たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

Entries from 2024-01-01 to 1 month

フライドチキンとからあげ『大草原の小さな町』(2)

フライドチキンと鳥のからあげは少なくとも日本人からしたら別もんだよな。ケンタはすでに大阪万博の年に日本上陸していて、本書は80年代に出た訳書だが、まだ一般用語としては使えなかったのかな。 とてもしあわせな毎日だった。野菜は順調に育っていたし、…

ラマダーンの愉悦『BUTTER』(17)

昔、片倉もとこ『イスラームの日常世界』でラマダーンの饗宴について知った。里佳も言っているように、律法的な断食修行というイメージとは真逆の習慣が描かれていた。 イスラームの日常世界 (岩波新書) 作者:片倉 もとこ 岩波書店 Amazon 身体に組み込まれ…

母さんと安倍『大草原の小さな町』(1)

ワイルダーがキャンセルされるようになった昨今ではなく、90年代の子どものときに読んでも「こういうことを地の文で書いてはダメなのでは」と十分ドン引きさせられた部分。改めてこだま・渡辺訳で読んでみて、この母さんの「インディアン」についての言い草…

私の乏しいターキー経験『BUTTER』(16)

在米10年を超えるが、感謝祭はいつもどこかのお宅や教会で七面鳥をよばれている。で、失礼だけど「うまいっ」というのにはまだ巡り合ったことがない。日本のお雑煮と同じように、家庭によって詰め物が違うのは面白いのだけど。一度、1週間塩につけて柔らかく…

ブール is『BUTTER』(15)

雲丹のブールブランソースは、ビネガーの酸味がよりいっそうそのなめらかさを引き立てる。あたたかい雲丹が舌の上でつぶれ、海の香りのするクリームに変身すれば、同じ濃度を保つ卵の黄身の味がくっきり残るフランに溶け合っていく。「ブール」はバターを意…

超高級料理教室『BUTTER』(14)

家庭科の調理実習も大嫌いだった私は料理教室に興味を持ったことはないが、YouTuberに教えられたレシピは超重宝している。 この超高級料理教室では、「味の想像がつかない」料理が好まれているが、私にはあれこれ混ぜる手数の多い料理は魅力的ではない。フー…

賢いやり方『BUTTER』(13)

せっかくのセントラルキッチンをまな板も置けない状態にしている人から「結婚したかったら料理の腕を磨くことだよ」と言われて思わず笑ってしまったことがある。 里佳は冷たすぎるビールに顔をしかめ、ナッツを無理に口に押し込む。 「(中略)彼女の魅力の…

バタ『BUTTER』(12)

私も好き、「バタ」表記。最初に見たのはたぶん、「暮しの手帖」の料理特集別冊。「アボカドは畑のバタ」と書いてあったの。 「家庭科の授業で習ったグラタンを、金曜日に父に作らなかったんです」「あなた、そんなに難しい料理作れるの? 玉ねぎも切れない…

犬と同じメニュー......『BUTTER』(11)

私が小学生のころ、地元には野良犬、野良猫がたくさん歩いていた。そのうちの1匹を友達と囲ってエサや寝床を与えていたことがある。で、やっぱり味見はしたよ、ネコ缶を。カレー風味がいいにおいすぎて。味はほとんどなかった。 帰宅すると、朝陽が差し込む…

新潟の絶品『BUTTER』(10)

あまり知られていないうまそうすぎる新潟土産のコーナー。 さっき駅構内の専門店で一緒に頬張った、熱々のおむすびの匂いが残っている。伶子の具はしゃけ、里佳はすじこだった。我ながらあきれるくらい、簡単に食欲は蘇っていた。 土産物の袋を覗き込み、バ…

セサミチキンとSpaghettiO "Evicted"

Matthew DesmondのEvictedの邦訳が出たと聞き、さすが採算度外視の日本語翻訳出版界!と感嘆・感謝するのと同時に、遅っ、と思わざるを得なかった。紹介されないよりはるかにいいし、決してこの本に書かれた貧困の状況が大きく変わったわけではないとはいえ…

赤飯文化『BUTTER』(9)

初潮のあとの赤飯ムーブはほんとにきもいと思ってた。玉姫殿なき今、赤飯=めでたい、ごちそうというイメージは残っているのかな。そもそも炊ける、自宅で炊くなどということを思いつくご家庭も減ってそう。 お茶請けとして出されたのはセロファンで包まれた…

ご飯屋さん『BUTTER』(8)

新潟のご飯屋さんの記述に、京都の八坂さんの前の通りを跨ぐほどの長蛇の列を思い出した。並んだわけではない。 あちらでは冠婚葬祭で食べるらしい「プラリネ」というケーキ、レーズンとバタークリームの渦巻きパン、ル・レクチェの羊羹、佐渡バター、父親が…

手作りお菓子のプレゼント『BUTTER』(7)

手作りお菓子は美味しいものしかいただいたことがない。自信がある人しかやらないからだ。ところでたまーに「手作りに抵抗がある」という人に実際に会うが、それって口に出して言っても何もいいことないのにね。 「そうね、なら、甘ったるいチョコレートでは…

元気の出ないレストラン『BUTTER』(6)

「カロリー低い」味気ないレストランといえば、SATCの火を通さない食事のみを出すヒップなプレイスを思い出すな。サマンサとスミスが出会った場所な。 オーガニックの貴腐ワインは水のようにするすると入っていく。 「ほら、ここはカロリー低いから、いくら…

ディズニーランド的レストラン:ジョエル・ロブション『BUTTER』(5)

恵比寿ガーデンプレイス、911が起こった頃にあのへんに通っていた。形だけの警備が増えて情けなかったのを思い出す。 「だから、本物の男の人が女性本来のグラマラスな美を理解できるように、本物のフランス料理はちゃんとたっぷりバターを使うのよ。甘さ控…

餅の食べ方『BUTTER』(4)

こないだ日本で切り餅をたくさん買ってきた。もちろん、バター醤油で食べている。ただし、砂糖は家にないのでハチミツを使用。 さらに今年はサウスベイの人の心尽くしのおせちもいただくことができた。栗きんとんが入っていなかった。 飲み過ぎで足取りのお…

小菅の食事 ★★★『BUTTER』(3)

小菅の食事が結構美味しいらしい、というのは佐藤優氏の話からもうかがえた。確かに麦が混ざってるとも書いてあった。ヘルスィー。ちなみに私の小学校の給食も麦ご飯だったよ。何の問題もなかったよ。 「もうすぐクリスマス。1年で一番街が華やぐこの季節が…

たらこパスタ『BUTTER』(2)

「カジマナのたらこパスタ」作ってみたいけど、紫蘇がたっかいんだよな。日本の実家ではいやってほど庭に生えてるのに。たらこはHマートにあるかな。 パスタが茹で上がったようだ。スマホに設定しておいたアラームの音で、里佳はパソコンのデータ原稿から目…

実家もバターにのりかえた『BUTTER』(1)

いったんバターに変えると元には戻れない。子どもの頃から毎朝のようにマーガリンを食べていたし、母が料理に使うのはマーガリンだったし、給食に出るのもマーガリンだったが、ヨーロッパ人の義兄がマーガリンを食べない派だったのを機に、実家もバターしか…