氏の小説をたて続けに手に取っていたときに買ってしまい、こういう装飾の多い文章苦手〜と思いながらダラダラ斜め読みしていたのだが、直木賞受賞時の自伝的一編「直木賞を受賞しスかしたエッセイを書く」がすごく面白かった。特に、 国語教師に「自分の文章に、ちょっと酔ってない?」と言われたあとの展開には虚をつかれた。良い教師にめぐり合い、とにかく書き続けた日々の記述は、私の天才観の幅を少し広げてくれた。
愛知県の豊橋市に入る。愛知に突入したら絶対にひつまぶしを食べると決めていたため、それがエンジンとなり、私たちは速度を落とさずに進むことができた。ネットで見つけておいた創業八十年の名店「かねぶん」目がけてセシルの尻をひっぱたく。
【創業80年の名店「かねぶん」で極上ひつまぶしを頂く】
写真を載せられないことが本当に残念なくらい、もうめちゃくちゃおいしかった。実は、その土地ならではのものを食べるのはこの旅で初めてだったことに気が付く。何だそれは。そうなってくるとこれはもう旅ではなくただの「移動」である。
(中略)
【高校時代を思い出すコメダ珈琲でシロノワール。Yが壊れる】
名古屋名物シロノワールを食し、かなり満足した私とYとセシルとシルク(Yのクロスバイクの名前)は店をあとにしようとした。【6日めの朝! サラダとサンドウィッチとオレンジジュースというお馴染みの朝食! 今日はついに京都へ‼】
朝井リョウ著『時をかけるゆとり』より