たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

富士日記(1)運転手の嘆き

↓この記述、ウーバーが走り回る50年後のロサンゼルスでも真でウケる。
どうしても運転する人に負荷がかかる町。実際、通行止めになってるのに「そこ行って」とかいう人いる。
ひとつ当時と大きく違うだろうなと思うのは、「車運転してる人」の私は絶対飲まないことですね。a proud designated driverに徹する。
私は神様に健康の保証をお願いするときに「助け手でいさせてください」と祈っているので、生涯乗せる人で満足してるけど。運転に限らないけど受けるよりも施すほうが幸いなのよ。受けるほうは時にしんどい。

海老原さんは東京のクッキーを持ってきて下さり、まわりでわんわんと女衆や大工が仕事している中で、ビールを飲む。私もビールを飲んで「車を持っている人が真のお友だちねえ。車運転しない人は、一方通行の逆方向からでも、平気で『そこを入ってくれえ』だの、帰りの方角が分からなくなるところまで運転させて『さよならあ』などいって降りてしまって、こっちはどこがどこやら分らなくなるものねえ。車運転してる人だけが真のお友だちねえ」などと、酔払ってしゃべった。海老原さんは車を持っている人なのである。

ひる ホットケーキ。
午後、河口湖まで買出し。馬肉(ポコ用)、豚肉、トマト、ナス。
(中略)
夜はトンカツ。
くれ方に散歩に出たら、富士山の頂上に帽子のように白い雲がまきついて、ゆっくりまわって動いている。

ガソリンスタンドで水蜜桃を2つ貰う。

おにぎりを持って、3人とも精進湖と氷穴へ行く。

外ではみそおでんを売っていた。見延山帰りのじいさんばあさんが多い。

水まきホース、和菓子(大福)、水密、スイカなど。花子、氷レモンを飲む。河口湖通りは人と車で一杯。駅も登山のゆきかえりの列で一杯。店やも、ラーメン、氷水、弁当を食べる人、休む人で一杯。

夕方、焚火でやきいもを作る。
管理所でビールを買ったら、その高いこと、二度と買うな。

紀ノ国屋で、パン、チーズ、枝豆、大根、のり、茶、菓子を買う。枝豆も大根もそのほかの野菜も東京の方が新しくていいのを売っている。値だんだって同じなのだ。文春の青木さんへ電話。
東京は夜になってもむし暑い。なまあたたかい水道の水を何度も飲む。

河口湖で一休みして氷を飲む。この氷レモン、化粧水の味がしてまずい。

コーヒーの罐をあけたら、いい匂いがした。コーヒーをつづけて3杯飲む。

武田百合子著『富士日記』より