筋にあんまり関係ないが、ウェブデザインを見てデザイナーを特定できる、というのは無理がある。
2000年初め、ブログ登場までならまだギリギリそういうこともあったかな。でも出版されたのは2011年、レスポンシブデザインはまだ普及していないが、とりあえずホームにFlashはナイ、という認識になっていたころ。私はまだボタンのスワップ画像をいちいちフォトショで作っていたっけ...。
これも変なところで引っかかった箇所だが、スーパーで働く昔の担任の名札の名前が変わってないからって一回も結婚していないんだ、かわいそうなんだ、って憐れむのも余計なお世話すぎる。
私のまわりの既婚者は性別を問わずほとんど名前が変わっていないので、特にいつの時代ですか感がスゴイ。
いい加減、日本でも別姓を選択できるようになるといいね...呆
「オススメで適当に作ってもらっていい? ここ、鹿肉がおいしいから、それだけはコースに入れてもらうように言うけど」
「何でも。すごいのね。ここ、紗江子の行きつけなの?」
「でもないよ。雑誌の打ち合わせなんかでね、何回か使っただけ。でもそうだね、まあおいしいし、気に入ってる。聡美ちゃん、ワインで平気?」
(中略)
ハーブや胡椒がふんだんに利いた魚料理を一切れ口に運ぶ。量が多かった前菜のせいで、既に満腹感があった。メインの鹿肉まで、全部を食べることは難しいかもしれない。思う聡美の横で、紗江子が器用に魚を切り分け、片付けていく。
(中略)
あっという間に魚を平らげ、つけ合わせのパンで皿のソースを拭う。駅構内にあるジュースコーナーで、今日も野菜のミックスジュースを買う。それは上京してから5年間の聡美の夕飯だった。飲みながら、通い馴れた薄暗い道を歩く。
「びっくり。どうしてこんなとこでパンを買ってるの。あなたともあろう人が」
「そんなこと言われても。ここ、おいしいし、ふっくらしてるけどバターの匂いがあんまりしないから好きなの」
つい視線をやると、彼女のトレイには食パンが1斤とパックのサンドイッチが載っていた。周囲に気付かれないように、お互いに小声になっていく。
「時間ある?」と話しかけてきたのは、意外にもキョウコの方からだった。
「私、ご飯まだなの。ここのイートインコーナーで、一緒に食べない?」
「私はいいけど、大丈夫なの?」
「ええ」
同じサンドイッチを買い、紙コップに注がれた安いコーヒーをそれに並べる。席にトレイを置く間に、キョウコがセルフサービスの水を汲んできた。
(中略)
「午前中でおしまい。家、この近くなの。解放されて、お風呂に入って一眠りしたらもう夕方だったから、好きなパンを買いに来た」運ばれてきた冷製スープをスプーンで口に運びながら「そうでもないでしょ」と彼女が答えた。
辻村深月著『太陽の坐る場所』より