たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

富士日記(16)昭和42年の年明け

この時点でもまだ私は生まれていないが店売りのクリームパンが存在している、文化的!と思ったところで朝ドラで戦時中に女学校にクリームパン売りにきてた描写を思いだした。ゼリーも作ってるし、うどんをバターで炒めたりもしている。

昭和42年

1月元旦 雨風つよし。なまあたたかし
朝 雑煮、ぶどう酒、正月重詰め、手製ケーキを切る。
昼 ごはん、塩鮭茶漬、ソーセージ。
夜 味噌入りほうとう(主人)、釜あげうどん(私、花子)、だしを手作りでとったら、おいしかった。

1月2日(月)
秋のように晴れる。富士山は3合目あたりまで雪が厚くかかる。
お雑煮のあと、みんなで初詣でへ。
スタンドにより、手製のデコレーションケーキを半分あげる。
富士吉田の浅間神社へ。
(中略)
本栖の茶店で。クリームパン2個、アンパン2個80円。牛乳、冷たいの1本、温かいの1本60円。
(中略)
一服していると、正月料理を次々に裏の母屋から運んできて、すすめられる。
いなりずし、のりまき、わかさぎのフライ、豚肉と野菜煮込み、きんぴらごぼう、中華まんじゅう。それと、かんビールの口を開けてから、主人の手に持たせてくれる。
(中略)
昼 ごはん、オムレツ、もやし炒め。
夜 パン、スープ。
今日買った食パンは、包紙をとると、中身は3種類の食パン。2枚ずつ高さや色合もちがう食パンだった。残りをあつめて紙で包んだのらしい。このパンの味のわるいこと!!

1月3日(火)快晴 少々雲が出る
7時半起床。
朝 かにとグリンピースの炊きこみ御飯、のり、かき玉汁、ハム、サラダ。
(中略)
昼 焼き餅、のりをまく。ほうとうを油で揚げる。スープ。
カルメやきをする。
夜 残りのかに御飯、粕漬鮭、くらげときゅうり甘酢、キャベツ塩もみ。

1月4日 快晴 風あり
今日も晴れる。アルプスは真白だ。
朝 ごはん、もやしとひき肉と卵炒め、さつまあげ、大根味噌汁、のり。
(中略)
へそまんにて。へそまん2箱(1ハコ150円)300円。へそまんでは馬賊鍋というのをやり始めた。

松田ランドで食事。
かにコロッケライス二人前400円、みかん1袋100円、キビ餅200円、羊かん100円。
今日は農協の団体らしい人たちで満員。
(中略)
夜 ごはん、サバ干物、かき玉汁、佃煮。

1月23日(月)晴 日中風なし
朝 ごはん、シューマイ、じゃがいもサラダ、キャベツ酢漬、わかめ味噌汁。
(中略)
昼 パン、スープ(玉ねぎ、トマト)、オイルサーデン。ゼリーを作ってたべる。
バターが少なくなっていたのに気がつかなかった。今度下へいったら買うこと。
(中略)
テレビ(山梨放送)では選挙についてやっている。石和、甲府あたりでは、毎日不正選挙運動がみつかるので、毎日「不正選挙がみつかった、このようなことでは困る」と放送している。

1月24日(火)快晴 暖かし
朝 ごはん、大根味噌汁、シューマイ、オムレツ(主人)、のり、佃煮、きゅうり酢漬。
主人は犬を連れて長いこと散歩に出た。犬はいやになったらしく、先に帰ってきた。
(中略)
わかさぎの天丼(わかさぎ4尾、菊の葉1枚)二人前、すまし汁(かまぼこととろろ昆布)、清酒1本、合計700円。
(中略)
3時に。うどんバター炒め(ベーコン、玉ねぎ入り)、主人だけ。
夜 手製クッキー、トマトと玉ねぎのスープ、きくらげ油酢漬。

松田に丁度12時に着く。食事。かにコロッケ二人前(私、主人)、サラダ(花子)合計600円。
(中略)
夜 ごはん、コンビーフかんづめ、小松菜と油揚げの油いため、大根味噌汁。
味噌が終り。今度、東京から持参のこと。

朝 ごはん、まぐろ油漬、さんま大和煮、大根おろし、かぶ味噌汁(卵入り)、キャベツとわかめ酢のもの。
(中略)
12月に出来た「うづら亭」へ入って食事。
うずらそば三人前240円。おでんもやっている。山菜定食というのは千円である。
うずらそばには、うずら卵1個、油揚げが入っていた。
(中略)
無声映画を観ているように、窓の草原の雨をみながら、3人ともぼんやりとうずらそばを食べる。

松田の食堂で休む。8時。
かにコロッケ二人前400円、トースト二人前。
(中略)
かにコロッケは少し小さくなった。御飯はあと10分経たないと出来ないというので、トーストをとる。おかみさんは、コーヒーをサービスしてくれようとしたが、日本茶にしてもらう。
(中略)
バスの運転手と車掌は、コーヒーとトーストをサービスされて食べ終ると、便所から出てきたおじさんたちを乗せて発車した。
(中略)
夜 ごはん、かき玉汁、コンビーフ、小松菜ピーナツ和え、わかめときゅうり三杯酢、果物かんづめ。

朝 ごはん、味噌汁、さんまかばやき、ひじき煮たの、ぬた、夏みかんゼリー。
(中略)
昼 新じゃがいものむし焼、玉ねぎスープ、コンビーフ、アスパラガス。
(中略)
夜 かけうどん、のり、ねぎ、卵入り。ライチのシロップ漬をあける。
主人、かけうとんが食べたかったといって、おいしそうに残さず食べる。

朝 ごはん、シューマイ、卵焼、大根おろし、きゅうりキャベツサラダ、味噌汁。
昼 パン、トマトスープ、オイルサーデン、キャベツ酢漬。
アリや蝿が多くなった。
ポコは足ばかり舐めているのでみると、足の裏にバラスの粒が入ってとれないのだった。
夜 ごはん、粕漬酒、とろろ汁、夏みかんゼリー。
主人、腹が空いたというので、陽があたっているうち夜ごはんを食べてしまった。だから、ごはんのあとで長い散歩に出る。

朝 ごはん、かじきまぐろの煮たの、のり、卵焼、漬物。
(中略)
S農園は増築している。夏までに食堂を作るらしい。今年もうんと野菜を作るから買って下さい、と言う。(中略)ここは作れば何でも出来るから、欲しいものを言ってくれれば、それを作ります。だけんど、東京で使う洋菜で、スネを食べるやつ、あれだけはまだ作ったことがない」と言う。スネ、といわれたので考えたが「セロリのこと?」と訊くと「そうだ」と言った。
(中略)
昼 ごはん、大根味噌汁、まぐろ照り焼、大根切干と油揚げ煮たの、パイナップル入りゼリー。
(中略)
夜 湯豆腐、ごはん少し、トマト、ゼリー(私だけ)。
地元の豆腐は1丁が東京の2丁分より大きい。木綿ごしで固くしまっているから、食べでがあって、ごはんはいらなくなる。ゼリーを作って食べたが、よく考えてみれば、豆腐だってゼリーみたいなもので、主人がこれを食べなかったのは、ムダなことをしたくなかったのだ。
テレビで。
今日の暑さ、甲府盆地は最高31.9度。
何でもからからに乾いてしまう。切干の煮たのを食卓に出し放しにしておいたら、もとの乾いた切干になった。

武田百合子著『富士日記』より