たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

富士日記(46)ウインナカレー

今、イースター前の断食中なので、何を見てもうまそう。でも、ウインナが半切れ入った食堂のカレーはまずそう。

9月29日(火)くもり、時々雨
前6時東京を出る。霧雨。
石川で、ちらし弁当一つ、談合坂にて、釜飯一つを買い、談合坂に車をとめて、車の中で食べる。観光バスが続々と着いて、商店の主婦たちらしい団体、男子高校生の団体など、便所に続々と入り、出てきて車に乗る。
昼 ごはん、かます干物(私)、トンカツ(主人)、佃煮、煮豆(大豆)、さといもとわかめ味噌汁、キャベツとにんじんの酢油漬、小松菜煮びたし。
(中略)
夜 おかゆ、にしん煮付、佃煮、はんぺんとみつばのおつゆ、炒り卵。
仕事部屋にこたつを入れる。食堂にストーブを焚く。

朝 ごはん、ビーフシチュー。
昼 ごはん、塩鮭、あぶらげと菜っ葉の煮びたし、大根味噌汁。
夜 湯豆腐(ベーコン入り)。そのあと、チーズトーストを食べる。

10月1日(木)くもり
朝 ごはん、大根味噌汁、鯖味噌煮、おからの煮たの。
(中略)
駅の天ぷらそば2杯160円。
駅には、電車が着くのを待っている地元の人がいるだけ。
昼 チーズトースト、茄子にんにく炒め、野菜スープ。
夜 炒り卵と海苔のまぜごはん、はんぺんのおつゆ。

朝 ごはん、みょうがとかき卵汁、鯖塩焼、大根おろし。
昼 うどんバター炒め(玉ねぎ、桜海老、パセリ)、スープ。
夜 中華粥(とり、グリンピース)、いわし油漬(この罐詰西独製で、いわしというより鰊に近い大きさ。大へんおいしいと主人言う)。

10月12日(月)一日中霧雨
朝 ごはん、もやし味噌汁、いわし油漬、生卵、海苔、佃煮。
(中略)
店にきた主婦が一抱えも買ってゆく「おもち」とよんでいるこのおだんごは、「いつもはないものなんよ。十三夜様のおだんごなんよ」と酒屋のおかみさんは言う。いま出来たてのおだんごを、私も10個買う。
昼 ごはん、オムレツ、スープ、野菜五目炒め。
夕方、霧雨の中で、主人は門の脇のすすきを刈る。松の下枝も払う。
夜 さつまいもを電気鍋で焼く。おだんごを食べる。貝柱のスープ。

10月13日(火)くもり時々晴
朝 カレーライス(とり肉)、コンフリーのおひたし、高菜油炒め。
昼 クリームスープ、手製クッキー(私)、ハンバーグステーキとじゃがいもうらごし(主人)。
夜 五目雑炊。
明朝帰るので、残りものを食べてしまう。
今日はときどき陽があたった。夕方までむし暑かった。隣りへハンバーグステーキを2つ持って行くと、おばあさんは綿入れのチャンチャンコにつぎをあてていた。

談合坂で弁当とみかんを買う。
(中略)
夕飯の支度をしていると、おばあさんが勝手口に現われる。「T先生から」といって、毛がにの茹でたのにつけ汁を添えて届けてくれた。
夜 ごはん、毛がにの茹でたの、小鯛から揚げあんかけ、菜っ葉とみょうがとちくわの清し汁。

10月20日(火)快晴
眼がさめて、そのまま小窓から見ている空は真青。風がない。
朝 ごはん、豆腐味噌汁、鰊サワークリーム漬(主人は好き。私は食べない)、海苔、卵。
(中略)
鳴沢バス停の文房具屋で、日記用のノート(今、書いている、これ)100円、セロテープ、ウエハースを買う。夏に仕入れた残りのアイスクリームが3個、アイスクリーム用の冷凍ケースの中に転がっていた。
(中略)
昼 天ぷらうどん(桜海老のかき揚げ)。
夜 ごはん、オムレツ、もやしとのりの三杯酢、きゅうり味噌。

談合坂食堂で、主人カレーライスをとる。私は食べたくないので何もとらない。主人はカレーライスを十分の一ほど食べて「やる」と言う。私はカレーがかかっているところだけ食べる。カレーの中には何にも入っていない。ウインナーソーセージが半切れ入っている。「やる」と言ったはずだ。
(中略)
朝 ごはん、かれい煮付、ぎんなんを煎って食べる。
テラスの椅子で、ぎんなんを食べながら、主人眠りはじめる。
(中略)
昼 ごはん、けんちん汁、とりのささみつけ焼、白菜漬物。
(中略)
夜の食事もせずに主人は眠り続ける。とりの入ったすいとん汁を作って、私は食べた。

武田百合子著『富士日記』より