たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

八千草薫『あなただけの、咲き方で』と刺身定食

八千草薫の出演作は新聞販売店からチケットをもらった(なつかしくないですか)『天国までの百マイル』のみ。だが、一度、彼女に似ているね、と言われたことがあって(そういうのって事実はどうあれ結構意識してしまいませんか。あと、彼女はジュリエット・ルイスに似ていませんか)勝手に親しみを感じていた。

本書で言っていることは、まあ古い。そんな戦後ノスタルジーで若者を憂慮されましても、と思うだけ。
でも、全体に「ちょっと我慢する」ことを提唱しているのは品とは何か、のヒントになるかも。
それから、彼女の永遠のテーマだという「もうちょっと踏み込んで」は、リーン・インの訳語にぴったりではないかと思った。

ちなみに、『天国までの百マイル』は親子が食堂で刺身定食を食べていたことだけ妙に覚えている。時任三郎が病の母親のために「冷房ちょっとゆるめてもらえますか」と店員に頼むと、先客のおやっさんたちが「おい、具合悪いんかい、なら冷房消せ消せ、みんないいよな」って親切にしてくれるシーン。

健康のために、食事の面で気遣っていることを尋ねられることがよくあります。しかし、これといった決めごとを作らないことが、ストレスを溜めない秘訣なのではないかと思います。
ですから、ありきたりで、ちょっとつまらないような気もするのですが、なるべく野菜をたくさんいただくように心がけながら、偏りなくバランスよく食べることだとお答えしています。
ただし、ひとつだけ決めているのは、朝食を必ずとること。仕事柄、一旦撮影が始まると思うように食事がとれないこともよくあります。ですから、せめて外出する前に、朝食だけは欠かさずとることで、体のバランスを崩さないようにしたい。
母が生きていた頃は私と主人の分まで作ってくれていたのですが、亡くなってからは私がこれを引き継いでずっと続けてまいりました。
最近の私の定番は、朝1杯のジュース。市販のにんじんジュースに林檎を摺って加えたものや、トマトのジュース、アサイーのジュースを、季節やその日の気分で飲みます。
それに、ごはんとパン、レトルトの胚芽玄米と小豆のお粥の中からひとつ選んでいただきます。ごはんやお粥のときには、魚や卵、野菜のおひたしや豆腐、納豆の中から何品か加わります。そしてパンのときには、卵料理やお肉、フルーツなどが加わるぐらいでしょうか。ごく普通の朝食です。
定番とはいっても、"これしか駄目!"というようにガチガチに決めてしまうと、窮屈になってしまいます。何事も束縛されては楽しくありませんから、食事も柔軟な気持ちを忘れないでいたいもの。

八千草薫『あなただけの、咲き方で』より