たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

『オール讀物』と大判焼きとパジャマと 林真理子『成熟スイッチ』

あまりにも共感した箇所。本のある光景はしあわせよ。
今はさらに書店や「貸本屋」に行かなくても、ゴロゴロしたまま本を買って読み始められるという20年前は想像もしなかった世界なのだが、学生時代に図書館から出てくるときのホクホク感、就職してからの湯船に持ち込む週刊文春(もちろんフヨフヨになるが私しか読まないのでOK。なんという贅沢)の醍醐味は忘れない。

私はどこにも就職できないまま大学を卒業した後、アルバイトをして食いつないでた時期がありました。仕事が5時で終わった後、大判焼き屋さんで大判焼きを2個買って、その隣の貸本屋さんで剣豪小説や『オール讀物』を借りてアパートに帰ります。アパートはトイレ共同、風呂なしの四畳半でしたが、パジャマに着替えて、大判焼きを頬張りながら好きな本にどっぷりと浸かる至福といったら......それは最高のストレス解消でもあり、間違いなく幸せな時間だったのです。

林真理子著『成熟スイッチ』より

長くファンだったのに、突如頭がQになり(差別や陰謀論を開陳し始める)、その作品を手に取れなくなった作家先生は何人かいる。
彼女も事実に基づかない危ういことをチラチラ言い始めたのでドキドキしているのだが、まだこうして新作を買ってしまうのは、ここにも書かれているとおり、読者に損はさせねえぞ!という旺盛なサービス精神ゆえだと思う。いつまでもご縁が続きますように...。