たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

富士日記(18)箸にかかるとしんなりと重たいこんにゃく

かたわらで著者の評伝を読んだらデキ婚前に何度もおろしたとあってふつふつと怒りが湧く。避妊手段・堕胎手段といえば日本はいまだに他国より30年くらい遅れているが、さらに選択肢がなかったであろう時代に、相手にも著者自身にも腹が立つ。その後、良い夫妻になったことがうかがえるとはいえ。

堕胎の経験がある日本人女性を3人知っているが(1人は3回)、体への負担、スティグマ、諸々で今も他国の女性よりも苦しんでいると思う。

朝 ごはん、さんま蒲焼、わさび漬、佃煮、大根おろし、味噌汁(わかめ)。
(中略)
夜 ごはん、さつまあげ、茄子とキャベツの汁、卵炒め、アスパラガス塩茹で、プリンスメロン。
昼はパン、サラダ、紅茶だった。

7月11日(火)晴 時々くもり
久しぶりの晴れ。
朝 ごはん、さつまいも味噌汁、ベーコンエッグ、のり、わさび漬。
昼 釜あげうどん、煮豆。
夜 ごはん、厚揚げ、茄子しぎ焼、大根とこんにゃく炒め煮(この黒いこんにゃくのおいしいこと、箸にかかるとしんなりと重たいのである)。

昼 釜あげうどん、煮豆、わかめと玉ねぎのサラダ。
(中略)
「外川さんは三角チーズが好きだな。手に持たせると泥だらけの手でくるくるむいて、すぐ食べだす」と、主人愉快そうに話す

7月12日(水)くもり時々小雨降る
6時、眼をさます。もう、うぐいすと山鳩の声。
朝 ごはん、わかめと玉ねぎ味噌汁、納豆、かきオイル漬、大根おろし、わさび漬、煮〆め。
昨夜の煮〆めに豆腐半丁を板でしめて煮足したら、おいしい。こんにゃくもますます味がしみておいしい。
(中略)
昼 トーストパン、とりスープ、じゃがいも玉ねぎとアスパラガスのサラダ、ロースハム。紅茶をいれる。
(中略)
夜 ごはん、卵焼、大根おろし、煮〆めの残り、のり、うに。
私が二膳めをよそって、うにをごはんの上にのせ、その上にのりをのせたとき、大岡さん御夫妻が硝子戸のところに見えた。ポコが吠えるので風呂場に入れ、あと片づけをして、ビールとぶどう酒とキャビアを出す。大岡さんは一昨日来られた由。新しい魚が食べたくなるので一週間位経つと、一度大磯へ帰ることになってしまう由。虎屋の羊かんを頂く。

朝 ごはん、茄子ひき肉中華風炒め、わさび漬、佃煮、すまし汁(とろろこぶ)。
昼 パン、ハムエッグ、トマトスープ。釜あげうどん(主人)。
夜 ごはん(鮭茶漬にする)、漬物、果物のかんづめゼリー。

朝 ごはん、佃煮、油揚げつけ焼、大根おろし、味噌汁、のり、卵、
ポコの残していったもの、篭と箱と櫛をダンロで焼く。土間に落ちているポコの毛をとって、それも焼く。何をしても涙が出る。
昼 ハムサンド、とりスープ、紅茶。
(中略)
御飯どきだったが、へんなおかずだったから、枝豆、ハム、かに、で、皆でビールだけ飲んだ。
(中略)
夜は、釜あげうどんを食べた。

7月20日(木)晴、昼ごろ俄か雨
朝 かに、卵、グリンピースの焼飯、スープ。主人が作ってくれた。私の分も。
(中略)
昼 おじや、コンビーフ、白菜朝鮮漬風、トマトと玉ねぎサラダ。
(中略)
夜 ごはん(ハヤシライス)、枝豆ゆでたの、トマト、紅茶。

朝 ごはん、佃煮、コンビーフ、大根味噌汁、のり。
昼 パン、ビーフスープ、紅茶、トマト。
(中略)
夜 ごはん(のりまきをした)、さば味噌煮の罐詰、煮豆、トマト。

スタンドには千葉の車がとまり、ビーチパラソルの下で、アイスキャンデーを一家揃って食べている。そのキャンデーは赤くて、ひどく硬いらしく、何かいいながら皆で笑いころげている。売ったおじさんはパラソルの前を通るとき「そのキャンデーを食べるときは、皆、大笑いだなあ」と言った。よほどの硬さらしい。
(中略)
昼 釜あげうどん
(中略)
夜 ごはん、粕漬鮭、さつまいも味噌汁、やき茄子。

夜 ごはん、まぐろ、大根おろし、茄子にんにく炒め、果物ゼリー。

7月24日(月)快晴後くもり
朝 トースト、ベーコンエッグ、紅茶。

武田百合子著『富士日記』より