カリフォルニアに衣替えはない。「夏ものと冬ものを入れ替える」必要がないのだ。
9月7日(土)晴
しっとりとした陽射し。ふとんを干す。
朝 ごはん、さつまあげ、大根おろし、生卵、のり、トマト、わかめと豆腐味噌汁。
昼 チキンカレーライス(中国製とりの罐詰をつかってみる)、ピクルス、トマト、グレープフルーツゼリー。
(中略)
夜 サンマ干物、大根とさつまあげ煮合せ、ごはん。
夕飯が終って後片づけをしはじめると、大岡夫妻みえる。ビール、きくらげ酢油漬、ロースハム、チーズ。9月8日(日)くもり、朝のうちは晴
朝 ごはん、大根味噌汁、ハム、さつまいもから揚げ、のり。
朝のうち陽があたる。背中に陽をあてながら、ふとんカバーのかけかえ。明朝帰るのでクリーニングに出す毛布などまとめておく。夏ものと冬ものを入れ替える。
昼 皿うどん(とり肉を入れる)。
3時 チーズケーキ(自家製)。
(中略)
主人のつかいで、大岡さんに雑誌「自由」を持って行く。ついでに私の作ったチーズケーキ二切れを。昨夜おわけした皿うどん(インスタント皿うどん)は作ってみたら、おいしかったとのこと。
夜 卵の焼飯、スープ、貝柱ときゅうり酢のもの。S農園で、焼きとうもろこし2本買う。60円。罐ビール90円。屋台のぶどうを買いたかったが、先客の肥ったおばさんが、口やかましくぶどうを選んで、古そうだといってケチをつけたり、目方を注意したり、一房まけろといったり、捗らないので車に乗る。罐ビールを買いに店内に入った主人の話。「中は満員だ。女はすごいねえ。そばをとって、その上、焼きもろこしをとって、そばを食べちゃあ、もろこしをおかずにしていた」。
東京から7時間かかって着いた。
昼 パン、トマトジュース、チーズ、サラミソーセージ。
3時ごろより昼寝、うとうとしては覚め、また眠り、6時半になる。
夜 ごはん、さんま干物、大根おろし、豆腐あんかけ。朝 おでん、茶飯、大根おろし、小松菜辛子醤油。
昼 ふかしパン(今日は何もいれない)、バター、ピーナツバター、チキンクリームスープ、トマト。
管理所へネズミとりの相談をする。牛乳2本50円、ハイライト80円。
夜 お雑煮(みょうが、海苔、とり)、きゅうり、ハルサメ、貝柱のごま酢和え、梨。
6時20分ごろ、暗い庭を靴音がして、大岡さんが急きこんだように入って来られる。今、大磯からやってきた途中で、ここに寄った。サンマを持ってきたから、これから一緒にうちで御飯を食べないか、と誘われる。
「武田は青魚好きだろ?」「俺、ブリとかサバとかサンマが好きだな。サンマなんて一番うまいな」「そうだろう。俺はそう思ったんだよ。俺の勘は当ったな」。今、お雑煮を食べ終ったところなので、サンマだけ食べに伺うことにする。「7時頃来いよ」。枝豆と皿うどんを持って行く。
カンパチの刺身、みょうがの酢味噌、サンマ、ビールの御馳走。9月24日(火)くもりのち雨
朝 ごはん、シューマイ、トマトと玉ねぎのサラダ。
(中略)
昼 トーストパン、紅鮭燻製、玉ねぎスープ。
夜 のりまき餅、おでん。9月25日(水)一日中霧雨
ネコイラズはまるで食べてない。
朝 ごはん、茄子中華風炒め、コンビーフ、大根味噌汁。
昼 湯豆腐、ごはん。
(中略)
キャベツとにんじん酢油漬、揚団子甘酢あんかけ、春巻、東坡肉、いんげんのおひたし、ビール。
デデには花鰹をやる。デデは空気をのむように、パクリと飲みこむ。朝 ごはん、昨夜の残りの春巻、肉団子、トマト、錦松梅、のりと梅干の吸物。
昼 皿うどん、りんご、紅茶。
2時ごろ、イタチは雨の中をまたやってきた。今日はインスタントラーメンとおでんの残りが置いてある。イタチは、おでんのさつまあげをくわえ上げてみる。そのまま置いて、ほかのものを少し食べては、またさつまあげをくわえてみる。食べなれない奇妙なものだと思っているのだ。
(中略)
夜 ごはん、鮭茶漬(主人)、春巻(私)。
お汁粉にお餅を2つ入れて食べた。9月27日(金)雨
朝 ごはん、豚汁(卵をおとす)、主人。トーストパン、卵、バター、紅茶、私。
(中略)
昼 焼飯(かにチャーハン)、スープ、トマト。
(中略)
夜 ごはん、さんま干物、しらす、大根おろし、すいとん汁、果物ゼリー。
残りの御飯で焼きにぎりを作る。ふかしいもも作る。明朝帰京する。今日はおにぎり弁当を買った。2箱400円。
(中略)
昼 おにぎり弁当(主人だけ食べる)、味噌汁(じゃがいもとわかめ)。
夜 パン、ハンバーグステーキ、玉ねぎとトマトスープ、クレソン、さやいんげん塩ゆで。夜 栗御飯、ロースハム、ほうれん草とごぼうのごま和え、なめこ汁。
御飯を終えて、主人と門のところまで月を見に出る。6時ごろ、東の空の月は大きな黒い雲の中に隠れて、光だけが洩れている。今夜は仲秋満月の上に、日本では今世紀最後の皆既月食だ(主人の話)。コーヒー牛乳を飲んでから、テラスへ出てみる。
武田百合子著『富士日記』より