たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

富士日記(13)第一次朝食、第二次朝食

第一次朝食、第二次朝食、ってなんかものものしい。テーブルの椅子が足りない大家族みたい。

朝昼兼用 ごはん、いぼだい煮つけ、大根味噌汁。
昼寝をしたら、4時過ぎまで眠ってしまう。くらげのように体がやわらかくなってしまう。
夜 手製クッキー、スープ、みかん。

昼 肉入りすいとん。
(中略)
夕方遅くまで、おとなしく遊んで待っていた女の子に、果物のかんづめをやる。
門の代金18,700円を支払う。
夜 かに入り炊きこみバター御飯、高野豆腐、くさや干物、かき玉汁。

10月8日(土)快晴
朝 味噌汁(じゃがいも、さつまいも、ねぎ、卵入り)、かに御飯。
主人、色々なものがごたごた入った味噌汁が好きだという。今日は喜んで食べている。納豆が入っていれば、もっとよかった、という。
(中略)
終って、ギョーザとビールを出す。ビールだけ飲んで、ギョーザは3つ位しか食べない。
(中略)
管理所まで行った帰り、石積工事をしている外川さんにあったので、よんできて、ギョーザを食べさせようとしたが、ギョーザは好かないらしく、ビールと東坡肉を食べた。

10月9日(日)
朝4時半山を下り東京へ。スバルラインを下ると、もうS農場のおじさんは、暗い中で、おでんの鍋を煮立てていた。

昼夜兼用 ごはん、豆腐味噌汁、豚肉、さつまあげ、大根おろし。

10月25日(火)晴
紅葉見物に、コンビーフ入りサンドイッチを作って、紅茶を水筒に入れ、11時半ごろ出かける。大岡さんの家へ誘いに行くと、雨戸が閉まっていた。
道ばたの野菜売りは、大根、やまいもを売るようになった。
(中略)
夜 ごはん、大根味噌汁、コンビーフ、さつまいもとコンフリーの葉を精進揚げにする。コンフリーはうまくもまずくもなし。

朝 ごはん、味噌汁(卵入り)、のり、コンビーフ。
(中略)
大岡さんは<奥様が勝山の大工のところへわかさぎを仕入れに降っているから、それで夕方から天ぷらをして食べよう。うちには一匹揚げの鍋があるから>と誘いにきて下さったのである。奥様が仕入れを終えて、迎えにくるまで、ビールを飲んで、かにかんをあけて待つ。
(中略)
昼 トースト、スープ(コンビーフ入り)。
(中略)
今日は十三夜なので、十三夜まんじゅうを作らせたからと、大盛りの皿から十ばかり袋に入れてくれる。タイヤのパンク直しの金はいらないというが、無理に支払うと、山いもを包んでくれる。私が山いもをもらっていると、中でテレビをみていた若い男(東京からきたらしい)が外に出てきて「これは何だ。うまいか。どうやって食べるものか」ときいて「おれも一袋欲しい」といって買った。白灯油もついでに買って帰る。
大岡さんの家へ伺う前に、主人は空腹だといいだして、買ってきた「ほうとうのもと」(手打うどんの幅の広いの)でネギ入り肉ほうとうを作って食べる。しこしこして本当の手打らしい。ほうとうを買った店できいたら、この辺は肉がないときは油揚げを入れるそうだ。そのほかは、有り合せの野菜を刻みこんで入れるそうだ。
6時、大岡さんのお宅へ。
ナポレオンという、ウイスキーだか、ブランデーだかを出して下さる。主人は大岡さんの家へ伺う前、ほうとうを食べながら「百合子は大岡のうちで酒をあまり飲んじゃいかんぞ。飲みだすと、ずーっといたがるからな」と心配そうに言った。<飲んではいけないかな。しかしお断りしては、もっとわるいことだ>と思い、はじめてナポレオンというのを飲んでみたら、濃すぎて、濃すぎて、急に空腹となるほどであった。
大岡さんのお宅の居間には、毛足の長いじゅうたんが2枚敷いてある。そこへ寝ころぶようにできている。
奥様は、川えびをむいてすり身にしてパンにつけたりして、何だか、とてもおいしそうな料理を支度なさる。食事となる。スイスの何とかという鍋には、同じ色の金串がついていて、金串にはとり肉がつき刺してある。鍋は食卓のガスこんろにかけ、サラダ油をいれて、わかさぎに粉をまぶしては入れる。金串のとり肉も揚げる。大根おろしとねぎと汁で食べる。大へんおいしい。私は50匹位(小さいので)。大岡さんもその位。奥様は次々とわかさぎを粉にまぶすので、忙しくて、なかなか食べられない。わかさぎは、この位小さく細いのが一番好きだ。私は、せっせ、せっせと、さめないうちに頂いた。このほかに、イクラ、サーデン、トマト、ペーストのカナッペが出た。

終って朝ごはんの支度、8時半。
朝 ごはん、味噌汁(じゃがいも、玉ねぎ、納豆、卵入り)、さつまあげ2枚(私)、梅干、わさび漬、佃煮。
(中略)
昼 わかさぎ天ぷら、十三夜まんじゅう。昨日頂いたわかさぎを天ぷらにする。
夜 肉入りほうとう。
(中略)
夜遅く、じとじとした雨となる。
ひじきと大豆煮ておく。

10月28日(金)終日小雨、曇、夕方になって晴
朝 もやしの味噌汁、ほうとうの残りを油で揚げてみる。かりんとうのようになった。ひじき煮、ごはん。
昼 おじや(卵入り)、ソーセージ。
3時 トースト、トマトスープ。
夜 かに卵入りチャーハン、わかめスープ。

10月29日(土)快晴
朝 カレーライス(主人の第一次朝食、5時ごろ食べたもの)、わかさぎ天ぷら、ごはん(主人と私、第二次朝食)。
昼 じゃがいものふかしたの、カレーの残り、パイナップル。
夜 手製クッキー、トマトスープ、とろろ芋。
(中略)
原っぱに車をとめ、湖を見ながら、おにぎりとバナナを食べる。

武田百合子著『富士日記』より