たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

富士日記(51)颱風

「颱風」。この本で初めて見た漢字表記。きちんと活字があって素晴らしい。

すきやきと言えば、昨日Hマートで買ったブタバラにハングルですきやきと書いてあるのが読めて嬉しかった。どんなあんぽんたんでも10日で読めるようになるというハングルだが、私は10日ではすべてさらうことはできなかった。表音文字は覚えることに知的興奮が少ない。神経衰弱をしてる感じ。

8月4日(水) くもり、風つよし
朝 ごはん、ひらめ煮付、味噌汁。
昼 とうもろこし粉を入れたふかしパン、野菜ととりのスープ、トマト、ベーコンエッグ。
夜 ごはん(味つけごはん)、かます干物、ひじきとなまりの煮たの、茄子しぎ焼、みょうが汁、はんぺんつけ焼。
颱風19号が九州に上陸。

朝ごはんのとき、西の原っぱに虹が低くゆるゆるとたつ。ごはんを食べながら見ている。「この景色、あすこからここまで全部あたしのものだぞ」と言うと、主人は知らん顔をしていた。また始まったというような顔。
昼 ふかしパン、スープ。
(中略)
ウイスキーとビール、ソーセージ、じゃがいもフライ、かにとキャベツサラダ、山芋天ぷら、冷しハムとクラッカー。
(中略)
8時過ぎ、奥様が迎えにみえる。「雨が降っていても花火が上ってましたよ」といわれた。そうめんを頂く。
皆で飲んでいると、テラスに出し忘れていたパラソルが風でとんで、溶岩の角にあたって裂けた。

8月6日(金) 雨、時々晴、風つよし
7時、眼がさめる。今日も荒れ気味のお天気。
8時朝食 ごはん、かにたま、鮭と玉ねぎ酢油漬、味噌汁、サラダ。
今朝も、ごはんを食べていると、西の原っぱに虹がかかる。
(中略)
昼 そうめん、ごま入りのおつゆ、ちくわと紫蘇の葉の梅干和え。
夜 ごはん(桜めし)、みょうが汁、丸焼茄子、あとは、昨日と朝の残りもの。

主人は「腹がすいた」といって、持ってきたサンドイッチを食べはじめる。
(中略)
山へ着いて、遅い昼食。ごはん、じゃがいもと玉ねぎのオムレツ、スープ、りんご。
主人も私も昼寝。
夜 牛肉バター焼、ごはん、大根おろし、わかめとねぎ味噌汁。

10月24日
本栖湖、西湖、朝霧高原へ行く。紅葉を見に。
昼 天ぷらうどん、おひたし、
(中略)
夜 桜めし、おでん、漬物。

談合坂の売店で、肉まん2個(主人)、シューマイ弁当(私)を買って車の中で食べる。タマに弁当の中のカマボコをやる。
(中略)
昼 ごはん、とりささみバター炒め、キャベツ千切り、春菊おひたし、わかめとしらす酢のもの。
(中略)
手打うどん製造所「はなや」で手打うどんを6玉買う。「はなや」の店の奥は障子がたてきってあって、家族は皆こたつにあたっているのか出てこない。チャンチャンコを着た男が出てきて包んでくれる。
魚屋で。かれい一切れ120円。伊達巻と紅白のかまぼこが、もう並べてある。新しい光っているブリキのバケツが重ねて積まれている。バケツには蓋がしてあって「酢だこ」とレッテルが貼ってある。
(中略)
夜 かけうどん、ニラと卵の油炒め、春菊ピーナツ和え。

12月15日(水) 晴少し風
アルプスは真白だ。
朝 ごはん、じゃがいもとニラの味噌汁(卵をおとす)、かれい煮付、蓮根炒め煮、いちご。
昼 ホットケーキ、トンカツ、牛乳、みかん。
夜 ごはん、鯖味噌煮、ニラおひたし、大根おろし。

12月16日(木) 快晴
朝 ごはん、シューマイ、キャベツ千切り、ちくわ、味噌汁。
昼 うどんバター炒め。
夜 粟餅のりまき、貝柱とねぎ清し汁。
10時ごろ、タマが外に出たがって騒ぐ。

●昭和47年

4月21日(金) くもりのち晴
昼 パン、スープ、中華風オムレツ。
夜 ごはん、すき焼。

4月22日(土) 快晴
朝 ごはん、キャベツ味噌汁、すき焼の残り、きゅうりとわかめとしらす三杯酢。
昼、河口湖フラミンゴで食事。牛ヒレ肉ストロガノフというのを主人はとった。800円。川鱒、しばえびフライ500円、サラダ300円、アイスクリームを、百合子はとった。
フラミンゴには、私たちのほか、1組客がいるだけでしんとしていた。その1組は若い男と年上らしい女で、その女は、はじめ鱒のフライをとって食べ、次にまた、牛ストロガノフをとって食べた。
夜 ごはん、たらこ、うどときゅうりとハムのサラダ、豆腐あんかけ汁。
河口湖を一周して本栖湖まで行った。

武田百合子著『富士日記』より