たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

富士日記(36)黄桃ゼリー

まめにゼリーやケーキを作っているのがすごいと思う。

7月25日(金)晴
花子より、31日夕方に学生村を発って帰って来るとのこと、しらせあり。
昼 チーズトースト、とりのスープ、野菜炒め。
(中略)
村役場に固定資産税1年分納める。
夜 カレーライス、黄桃ゼリー。

7月26日(土)晴 ときどき曇
朝 カレーうどん。
昼 桜めし、茄子中華炒め、炒り豆腐、かき卵汁、コンビーフ。
夜 ごはん、かにたま、夏みかんサラダ。
(中略)
夕方、草刈りをしていると、大岡さんが下りてこられた。ビールを飲む。あとから奥様が西瓜を半分持ってこられた。

7月27日(日)晴、俄か雨あり
朝食7時 ごはん、大根おろし、じゃがいも味噌汁、コンビーフ、わさび漬、のり。
(中略)
近藤さんと主人、「五十三次」の本の打合せ。ビール、鮭燻製、きゅうりとわかめ三杯酢、鴨蒸焼、かにたま、海苔にぎり。
6時、駅まで送る。
テレビで。グレープフルーツが自由化になると、1個50円位になるといっている。私はグレープフルーツを1個50円で早く食べたい。

7月28日(月)晴
朝 ごはん、コンビーフのコロッケ、キャベツときゅうり塩もみ、のり、うに。
(中略)
昼、私は昼代りに西瓜を食べた。主人は昼抜きで、朝食のあとよりずっと眠る。10時ごろより3時過ぎまで。起きてホットケーキ2枚食べ、草刈りをする。
夜 おじや(卵を入れた)、鯛味噌、佃煮、煮豆。
主人、一日罐ビールを飲みすぎたので、おじやが食べたいと言う。そしてまた、10時ごろ空腹となり湯麺を食べた。

7月29日(火)晴時々曇
朝 ごはん、のりとみょうがの吸物、ベーコンエッグ、わさび漬。
ヘリコプターで農薬を撒いたのだろうか。庭へ出ると粉くさい。むせる。
昼 牛乳ゼリー、じゃがいもを千切りにして炒める。
(中略)
夜 おかゆ、バター、のり、かつぶし、梅干。

朝 ごはん、キャベツ味噌汁、鮭の燻製と玉ねぎの油漬、鯛味噌、のり、卵。
管理所で。ピース5箱250円、卵4個68円。
昼 ふかしパン(ベーコンと玉ねぎ入り)、コーンスープ、サラダ。
夜 桜めし、朝のおかずの残り、いわし煮付、パイナップル。
ここのところ、桜めしばかりしている。桜めしは冷たくなってもおいしい。おにぎりにして海苔をまいてもおいしい。2人とも気に入っている。

10時半、山に戻る。先に大岡家へ寄り、鱒ずしと赤坂もち、その他野菜を届ける。デデが帰ってきていた。
11時過ぎ、皆で鱒ずしを食べて眠る。

昼 野菜スープ(主人はこれを飲んで又眠る)。
(中略)
春巻の皮を東京から買ってきたので使ってしまわなくちゃ。夜、春巻を作る。主人は下痢のため食べない。大岡にもやれ、と言う。大岡さんへ春巻を持って行く。
夜 おじや(かつぶしを入れただけ)、金山寺味噌、さつまいも甘煮。
おじやに卵をおとして食べ、また主人眠る。

8月3日(日)快晴、俄か雨あり
朝 ごはん、オムレツ、もろみきゅうり、いんげんバター炒め。
主人の下痢はすっかり治った。朝からオムレツが食べたいと言う。
昼 パン、バター、ジャム、コンソメスープ、牛乳ゼリー。

朝 ごはん、ハンバーグステーキ、サラダ、わかめとねぎ味噌汁、ひじきと大豆煮たの。
(中略)
昼 ホットケーキ、紅茶、かにときゅうり三杯酢。
(中略)
夜 ごはん(桜めし)、しらす、大根おろし、金山寺味噌、いんげんピーナツ和え、みょうがと卵の吸物、夏みかんゼリー。

朝 パン、ハンバーグステーキ、スープ。
昼 ごはん、のり、うに、大根おろし、あとでホットケーキと紅茶。
夜 おじや(卵入り)、鮭と玉ねぎ油酢漬、里芋味噌汁、茄子しぎ焼。
ロシア旅行中の絵葉書やパンフレットを整理する。砂漠の暑さや人の声など浮かんでくる。
夕方、晴れてくる。管理所に新聞をとりに行く。会社の寮にきたらしい5、6人のサラリーマン風の若い男たちが買物にきている。野菜を買って卵を買って袋菓子を買っている。「素朴だなあ、ここは。いうなれば農協という感じだな。こういう袋菓子なんでいうやつは東京ではみかけない。土地の名物か?」などと言っている。ここの袋菓子は、たいてい、東京都台東区とか静岡とか沼津の工場で作ったと、袋の隅に印刷してあるのに。

武田百合子著『富士日記』より