たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

フランス

家の献立『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(22)

私の世代でも、「家で食事を用意してくれるのは家族以外の人」という子はたまにいた。商売をやっている家の子とか。 たべものに淡白で、クッキーにバタをぬって、「こんなおいしいものはない」といってるのだから、簡単なものだ。姉も私も下の弟も甘いお菓子…

一番高級なおいしいアイスクリームの作り方『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(21)

コルドンブルーで作り方を教えている「一番高級なおいしいアイスクリーム」は向田邦子のエッセイに描かれた昭和の一般家庭での作り方と同じやぞ。材料も今よりはるかにいいだろうし、そりゃ美味しいにきまってる。 一番高級なおいしいアイスクリームの作り方…

コルドンブルー体験記『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(20)

『BUTTER』の個人宅料理教室の場面に続き、本場のコルドンブルーの授業風景は大変興味深い。うちの近所にも大手の学校があって「見てくれ」とばかりに窓が大きいのでそばを通るときはめっちゃのぞく。たぶん生徒は100人以上いる。独学で玄人はだしになって成…

日本人会『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(19)

日本国外で日本人ばかり誰かんちに集まって日本のもんを作って食べるのはたしかにとても楽しい。でも、彼女たちみたいな寿司は、面子に職人がいた一度だけだな。目の前で巻いてくれた手巻きが最高だった。これまでやったことがあるのはお鍋とかお好み焼き、…

トマトとシャンボン『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(18)

XXを食べると疫痢になる、という親の心配は向田邦子のエッセイにも書かれていたな。 「トマトだけ切ってくれればよいわ」 といって、トーストにトマトをはさんで、 「あーおいしい」 なんて思っているのだから、人間の好みも変るものだ。トマトを好きになっ…

肉畜とわたし『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(17)

ニワトリを絞めてカレーを作る体験をさせてもらったのは貴重だった、と肉を買って食べるたびに思う。畜産、屠畜、流通を誰かがやってくれているのだということ。そして、できればたぶん、週数日でも食べない日を作って地球全体の消費量を減らしていったほう…

油くさいわ『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(16)

「ランチから帰ってきた人の油くささ」といえば京都で勤めていた1年弱の間を思い出す。途中まで何のにおいなのか謎で、冷気の中を歩いてくるとこういうにおいになるのだろうかと考えていた。決まった定食店かラーメン店に行くのが原因であることは徐々にわか…

アメリカでおいしいのは?『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(15)

「アメリカでおいしいのは、なんといってもローストビーフ」だそうだが、私の住む街でそこまで美味しいのに出会ったことはないなぁ...。その手の業態のお店もどうしてもステーキ、ハンバーガーになってしまう。ニューヨークを中心とした東海岸のダイナーのほ…

ドリアン『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(14)

「日本は果物にめぐまれた国で、あまり高価でもなく」という記述があり、イチゴ、白桃が挙げられているけど、今の日本は米国と比べると果物の敷居が高いと思う。こっちの人は手軽にスナックにしてるけど日本では日常食とは言えない感じ。 1年ズレこんだはず…

クレープとは何かを説明『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(13)

ギャレットではないが、ひとつ「アタリ」が入っているちぎりパンはキンダーで何度か食べたことがある。食べ物に異物が入っているというのはどんなに注意しても結構危険だ。ましてや幼児なら、私が教員だったら絶対食べさせたくない。今のアメリカではやらな…

紅茶『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(12)

朝吹登水子さんの登場。関係ないが私の英国の家族はみんなミルクのほうが多いミルクコーヒー派で、彼女みたいな優雅な紅茶の趣味をもたない。さらに日本にきてミルクティーに「ありえん」と引いていたのにはこっちが驚いた。 私はかやくごはんが好きだ。人参…

豆料理の缶詰『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(11)

最低限の健康な食生活の原則として、いちばん簡単でシンプルに聞こえる助言が「1日1回マメ類をたべる」「ひたすら食べるものの種類を増やす」である。それを聞いてからChipotleでも必ずマメを入れてもらうようになったし(それまではメキシカン料理のマメは…

おつけもの、レタス『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(10)

スナッキングといえば、西海岸のおつまみとしての枝豆の浸透ぶりに驚く。日本食レストランで名指しするのはもちろんのこと、普通に冷凍の「エェダマァミィ」を買って家でも食べている。鮨店に加えてどんどん増えてるラーメン店が出してるんですかね。 一般の…

おじやは太る?『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(9)

私は80年代の大半を地方で過ごしたが、うちにはなぜかサフランがあってたまに食卓に黄色いご飯のピラフやドリアが出てきたんだよな。母はチャレンジャーだった。アメリカに来て体感しているが、ちゃんこなべとかご飯みたいな元の素材の形が見えるものは、パ…

田舎の流行メニュー『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(8)

私が田舎の高校生だったころ、ココスのオニオングラタンスープがめっちゃ流行った時期があった。最初にそのおいしさを教えてくれた友人宅に行ったら、大ブームで手に入りにくくなっていたナタデココが出された。「うちでは数年前からデザートにしていて常備…

しゃぶしゃぶなるもの、フォンデュなるもの『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(7)

私は大阪出身だが、実家にしゃぶしゃぶという料理は存在せず、初めて知ったのは関東の友人宅で(毎週末に夕食を共にするという離れのおばあさんから友人宅の内線に電話がかかってきて、何が食べたいか聞かれたらしく「ひさしぶりにしゃぶしゃぶでも〜」と8歳…

夜食のたのしみ『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(6)

おとなって楽しいよね〜〜〜〜 リヨンは絹の産地として知られているほか、ブルゴーニュ産ブドー酒がおいしいし、食事のおいしいところといわれるだけに、楽屋ではそれこそ食べものの話ばかりだった。 皆、自分がいったレストランが一番おいしくて安いとがん…

のどを使うプロのタブー食と駅弁『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(5)

日本の駅弁の思い出は残念ながらあまり良いものではない。冷たくくっついた俵おむすびのまずさ。今だったら食べてみたい銘柄がいろいろあるのになー。そういえば、昨年帰国時に551に行列ができていて驚いた。20年前、毎日のように阪急を利用していたころはい…

パリのこどもパーティ『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(4)

これ読んで「バタと粉チーズをふっただけの」パスタを食べたくなり、夜の10時から作成した。家に常備してある材料だけでできてしまうのが問題だ。 「今夜はまかせるから、何かおしいもの作ってよ」姉にそういわれて、私はロンシャン通りに、買物袋をぶらさげ…

ワインではない、ブドー酒だ『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(3)

まだ「ワイン」というカタカナ語を使ってないんだよな。子どものころうちにあった絵本や聖書も「ぶどう酒」表記でそれなりに思い巡らしたものがあったので、どうもwineと同じ飲み物だという感じがしない。ましてや「白ブドー酒」=シャルドネだとは思えない。…

フレンチドレッシング『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(2)

手作りしたフレンチドレッシングのおいしさは、小学校の調理実習で知った。英語だのプログラミングだの壺仕込みの道徳だの、新しい科目がぎっしり詰め込まれた今の小学校で、調理実習をやる時間はあるのだろうか。そもそも家庭科の授業は...。 昼間ご馳走を…

たまごとセーヌ河『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(1)

レシピの説明がちょいちょい出てくることもあり、他の作品になく数字の扱いが興味深い。単語のひらき方は堺雅人のエッセイに似ている。どちらが先かはわからないが、連載誌だった『暮しの手帖』のかなづかいも思わせる。XX風を「ふう」に開くとことか。活版…

ソーダ水『けむたい後輩』(2)

ユーミンはリアルタイムでは『天国のドア』から入って、そこから遡ったクチだが、荒井時代の楽曲には十分ノスタルジーを感じる。オールナイトニッポンも結構しつこく聞いていた。リスナーが流行歌を地元の方言で歌う、という企画があり、工藤静香の『慟哭』…

思いがけない5つ星生活記『人生はどこでもドア―リヨンの14日間』古き良きエアビー

コミュニティ論として、フランス食材レポートとして大変面白かった。東京の銭湯でもリヨンのカフェでも、溶け込ませていただく鍵はrespectとその実践としてのdecencyだということ。 ただ、言葉は肝ではないとはいえ、言葉ができたらもう少しショートカットで…

林真理子著『奇跡』

こうして見ると「大層」まつりである。密林のレビューを見る限り、『李王家の縁談』的失敗作なのは十分察せられたのにやはり買ってしまった在外邦人。 ともあれ、書き下ろしのできる体力はすごいと思う。 2人きりになると、ぎこちなさが2人をつつんだ。鮨屋…

児玉清が推すワイン『寝ても覚めても本の虫』

「アタック25」があっさり終了してしまったとはビックリだ。どんどん消えていった一般視聴者参加のクイズ番組。いつメンばかりやたら大勢並ぶ日本のバラエティ番組はほんましょうもないと思うのだけど、一般人を募集するより手間暇もお金もかからないんでし…

ひとり芝居『6時27分発の電車に乗って、僕は本を読む』

なんとなく70年代くらいをイメージしながら斜め読みしていたら、いきなりUSBが出てきてええっ、と思った。 登場人物たちがすごくいい作品として持ち上げる文章のサンプルを劇中に出すのはきっついだろうなあと思う。『1Q84』にも粗削りながら驚異の新人の作…

犬養道子『セーヌ左岸で』

10年以上ぶりに再読。内容が古い部分も多々あり、電子版も出なさそうなので捨てられない1冊である。 クレープやタルトに説明が必要だった70年代。表記のゆれに鷹揚なのがすごくいい。artという語を日本語一語では表せないことを示していて共感する。(「芸術…

ヨーロッパあちらこちら 犬養道子『お嬢さん放浪記』

本書で、犬養さんが療養していたサナトリウムが近所にあったことが分かって驚いた。 お嬢さん放浪記 (角川文庫) 作者:犬養 道子 KADOKAWA Amazon <アメリカ> アメリカに行ったら、浴びるほど飲もうと楽しみにしていたアイスクリーム・ソーダも、ついぞ口に…

ポートランドで再会(その2)『ニューヨークの天使たち。』

私はNYでの役者修行を中心に書かれた『日経WOMAN』コラム連載時から渡辺葉さんの書きもののファン。といっても現在はNY州弁護士として活躍されているようだ。 この本も私をアメリカへとドライブした数ある本の1冊と言ってもいいかもしれない。林真理子氏のエ…