たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

富士日記(8)大岡さんのお裾分け

鍋もって近所を行き来するのいいよね。

河口湖駅で、かけそばを食べる。
(中略)
家に帰って湯豆腐をする。そのあとお茶漬を食べる。湯豆腐の中にベーコンを入れた。

今朝出がけに作ったやきにぎりを食べてから、私だけ眠る。
(中略)
ビールと漬物とコンビーフを出す。大岡さんはホワイトホースを下さる。
(中略)
夜 ごはん、味噌汁(さつまいもとねぎ)、さつまあげ、いわしかんづめ、キャベツバターいため。

7月25日(月)快晴
朝 ごはん、佃煮、まぐろ油漬、サラダ。
(中略)
夜 ごはん、ハム、なすの中華風炒め。

7月26日(火)晴
朝 ごはん、野菜五目炒め、卵焼、味噌汁(じゃがいも)。
昼 トーストパン、バター、ジャム、コンビーフ、スープ。
夜 ごはん、精進揚げ(なす、さつまいも、ピーマン、さくらえびのかきあげ、かぼちゃ)、佃煮。
ポコ食欲なし。草とスルメだけ食べる。

7月27日(水)晴
今日は1日、草を刈った。
朝 ごはん、味噌汁、のり、卵、トマト。
昼 ふかしパン、ピーナツバター、紅茶。
夜 かにチャーハン、スープ(玉ねぎ)。

7時、大岡さんのお宅に3人とも伺う。
ビール、ハム、チーズ、鯵酢のもの、なす煮付、牛肉バター焼、トマト、きゅうり。
なすの煮たのも、牛肉も、鯵もおいしかった。トマトときゅうりも、おいしかった。
大月の町の通りのトラヤ(?)の牛肉は松阪肉で、それなのに170円でおいしそうである。大岡さんがみつけた。
でも、今日の牛肉は、大岡さんが東京駅の三ツ輪から、わざわざ買ってきて御馳走して下さったのである。

7月29日(金)朝のうちうす曇のち晴
朝 ひじきと油揚げの煮たの、ごはん、豚しょうが焼、サラダ。
昼 カレーライス(主人のみ)。
夜 ごはん、魚(銀ダラ)のフライ、つけ合せは茄子とじゃがいも、キャベツ千切り。とりささみフライ(明日の分も揚げてしまう)。
(中略)
夜のフライを作るとき、花子に教える。

7月30日(土)くもり時々晴
朝 ごはん、とりのフライ、納豆、ひじきの煮たの、佃煮。
昼 ごはん、かに玉、サラダ、ふかしいも。
(中略)
くれ方、ごはんの支度をしていると、若いきれいなお嬢さんが、2人、ショートパンツをはいて、庭を下りてくるのが見える。大岡さんのお使いで、魚を届けにこられた。昨夜は遅くなったので今日持ってきた、とのことで、かますの肥った大きいのを3本頂く。大磯の網。夜のパン食の予定を変更。大喜びで、ごはんと焼魚にする。
夜 ごはん、かます、大根おろし、きゅうりといかの酢のもの。
昨日買った水密は、おいしくない。パンを食べているのと同じ味だ。

朝 トーストパン、ベーコンエッグ、ビーフスープ。
昼 ごはん、のり、うに、さば味噌煮。
(中略)
道ばたにひろげて売っているところで。キャベツ30円、きゅうり3本30円、いんげん1袋30円、大根1本20円。キャベツは新しいのをくれてやるといって、うしろの畠へ入って一株切ってきてくれた。トマトがもうじき出来るからな、といった。今年は雨が多くて遅いのだそうだ。いんげんもきゅうりも、今朝とりたてだ、といった。
(中略)
夜 ごはん、サンマ(主人と私)、牛肉ビフテキ(花子)、じゃがいもといんげんのバター炒め、きゅうりとトマトとキャベツのサラダ。
肉屋は、牛肉ヒレの冷凍を奨めたので試しに買ったが、水っぽく味はわるい。しかし、花子は寄宿舎生活のあとなので、感激して食べた。
ごはんが終りかけたころ、壮烈な大夕焼となる。

朝 ごはん、大根味噌汁、豚ひき肉中華揚団子、サラダ。さつまいもを電気鍋で焼く。
(中略)
駅でそばを食べていると、改札口の中側から立喰いしていたハイキングの女の子2人が、金を払わないで、ホームの方へ行こうとした。そば屋の親爺はとても怒った。その怒り方があまりひどいので主人と花子おどろく。
(中略)
河口湖の道ばたで。きゅうり3本30円、じゃがいも1袋80円。どっちもとりたてだという。きゅうりは4本入れてくれた。風が吹くので、朝採っても、すぐやわらかくなってしまう、と、小母さんはきゅうりのことをいった。ゴルフ場の近くで、下って行く大岡さんの車とすれちがった。
3時にじゃがいもをふかして、バターをつけて食べる。
夜 ごはん、精進揚げ、佃煮、きゅうり。
寒いので靴下をだしてはく。

武田百合子著『富士日記』より