たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

津村記久子著『十二月の窓辺』

顎についたチョコクロワッサンのチョコレートをナプキンで拭きながらツガワがそう言うと、ナガトは斜め下を向いて口を押えた。

ナガトは、ターキーのサンドイッチのフィルムを細長くたたみながら顔を上げた。

まだ陽が落ちきっていないのにもかまわず酒量は増し、ナガトはカウンターに伏せたまま動かなくなるというところまでいった。ツガワはその隣で黙ってゴーヤーのおひたしをつまみながら、自分の職場でZ部長のようなことになりそうな人はいるだろうかと考えていた。

津村記久子著『ポトスライムの舟』所収『十二月の窓辺』