顎についたチョコクロワッサンのチョコレートをナプキンで拭きながらツガワがそう言うと、ナガトは斜め下を向いて口を押えた。
ナガトは、ターキーのサンドイッチのフィルムを細長くたたみながら顔を上げた。
まだ陽が落ちきっていないのにもかまわず酒量は増し、ナガトはカウンターに伏せたまま動かなくなるというところまでいった。ツガワはその隣で黙ってゴーヤーのおひたしをつまみながら、自分の職場でZ部長のようなことになりそうな人はいるだろうかと考えていた。
津村記久子著『ポトスライムの舟』所収『十二月の窓辺』