で石灰も含まれていて、フツーの茶葉がとても濃く入ります。そのまま飲むと濃すぎるから、ミルクを入れるくらいがちょうどいいですね。で、ミルクを入れた紅茶がスコーンに合うこと!!
日本のスコーンってやたらサクサクしてますよね。なんかおしゃれなチョコチップとかも入ってて。でも本場のはあんなにサクサクしてません。食べ物が不味いことで有名なイギリスです。どちらかというとモッソモソ。喉につかえてしょうがない。でもこの食感だから、たっぷりのクロテッドクリーム(もしくはバター)と、ジャムと、濃い目に淹れたミルクティーが絶妙なマッチングを見せるのです。

食べられる野草は春に多いので、春は野菜をあんまり買わなくなりました。もちろん春以外はフツーに買いますけどね。
野草を採りに行くときに注意しているのは、食べられる分だけ感謝していただくこと。アメリカの先住民は薬草を作るとき、必ず祈りと感謝の儀式をするそうです。これをしないと薬草の効果が減るらしい。

◎野蒜
(中略)
味噌に混ぜ込んでそのまま放置することもあります。こうするだけで、勝手に味噌に浸かって、ピリッと辛味のきいた野蒜味噌の出来上がり。味噌汁などにそのまま使えます。
あとは、サッと湯がいて、酢味噌であえるのが酒のつまみにたまらんらしい。

◎桑
(中略)
この若葉をたくさん摘んできて、よく洗って、天日に干しておくだけで桑茶になります。わたしのアパートの場合はベランダがないので、フライパンで弱火にかけてじっくりカリカリになるまで乾煎りしちゃう。それで、これをティーバッグに小分けにしといて、好きなときにお湯を注いで3分待つだけ。お湯が黄色く色づいてきたら、飲みごろです。
そして、飲んだ後の茶殻は捨てません。この桑が桑として生まれてきたからには、最後まで美味しくいただくのがが隠居道。茶殻を再びフライパンで乾煎りして、今度は汁物に入れて、食べきります。緑茶なんかも、質の良い茶葉は、ごはんにかけて最後まで食べられるんですよね。

◎野萱草
(中略)
野萱草は、花が咲く前の緑のつぼみをいただきます。これをハサミで切ってきて、蒸して天日に干すと、金針菜という中華食材になります。金針菜は、お湯でもどして中華系の炒め物に使える。が、保存食にしなくても、よく洗って、ごま油で炒めて、塩コショウするだけで超美味しいおかずに変身。わたしはこちらのほうが好きかな。食感は、歯ごたえがあって、薄皮に覆われたメンマみたいな感じなので、ラーメンに乗せるのもウマい。

◎大葉
(中略)
摘んできたら、よく水で洗っておきましょう。薬味にも使うけど、チャーハンとか、炒め物の最後に香りづけに使うのが好きです。やはり梅干しとの相性がハンパないですね。真夏は梅干しと大葉の炒め物で乗り切るのが定番です。

パンとか漬物も、材料から買って自分で作ってみたり。漬物なんて、ジップロックの中で野菜を粗塩でもんで、一晩置いとくだけでできるんですよ。お金かかんないし、超カンタンじゃん。3日ぐらい余裕で保つしね。わたしがよく漬けるのは、きゅうり、大根、キャベツ、白菜とかかな。

大原扁理著『年収90万円で東京ハッピーライフ』