たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

富士日記(42)サニーデ

「サニーデ」っていかにも地方の商業施設の名前って感じでナイス。検索したら今も頑張っておられるようで素晴らしい。

12月2日(火)晴、風つよし
朝 ごはん、コロッケ、さといもとわかめ味噌汁、にしん粕漬。
昼 うどんバター炒め(コンビーフと玉ねぎ入り)、おから煮付。
夜 お雑煮、ししゃもを焼く。
ここに来て、朝寝坊出来るのが嬉しい。陽があたって風が吹いている。夢遊病者のようにめざめ、ふらふらと庭に出て、風に吹かれて歯を磨く。それも嬉しい。
隣りのおじいさんが、嫁に行った娘さんのところから送ってきたししゃもの干したのと、植木屋がくれたおからを煮てみたといって湯気のたっているおからを丼に入れて台所に来る。おからの中には、ひじきとにんじんとちくわとねぎが入っている。

朝 ごはん、大根味噌汁、にしん粕漬、生卵、のり。
(中略)
昼 お雑煮(とり肉、みつば、かまぼこ)。
(中略)
夜 ごはん、オムレツ、ちくわつけ焼、漬物(鳴沢菜)。これは隣りのおじいさんがくれた。

石川パーキングで肉まん2個60円(主人が2つとも食べた)。
3時前に着く。風が吹いていて寒い。庭には深い霜柱がたっている。
昼夜兼用の食事 ごはん、シューマイ、ひじきと大豆の煮たの、肉の佃煮、小松菜の辛子醤油、かきたま汁。
隣りにおでん種をわける。
(中略)
おでんとビーフシチューを作っておく。

ビーフシチューが鍋にできているから安心だ。外はくもり、あられのように、霜のように、うっすらと地面に白いものがある。
テレビは朝から、選挙だ投票だ、とさわいでいる。
主人は早くに起きて、ビーフシチューとパンを食べた。
朝(主人は第二次朝食) ごはん(炒り卵と海苔の弁当ごはん)、煮豆、佃煮、さといも味噌汁。
昼 おでん、ごはん、はまちの味噌漬、大根おろし。
夜 ラーメン(漬菜と肉の油炒めを上にかける)。

12月28日 快晴 風つよし
台所の水道は、出し放しているのに危うく凍りそうだった。アルプスは一層白い。
朝 ごはん、ビーフシチュー(主人)、おでん(私)。
昼 うどんバター炒め(ベーコン、玉ねぎ、桜海老、青のり)。
夜 ごはん、納豆入り玉ねぎ味噌汁、佃煮、鮭と卵油炒め(かにたまの代り)。

●昭和45年

食堂は満員、正月らしい和服の娘や主婦がきている。子供づれも多い。カレーライス(主人)、チキンライス(私)。
へそまんを買う。150円。
牛乳スタンドで、白牛乳の方へ30円いれたのに、出てきたのはコーヒー牛乳だった。
Sランドのスケート場で子供が沢山滑っている。
庭には雪がある。
家に入って、すぐにへそまんをふかして、お茶を入れて食べる。
夜 ごはん、トンカツ、キャベツ、けんちん汁。

朝 ごはん、けんちん汁、卵焼、のり、わさび漬。
10時ごろ、初詣に下る。
富士吉田浅間神社。富士祝詞、お守り札、交通安全お札を頂く。
(中略)
河口湖を一周する。大文字学園寮の前に車をとめ、車の中で持ってきたチーズケーキを食べ紅茶を飲む。陽が射してくると暖かい。
(中略)
昼 ごはん、はまち味噌漬、ピーマンつけ焼、大根おろし。
夜 ごはん、紅鮭罐詰、海苔、じゃがいもと肉の煮たの。

ソーセージの揚げたのにケチャップと辛子がついているのを1本ずつ食べる。2本140円。
(中略)
サニーデで食事。カレーライス(主人)、トーストとコーヒー(私)、510円。サニーデには私たちだけしかいない。
(中略)
2時半ごろ、ごはん、鮭燻製、玉ねぎサラダ、根みつばのおひたし。これは主人だけ食事。
(中略)
夜 お餅のつけ焼、豚汁。
おじいさんは夕方、自分で作ったたくわんを(ばあちゃんが漬けたのではないと今日も言う)最後の残りの1本だといって持ってきてくれる。

朝 ごはん、卵と鮭(かにたま風)、味噌汁、たくわん。
(中略)
昼 ホットケーキ、コーンスープ、果物ゼリー。
(中略)
夜 ごはん、コロッケ、味噌汁、わかめのサラダ。
夏みかんゼリーを作って食べる。

談合坂食堂で。カレーライス(主人)、サンドイッチ(百合子)、朝食にとる。桜の葉は少し残って、葉桜となった。

武田百合子著『富士日記』より