たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

Entries from 2019-01-01 to 1 year

皇居のラーメン作戦『消えたお妃候補たちはいま』

この日、天皇・皇太子の毎日の食事を作る管理部大膳課の職員に、別の内舎人(うどねり)は、「昼はラーメンでいいですよ」と伝えていた。ラーメンは皇太子の好物である。大膳課職員は、「ああまたラーメンか」と思いつつ、昼食の準備にとりかかった。ラーメ…

おせいさん『苺をつぶしながら』

大阪と軽井沢。 そうして私は、苺をつぶしてたっぷりミルクをかけて食べ、食べてるあいだじゅう、新聞をよむ。そのあと、バスタブにぬるめの湯をなみなみと張って、ゆっくり浸かりながら本をよむ、という寸法である。 そんなことを思いつつ、ラーンランラン…

おせいさん『お目にかかれて満足です』さあ、おあがり、おあがり。

実に、「これ食べよし」「こっちも食べなさい」と恵みが眼の前に与えられるの、泣けるほどの至福ですよね。教会ではよくある。 人間にとって、(さあどうぞどうぞ、おあがり。あれもこれもおあがり)とタベモノを供され、しかもそれが、こまかいやさしい配慮…

三浦綾子『愛と信仰に生きる』

神のもとに帰ろうとするとき、聖書とともに氏の文章を読んで信仰の先輩たちの姿に励まされている。『道ありき』と重複しているが、食べもの以外のメモも含めて上げておきたい。 この頃、戦時中の慰安婦が問題になっている。戦時中の日本軍のやり方は、人買い…

滅びの香り『細雪』

「その、烏賊のお料理と申しますと?」と云う房次郎夫人の質問から、烏賊をトマトで煮て少量の大蒜で風味を添える仏蘭西料理の説明が暫くつづいた。 悦子の好きな蝦の巻揚げ、鳩の卵のスープ、幸子の好きな鶩の皮を焼いたのを味噌や葱と一緒に餅の皮に包んで…

三浦綾子氏の青春『道ありき』

三浦氏と奇跡の結婚を果たすまでを記した手記。まだKindleストアジャパンの品ぞろえが薄かった頃に買い、6年ぶりに読んだがほとんど何も覚えていなかった。今回はずっと深く感銘を受け、彼女をキリストに結び付けた人々の愛にむせび泣いてしまった。 わたし…

フィンランドで食べるたのしみ『わたしのマトカ』

あの頃の香港は、時給450円の映画館アルバイトでも、思うさま飲み食い買い、遊びわれるくらいふところが深かった。500円もあれば、お昼の飲茶を降参するくらい食べられる。ワゴンで運ばれてくる点心をひるむことなく選べる幸福!朝のお粥から始まって、酒家…

ポートランドで再会(その2)『ニューヨークの天使たち。』

私はNYでの役者修行を中心に書かれた『日経WOMAN』コラム連載時から渡辺葉さんの書きもののファン。といっても現在はNY州弁護士として活躍されているようだ。 この本も私をアメリカへとドライブした数ある本の1冊と言ってもいいかもしれない。林真理子氏のエ…

『ニューヨークの魔法をさがして』バナナマフィンにたどりつく

ドアを開けると、すでに店内は朝食をとる人で活気にあふれていた。土曜日の朝、アッパーウエストサイドでブロードウェイを、「ゼイバーズ・カフェ」(Zabar's Cafe)に向かって私は歩いてきた。カフェのショーウインドウの前に立ちはだかるように、7、8人が…

ポートランドで再会したシャラくさいTOKYO STORY『「綺麗な人」と言われるようになったのは、四十歳を過ぎてからでした』

ポートランドの知と夢の殿堂、Powell's書店で日本語の古本を見つけ買ったのがこれ。他はいかにもブックオフ的ラインナップだった。在米日本人エッセイとか、英語本とか、全巻揃ってない村上とか、古いベストセラーとか(ワイルド・スワン...)。あとまあ当然…

御巣鷹山の夏

確認作業が後半に入り、いくぶん心にも余裕が出てきてからのことであるが、「何か欲しい物があったらいって……」といわれると、「サラダが食べたい」とか、「煮物が食べたい」とか、つい本音が口をついて出る。毎日のように、大鍋にいっぱいのサラダをつくっ…

ほんものの会食『夏物語』

この小説の登場人物たちはみな、食卓でもその他の場所でも、会えば「あれやこれやと話」「いろいろな話」をする。しかも、その内容が列挙されている。「夜の姉妹のながいおしゃべり」と題された章があるほどだ。祝福だよね、他人と話ができるって。 夏物語 (…

誰も1人で過ごさせてはいけない日、感謝祭。『ニューヨークの魔法は続く』

『ニューヨークの魔法』シリーズ、最初の3冊くらいは紙で買い、途中からKindleで買ったままになっているのが3冊もあった。とりあえず、二重買いの失敗がないのはKindleの良いところである。今更遡って読んでいる。 持病のため働けないが、毎月、受け取る生活…

「ニューヨークの魔法」シリーズ最終章

初めて最寄り駅のBook 1stで第1巻を手に取ってはや10年以上。 前にも書いたけれど、このシリーズが成功したのは装丁に負うところが大きいと思います。 シリーズ最終巻、さみしいですね。 これからも岡田氏の取材記事に期待します。 その前年に、従弟が家族で…

今上天皇の意外な好物『テムズとともに 英国の二年間』

今上天皇はカレーとおでんがお好きだ、と聞いたことがあるが、飯マズ国として名高いイギリスでは飯ウマ寮に当たり、意外なものを気に入って召し上がっていたという。 女王陛下からは、今後の英国での生活についてのお尋ねや日本訪問時のお話などがあり、アン…

オーガニック食、おうちの味『彼女は頭が悪いから』

もちろん、上野千鶴子先生の東大入学式式辞で知って読んだ。ありがたい。でなければ著者名に対する偏見で手にとる機会はなかったと思うので... その祝辞を読むたび、「東京大学へようこそ」で涙が出てきた。 自分がこれから学究生活に入るわけでもないのに。…

『コンビニ人間』を逆輸入した

ロサンゼルス郊外の書店の「店員おすすめコーナー」にこの本の英訳版が並んでいたのを見て、「そういえば、佐藤優氏も現代人の反逆が現れてるとか言及してたなー」と思い出し、原書のKindle版を読む(しつこいけど、ほんとに電子書籍最高よ。ほんの10年前な…

ニューヨークの魔法の食事

私ノ、話ヲ、大切ニ、シテクレテ、アリガトウ、ゴザイマス。 ウィルダは目覚めると、すぐに朝食用のオートミールの準備をし、大きな鍋でお湯がわくのを待ちながら、両足を伸ばしてベッドにすわり、手を組んでぶつぶつとインドネシア語で祈りをささげる。それ…