たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

山内マリコ『かわいい結婚』ズワイ蟹のトマトクリームのタリアテッレ

2編目の「悪夢じゃなかった?」がよかった。男女の関係として理想的。だから夢なんだとはいえ。

グラタンとタリアテッレ食べたーい。

都会の有名な洋菓子店で何年も修行も修行したという職人が帰郷し、実家の裏に作ったという小ぢんまりしたパティスリー。ログハウス風の外観で内装も凝っている。イギリスのアンティークテーブルとアーコールチェアが置かれたイートインスペースもあり、高尚な食べ物とおしゃれな空間を求める地元の女性でいつも混雑していた。
「ファミレスとか、もう行ってらんないよね」
たえちゃんは桃のパイをフォークで掬いながら言った。
たしかにたえちゃんと行動を共にするようになってから、ひかりの文化レベルはすっかり上がってしまい、夫のまーくんとの外食が物足りなくなってしまった。まーくんが行くのは幹線道路沿いにあるチェーン店ばかりだ。そういうところの大味で高カロリーなメニューはもう体が受け付けないと、内心ひかりは思っている。
「ひかりの家って、ルンバあるんだよね。いいなぁ~。あたしも買おっかな」
桃のパイを食べ終えると、たえちゃんはレモングラスティーを飲みながらふぅーっと一息ついた。

「たまにならいいの。たまに半日くらいかけて、手の込んだ料理作ったりして、友達招いてご馳走するのは好きなの。でも毎日っていうのはね。すっごい手間だよね」
「そうだねぇ」
ぼんやりと相槌を打ちながら、たえちゃんは普段どのくらいの食事を用意しているんだろうかと、ひかりは考えた。レトルトの合わせ調味料で炒めた、麻婆豆腐やチンジャオロースといった大皿料理がボンとテーブルに置かれた手抜きスタイル? それとも一汁三菜しっかりそろったヘルシー志向? メインの料理の脇に、おひたしとか、もやしの胡麻和えなんかがちょろちょろっと添えられた気の利いたお膳? そういうディテールをたえちゃんは口にしないから、肝心のレベルがいまいちわからなかった。
(中略)
「うちの旦那さん、冬瓜のスープが飲みたいんだって。よくお母さんが作ってくれたって言うの。まあ美味しいけど、冬瓜ってけっこう固いし、包丁入れるの大変じゃない?」
「あ、わぅぅん」
ひかりは返答に詰まった。
冬瓜なんて、切ったこともなければスーパーで手にとったこともない。そもそもその見た目すら、パッと頭に浮かばない。

時々スターバックスで甘いコーヒーを飲むのが、ひかりのちょっとした息抜きだ。とてもこの街の人とは思えない洗練された態度の店員たちを相手に、しれっとした顔で複雑なメニューを諳んじ、たえちゃんが見つけてくるお店とはまた違う、グローバル・スタンダードな安定した世界観に身を浸す。
いつもほどほどに混んでいる店内、ひかりは運よく空いていたソファ席に腰を下ろした。ショートサイズのホワイトモカ400円が高いか安いかはさておき、ひかりにとって昼間のスタバで1人コーヒーを飲むことは、十分すぎるほどリッチで優雅な行為なのだった。

毎朝起こしてもらい、眠い目をこすりながら食卓につけば、そこにはバターがとろりとしみた熱々のトーストと、いちごやマーマレードのジャムが並んでいた。

味噌汁はダシを取ることなど思いつきもしないので、とりあえずお湯に味噌をぶちまけ、鍋の中で銀河系みたいに渦を巻き、ぐつぐつと煮立ってきたら完成とした。米を研ぐときに食器洗い洗剤を入れているところをまーくんに見られ、「殺す気か!?」と怒鳴られた。その結果、レトルトのお米とフリーズドライの味噌汁が主食という、現在のスタイルに至ったのだ。

こんなの別に食べたくないけど......と思いながら、三杯酢付きのところてんや練り物といった、調理の必要のないものをカゴに取り、精肉売り場では同じ理由からステーキ肉をチョイスする。塩コショウを振って焼くだけなら、ギリギリ自分にもできる。惣菜コーナーでポテトサラダの大パックを取り、ついでに熟れたアボカドもカゴに入れた。アボカドは切ってわさび少輔をかけるだけで一品になるから、重宝している。
アボカドの有用性を教えてくれたのはたえちゃんだった。
ひかりの実家の食卓にこんなものは出なかったから、長らくアボカドは、気取ったカフェ飯や創作居酒屋でときどき巡り会う、得体の知れない美味しいもの、という認識だった。たえちゃんとスーパーに行き、野菜なんだかフルーツなんだかわからない、ごつごつした洋なし状の、恐竜の皮膚みたいな外皮の山から、黒ずんだものを手にとって、「これ、ちょうど食べごろかな」と選んでいる姿を見て、ひかりは「ふむふむ」と真似して買った。
たえちゃんは、一体いつアボカドを、カジュアルに調理するようになったんだろうとひかりは考える。
たえちゃんはおしゃべりのくせに、肝心の自分自身のことは話してくれない。まるで生まれたときからアボカドに親しんでます、アボカドに対する心理的ハードルはゼロです、みたいな感じだが、そんなはずがない。だってアボカドなんて昔はなかったじゃん。たえちゃんのこの、パクチーとかも「大好き!」って言いそうな軽薄なこじゃれ感って、なんなんだろうか。

エコバッグを車の助手席に積み込んだところで、まーくんからメールが入った。
<ステーキ食べたいから今日のメシはビッグボーイでいい?>
ひかりはエコバッグから覗くステーキ肉のパックをまじまじと見つめた。白いトレーに載った、汁の染みだした赤身の肉。30%引きのシールが貼られているだけあってところどころ黒っぽく変色し、まったく食欲をそそらない。これ放り捨てちゃおうかな、という考えが頭をよぎる。
こんなときたえちゃんなら、<ちょうどステーキ肉買ったんだ! 家で食べようよ?>とか返すんだろうか。ひかりは、家で食事の支度をしなくていいなら、なんだってうれしい。それが吉野家の牛丼でもなんでもオッケーだ。ひかりは<わーい。ステーキステーキぃ〜>と打ち返して、この3割引のステーキ肉は冷凍することにした。こういう流れで冷凍庫にぶち込んだ肉をちゃんと解凍して調理したことは、過去一度もないけど。

夜8時のビッグボーイの店内、メニューに目を走らせながらまーくんは言った。
「ハンバーグとステーキ、両方食べたい」
(中略)
「ぴかりはねぇ、チキン竜田揚げのさっぱりみぞれ煮定食にする」
「ヘルシーですなぁ」

たえちゃんが予約を入れた広東料理の店は、住宅街にひっそり佇んでいた。地元の人にはあまり知られていないけれど、実は知る人ぞ知る名店だという。わざわざ遠方から通う常連もいるらしかった。
ランチで1600円は、たしかにこのあたりの相場からすると高い。それだけに内容も豪勢で、アヒルのスープ、空心菜のニンニク炒め、ピータン豆腐、特製のネギタレをつけて食べる蒸し鶏、餃子、酢豚、海鮮粥......どれも味付けが優しく、滋味が体に染み込んでくるようだった。
「なんか油が全身に行き渡る感じ〜」
たえちゃんはとろけそうな顔で、まさに快感に悶えるように言った。
美味しいもののためなら、千里をも越えるたえちゃん。高校時代は、同じ学食でたいして美味しくもないカレーうどんを食べていたはずなのに。放課後ファストフードで、新商品のバーガーに小遣いをつぎ込んでいたろうに。

「うちのお母さんだって、新婚のころはダシも取れなかったって言ってたよ?」
「え、そうなの?」
「そうだよ」
「たえちゃん、ダシの取り方わかる? どうやって取ってる?」
「え〜、お湯沸かして、かつお節ひとつかみ......ちょっと煮立たせて放り出す、とか? あとはダシパックとか、面倒くさいときは顆粒ダシ使うし。適当だよ」
その"適当"ができなくて困ってるんだけどな、とひかりは思う。改めて、この同い年の先輩に羨望の眼差しを向けていると、たえちゃんはマンゴープリンをスプーンで口に運びながら、突然切り出した。

お米が炊きあがったら少し蒸らしてからしゃもじでかき混ぜる。一気に6合炊き、ピカピカの白米の状態で、タッパーに小分けして冷凍保存し、セツさんの1週間分のごはんのストック作りは完了だ。
(中略)
家の掃除が済んだところで、昼休憩だ。
台所を使わせてもらって前田さんがお蕎麦を茹で、厚焼き玉子を作り、みんなでいただく。
「いやぁ〜、こんなにきれいになってぇ〜ありがとうね、ありがとうね」
いままでどこに隠れていたのだろう、セツさんは姿を見せると、みんなで食べるのがこのサービスのいちばんお楽しみなんだと、悲しくなるくらいにこにこして言った。
前田さんの作ったざる蕎麦を前に、セツさんはほとんど「ナンマイダー」の勢いで拝み、頭を垂れ、ありがたそうに食べた。厚焼き玉子はお菓子みたいに甘い。けれどたっぷりの砂糖のおかげで、午前中の疲れがとれるようだった。
(中略)
結局家に戻ったら4時近くになっていて、そこからひかりにとって最大の関門である、夕飯作りがはじまった。
まずは味噌汁から。セツさんの体のことを考えて、ダシはかつお節から取ることにしている。のっけからハードルが高いが、前田さんは「簡単簡単」、あっけらかんと言った。
「小鍋にこんくらい水張るでしょ、火にかけて沸騰してきたところでかつお節ひとつかみ入れて、すぐ火止めちゃうの。それで2分くらいかな、黄金色に見えるくらい色が出たら、ざるで漉して、一丁あがり。あとは切った具を煮立たせたら、火を止めて味噌を適量溶かして完成。ネギを入れるときは必ず最後ね。味噌入れてからは絶対にぐつぐつやんないで。風味飛んじゃうから。さ、じゃあ次はじゃがいも剥いてもらおっかな」
ピーラーを渡されたひかりは、たどたどしくじゃがいもに刃をあてる。面取りをして水にさらし、水を張った鍋に入れる。
「なに作るんですか?」
「肉じゃがよね。言わずもがな! アハハ!」
前田さんは、いろいろ試した末に編み出したという、秘伝の作り方を伝授してくれた。
「ちなみに肉じゃがを作るときは、同じ材料で翌日はカレーにするのも忘れずにね。肉じゃがとカレーは具がほとんど一緒だから」
「へぇ〜スゴい!」
「そうね、肉じゃがよりまずはカレーを作ることね。いまやってるように、にんじんとじゃがいもと玉ねぎを切って、お鍋でぐつぐつ煮るの。コンソメでも入れりゃ最高よ! 煮込めてきたらカレールウを溶き入れてさらに数分煮ればオッケー。多めに作れば3日はもつわよ。しかも1日目より3日目の方が美味しかったりするんだから」
肉じゃがが煮えたら、じゃがいもに火が通りすぎないうちに今度は冷ます。蓋を取って涼しいところに置くと、ぐっと味がしみるのだ。
「セツさんはけっこうお肉好きなのよ」
ということで今晩のメインのおかず、もやしと豚バラの蒸し焼きを作ることに。簡単だけど美味しいおかずとして、前田さんはこのレシピをひかりに推奨した。
水洗いしたもやしをフライパンにざっとあけ、程よいサイズに切った豚バラ肉を、もやしの上に1枚1枚広げて敷き詰めていく。火を点けて、レモン汁をざぁーっとまわしかけて、蓋をして数分待てば、ヘルシーな一品がもう出来上がっていた。
「ハンバーグとか、わざわざ手のかかるもんなんて、作んなくてもいいのよ。どうせ男の人は、料理にどれだけの手間かかってるのかなんて、考えやしないんだしね。だったら断然こっちよ。これにポン酢つけて食べたらほんと美味しいんだから〜。あたし本気で、ポン酢作ってる業者には感謝してる!」と前田さん。

今日教わったとおり、まずは洗濯機を回す。その間に流しをきれいにし———もちろんあのシャンパンタワー方式で!———野菜を切ってコンソメを入れて煮込む。
(中略)
カレールウを入れて弱火でさらに煮込み、野菜が煮崩れないうちに火を止めて冷ます。

たまに前田さんが来てくれて、美味しいおかずの作りおきを、冷蔵庫にたっぷり入れていってくれる。夫が妻の手料理に喜ぶように、ひかりは前田さんが作ってくれたおかずに狂喜した。前田さんは必ず作り方のメモを付けておいてくれるけれど、上手に再現できたことはまだ一度もない。

「今日は暇だったからキッシュ焼いてみた!」と言うと、「キッシュってなに?」
「まーくんはぴかりのこと好き?」
「うぅーん、そうだね」

「ごめんごめん、ねえお腹すいてない? ごはん食べた?」
「もう食ったよ」
「なに食べたの?」
「グラタン」
「あ、お母さんの手作りの?」
「そうだよ」
「美味しかった?」
「普通」

裕司は再び電車に乗ってなんとなく新宿で降りると、頭を冷やすために駅構内にあるコーヒーショップに入った。思えば朝からなにも食べていない。彼はホットドッグとコーヒーを頼んで、ガラス張りのカウンター席に腰を下ろした。

エスカレーターでレストランフロアへ行き、つばめグリルを見つけるや彼は駆け込んだ。ビーフシチューがたっぷりからんだハンブルグステーキを頬張り、白いご飯を食べ、水を流し込んで一息つく。胃にものを入れると気持ちがちょっと落ち着いて、食後にコーヒーなんか頼んでしばし呆けてしまう。買い物疲れである。

それどころか風呂上がりに、「きみはビール飲める?」と訊かれ、「もちろん」とこたえるや、石井は晩酌をつき合ってくれと言う。テーブルにはスーパーの惣菜コーナーで買った冷たいおかずが、透明のトレーに盛られたまま並ぶ。テレビの前で二人横に並んで、バラエティ番組を観た。
缶ビールが4本、焼酎の水割りが3杯、コンビニで買ったらしきチリ産のワインをだらだら飲み、12時を回るころ布団に入った。

店の人とも顔見知りらしく、ワインを楽しそうに飲んでいる。メニューを片手におすすめをいくつか挙げ、
「ブイヤベースが美味しいんですよ、ここ。一緒に食べません? いつも一人だからなかなか注文できなくて」
ミツコは前菜をあれこれ注文した。

プラスチック製のコーヒーカップにインスタントの粉とお湯を注ぎ、スティックシュガーとコーヒーフレッシュとマドラーを添えて出す。

二人はエスカレーターで3階までのぼると、ビストロカフェに入った。あや子はおしぼりで手を拭いながらやっと人心地ついたとばかりの表情だ。ユリはメニューを見るなり「ごはん食べない?」と、ズワイ蟹のトマトクリームのタリアテッレを注文した。
「タリアテッレってなぁに?」
「パスタよ」
「......そう」
あや子も同じものを頼んだ。
お腹が空いていたのか、あや子はあっという間に食事を終えると、口角をナプキンで拭い、改めてユリに向き直った。

山内マリコ著『かわいい結婚』より

富士日記(53)糖尿病対策

糖尿病になりやすい日本の食習慣...。1型糖尿病は社会文化病だよね。金持ちも貧乏人もそれぞれ別の理由でかかる。アメリカに来てから知人2人を糖尿病でなくした。1人は爪先を切る手前まで行って亡くなり、もう1人はせっかく移植を受けられたのに数か月で力尽きた。支援の罐詰漬けになってそれまでなかった糖尿病患者が爆増した国のことも思いだす。

6月23日(金) くもり朝のうち小雨
朝 麦ごはん、くしろ塩焼(これ、まずい!!)、つまみ菜おひたし、豆腐味噌汁、じゃがいもととり煮付、いちご。
昼 ホットケーキ、トマトと玉ねぎスープ、シューマイ、キャベツ塩茹で、わかめとちりめんじゃこ三杯酢、プリンスメロン。
夜 麦ごはん、天ぷら(キス、いかのかき揚げ、いんげん、茄子)、かきたま汁。
午前中、霧のような雨。タマも主人もずっとねている。
(中略)
夕飯の支度をしていると、いったん帰られた大岡夫人が、きす5本とあいなめ(?)2枚、もってきて下さる。おていちゃんの友達が大磯から差入れにきたそうで、大きな氷が一緒に入っている。

6月24日(土) うすぐもり
朝 麦ごはん、かぼちゃ味噌汁、魚煮付、春菊ごま和え、きゅうりとしらすとわかめ三杯酢。
昼 ふかしパン、オムレツ、ほうれん草バター炒め、夏みかんゼリー。
夜 麦ごはん、なすしぎ焼、いんげんと肉とじゃがいも煮、わかめと玉ねぎサラダ、かぼちゃと小豆の煮たの、いか煮付。
午前中、2時間ほど、午後も2時間ほど、草刈り。
草刈りを少ししては休み、また草刈りをしていた主人、休むたびにテラスで罐ビールを飲みながらおせんべいをかじっている。一人言のように言う。
「俺、なんでトウニュウなんぞになったのかなあ」
「こーんな大きな茶碗に3杯ずつ朝昼晩、御飯食べたでしょ。その間におやつにパンを食べたでしょ。酒も沢山のんで、うなぎや肉の脂身食べるのが好きで、野菜や果物食べなかったでしょ。若いときからずーっと。それがたまって糖尿病になったの。運動しないで食べすぎ、のみすぎだとなるらしい(中略)そのおせんべだってカロリーに入るよ。2枚がごはん1杯分かな。それはお米でできているから、はっきりしてる」
「えッ。これ、米でできてるのかなあ? ちっとも知らなかった。これも米でできてるのか? 茶色いから米じゃないと思ってた」
「茶色いのは醤油の色。おせんべ沢山食べてビール沢山飲むと、ほかのもの減らすよ」
もうすでにおせんべいを何枚も食べたあとだったからか、主人はめずらしくすぐ、おせんべいを食べるのをやめた。残りの罐ビールだけ飲んでいる。そして手の中にあった食べかけのおせんべいのかけらを、テーブルの上にぽとっと置いた。歯が入ったから、パリパリと噛んで食べてみたいと長い間思っていた固いおせんべいを食べられるのが嬉しくておいしくて、毎日食べていたのだ。

朝 麦ごはん、大根味噌汁、魚煮付、わかめとキャベツ三杯酢、いんげんとちくわ煮付、プリンスメロン。
昼 うすやき、玉ねぎとトマトスープ、春菊ごま和え、夏みかんゼリー、中華オムレツ。
夜 麦ごはん、野菜スープ、いんげんとキャベツおひたし、肉団子。

●昭和48年

昼 麦ごはん、ゆばとわかめの味噌汁、キャベツの塩もみ、牛肉バター焼。遅く3時ごろ食べた。
(中略)
海のみえる崖の上の食堂で、お刺身(主人)、いか丸焼(私)をとる。いかの丸焼は、年とったいかだったらしく、大きいことは大きいが、硬くて味がなく、ゴムを食べているようであった。食堂を出て、そのへんを歩いて海をみたりした。

談合坂で一休み。つつじが満開。肌寒い。カレーライス(主人)、チキンライス(私)、出された水を飲むと体が寒くなった。チキンライスをとったのに、この前食べたタケノコ御飯定食の御飯と同じ味の醤油炊き込みライスであった。この次から、もうこれはとらないことにする。
(中略)
昼 麦ごはん、こんにゃくとにんじんと椎茸の白和え、とりささみつけ焼、キャベツ酢漬、とろろ昆布のおつゆ、トマト。
(中略)
夜 麦ごはん、あこうだい煮付、あんかけ豆腐、ほうれん草おひたし、夏みかんゼリー。

5月2日(水) 雨
朝 麦ごはん、大根味噌汁、シューマイ、キャベツ塩もみ、しらす大根おろし和え、りんご。
(中略)
昼 ざるそば(私)、かけ(主人)、なめこ大根おろし和え、がんもどきといんげん煮付。
夜 麦ごはん、はんぺんとみつば清し汁、かにたま。

●昭和49年

6月16日(日) 快晴
朝 麦ごはん、大根味噌汁、まぐろ煮付、アスパラガスおひたし、茄子油炒め。
9時ごろ電気屋来る。壁の照明灯2個、電球を入れ直してゆく。
昼 パン、サラダ、ソーセージ、プリンスメロン、紅茶。
夜 麦ごはん、かきたま汁、のり、うに、佃煮、さつまあげ。

6月17日(月) くもり時々晴
朝 麦ごはん、なす味噌汁、トンカツ、じゃがいも粉ふき、きゅうりとアスパラガスと紫キャベツのサラダ。
昼 パン、ソーセージ、とりスープ。
夜 麦ごはん、豚汁、紅鮭、炒り卵。

夜 麦ごはん、海苔、明太子、大根おろし、うに、はんぺんとみつば清し汁、くこ酢味噌和え。

6月26日(水) 晴、夜くもり
朝 チキンカツ、麦ごはん、紫キャベツサラダ、いんげんおひたし。
夜 麦ごはん、海苔、鮭罐詰、大根おろし、コンフリーごま和え、キャベツ糠漬。

6月28日(金) くもり時々晴
午後4時ごろ、大岡さんパンを持ってきて下さる。昨日家の中で電気ストーブにあたっていたら、めまいがしたから、今日はビールは飲まないといわれる。

カレーパン1個、コロッケパン1個、卵パン1個、食パン、合計290円。
(中略)
夕方、花の苗を植える。
夜 麦ごはん、けんちん汁、まぐろ煮付。

武田百合子著『富士日記』より

富士日記(52)「カツ丼が270円でカツライスが150円なのはどうしてだろう」

植木屋さんのじゃがいも弁当を「とてもおいしそう」という百合子さん。日本の見本ろう細工、新しい飲食店にはほぼないだろうけど、意外と廃れないですね。すごく面白いカルチャーだと思う。工場は一度行ってみたい。

4月23日(日) くもりのち雨
朝 ごはん、豚汁、のり、炒り卵。
昼 きつねそば(私)、カツ丼(主人)、S農園で。
夜 ごはん、はまち照り焼、大根おろし、きゅうりとしらす三杯酢、キャベツ油炒め。
9時半ごろ、女2人、男2人、N村の植木屋が上って来る。
お昼にコンビーフとお茶を持って行くと、門の石垣に腰を下ろして食事をしていた。ほうれん草のおひたしが弁当箱に一杯、たくわんが弁当箱に一杯、ぎっしり詰っている。ごはんがビニール布の上にパカッとあけてある。
10時のお茶のときは、袋に入れた茹でじゃがいもに塩をつけて食べていた。それがとてもおいしそうだった。
主人を乗せて山中湖へ下る。S農園で昼食。「カツ丼が270円でカツライスが150円なのはどうしてだろう」と、S農園を出たあとで主人が言う。カツ丼をとったら、見本のろう細工のカツ丼にそっくりの色と形をしていた。主人は3分の2を食べて「百合子、食べろ」とくれる。食べようとしても、私はどうしても食べられない。
(中略)
雨が降ってきたので、植木屋のお茶は食堂で出す。お汁粉とおせんべいとお茶。一人だけ甘いものが食べられない男衆がいる。

夜 新キャベツとしその葉の塩もみ、ごはん(五目炊き込みごはん)、大根味噌汁、むつ煮付、あこう鯛煮付。

昼 焼きそば。
夜 五目炊き込みごはん、かにコロッケ、かきたま汁。

夜 麦ごはん、ひらめフライ、はんぺん清し汁、キャベツとアスパラガス、白菜酢油漬、プリンスメロン。

朝 麦ごはん、ちくわつけ焼、大根おろし、豆腐味噌汁、白菜と椎茸と桜海老中華炒め、プリンスメロン。
(中略)
夜 麦ごはん、木須肉、水菜おひたし、とりスープ、いちご。
星が沢山出ている。

足柄で。主人便所へ行く。ちくわ(200円)を買い、タマ1本、私1本、主人1本食べる。小田原のちくわ。冷蔵容器に入っていたから、冷たくて、おいしい。
(中略)
昼 ごはん、シューマイ、新キャベツ炒め、コンフリーおひたし、豆腐味噌汁。
夜 ごはん、粕漬さわら、はんぺんとみつば清し汁、ふきとしらす煮付、きゅうりといか酢のもの。

5月18日(木) 快晴、風なし
朝 麦ごはん、キャベツ味噌汁、木須肉。
昼 ふかしパン、グリンピース塩茹で、野菜スープ、すみれのおひたし(隣りのおじいさんにもらった)。
夜 ごはん、大根と牛肉煮付、かれいフライ、さつまいもから揚げ、ニラといかのぬた。

5月23日(火) くもり時々晴
前11時、東京を出る。東名高速を通る。足柄でちくわを買い、食べる。

朝 ごはん、味噌汁、とりのハム、白菜ときくらげと桜えびの油炒め。
昼 うす焼、野菜スープ。
夜 ごはん、しらす大根おろし和え、ほうれん草とわかめのおひたし、トマト。

夕方、外川さん、石工の男1人連れて遊びに来る。仕事の帰り、門のとrこおを通ったら車がとまっていたから、と言う。
ビール、ウイスキー、チーズを出す。

6月3日(土) くもり
朝 ごはん、さつま汁、なまりの煮たの、わかめのおひたし、つまみ菜ごま和え、グレープフルーツ。
昼 ごはん、あじ塩焼、大根おろし、はんぺんとみつば清し汁、コンフリーおひたし。
夜 パン、トンカツ、キャベツサラダ、スープ。
タマ、うぐいすをとってくる。

夜 ごはん、コロッケ(かに)、野菜スープ、みつばおひたし。

6月11日(日) 晴
快晴。いろんな鳥の声が、方々でしている。
朝 ごはん、ひらめのでんぶ、卵とじゃがいものオムレツ、大根味噌汁、コンフリーおひたし。
昼 すいとん。
(中略)
夜 ごはん、まぐろ照り焼、大根おろし、みつばおひたし、はんぺんつけ焼、さつまいも甘煮。

朝 ごはん、紅鮭、大根おろし、白菜酢油漬、海苔。
昼 天ぷらそば(桜海老のかき揚げ)。
雨は夕方まで降ってあがる。
夜 ごはん、コンビーフコロッケ、いんげんとあぶらげ煮びたし(隣りからもらった)。

昼 ごはん、ハンバーグステーキ、じゃがいもうらごし、春菊ごま和え、きゅうりとしらす三杯酢、わかめ味噌汁。

6月22日(木) うすぐもり
朝 ごはん、いさき塩焼、大根味噌汁、茄子しぎ焼、のり、いちご。
昼 パン、玉ねぎとトマトスープ、とりささみバター焼、ほうれん草バター炒め、プリンスメロン。
夜 粟餅のりまき、グリンピース塩茹で、漬菜ごま和え、かまぼこ。

武田百合子著『富士日記』より

金原瑞人『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』

いつからか積ん読になっていたのだが、本を減らしたいと思い苦痛を乗り越えて読みきった。こういう微妙な雑談が長い翻訳講師いる。縦書き・横書き考は収穫。

父親は釣りが大好きだったが、釣って帰った魚はよく自分でさばいていた。そしてそのうち、息子にさばかせるようになった。というわけで、フナ、ハヤといった川魚から、チヌ、メバル、ベラ、ブリ(さすがにこれは釣れない)といった海の魚まで、息子はしっかりさばけるようになっていった。もちろん、タコ、イカもさばけるし、カレイの5枚おろしもOK。ついでに包丁も研げる。
父親はすき焼き、ちり鍋といった鍋物だけでなく、いくつか得意料理を持っていた。たとえば、ハヤの南蛮漬け、牛肉の醤油煮込み、ウズラの串焼き、味噌うどん炒め、タラの真子の煮付け、きんぴら、バラ寿司、などなど、あの頃の男性のなかでは、かなりレパートリーは広かったと思う。もちろん失敗も多く、白菜の漬け物を、ポリバケツに3杯ほどつくって、すべて腐らせたこともある。(中略)
とにかくうちの父親は、客を呼ぶのが好きだった。次々に客を呼び、料理を出し、酒を勧めるのが大好きだった。そして「うまかった」とか「ありがとう」といわれるのがなにより嬉しかったらしい。
そんなわけで、息子もその血をついで、客を呼ぶのが好きで、料理をするのが好きになってしまった。浪人の頃、受験勉強で忙しいはずなのに、鶏を1羽ゆでては友達を呼んで食べていたし、大学院の頃もよく仲間を呼んではパーティを開いた。たとえば、そのメニューは次のような感じ。
- イカの塩焼き、クラゲの酢の物、ブタのレバーの煮付け、豆腐干とハムのサラダ
- 挽肉に香料などをまぜて練り、薄焼き卵で巻いて、蒸し上げたもの(蛋捲肉 タンチュアンロー)
- スープ(コーンポタージュ、あるいはコンソメ)
- 鶏を1羽そのまま蒸したもの
- ブタの角煮
- チャーハン
- 長芋をすり下ろした衣で胡麻餡を包んであげた、饅頭。
なぜか中華が多かったが、そのほかにもいろいろ試したことがある。
(中略)
そしてもうひとつ考えるのだが、息子の翻訳好きは、やはり喜んでもらいたいというところからきているらしい。自分が読んでおもしろかったものを、他人に勧めて、読んでもらって「よかった!」といってもらう......それが嬉しい。

金原瑞人著『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』より

金原ひとみ氏の実父であることはごく最近知った。

富士日記(51)颱風

「颱風」。この本で初めて見た漢字表記。きちんと活字があって素晴らしい。

すきやきと言えば、昨日Hマートで買ったブタバラにハングルですきやきと書いてあるのが読めて嬉しかった。どんなあんぽんたんでも10日で読めるようになるというハングルだが、私は10日ではすべてさらうことはできなかった。表音文字は覚えることに知的興奮が少ない。神経衰弱をしてる感じ。

8月4日(水) くもり、風つよし
朝 ごはん、ひらめ煮付、味噌汁。
昼 とうもろこし粉を入れたふかしパン、野菜ととりのスープ、トマト、ベーコンエッグ。
夜 ごはん(味つけごはん)、かます干物、ひじきとなまりの煮たの、茄子しぎ焼、みょうが汁、はんぺんつけ焼。
颱風19号が九州に上陸。

朝ごはんのとき、西の原っぱに虹が低くゆるゆるとたつ。ごはんを食べながら見ている。「この景色、あすこからここまで全部あたしのものだぞ」と言うと、主人は知らん顔をしていた。また始まったというような顔。
昼 ふかしパン、スープ。
(中略)
ウイスキーとビール、ソーセージ、じゃがいもフライ、かにとキャベツサラダ、山芋天ぷら、冷しハムとクラッカー。
(中略)
8時過ぎ、奥様が迎えにみえる。「雨が降っていても花火が上ってましたよ」といわれた。そうめんを頂く。
皆で飲んでいると、テラスに出し忘れていたパラソルが風でとんで、溶岩の角にあたって裂けた。

8月6日(金) 雨、時々晴、風つよし
7時、眼がさめる。今日も荒れ気味のお天気。
8時朝食 ごはん、かにたま、鮭と玉ねぎ酢油漬、味噌汁、サラダ。
今朝も、ごはんを食べていると、西の原っぱに虹がかかる。
(中略)
昼 そうめん、ごま入りのおつゆ、ちくわと紫蘇の葉の梅干和え。
夜 ごはん(桜めし)、みょうが汁、丸焼茄子、あとは、昨日と朝の残りもの。

主人は「腹がすいた」といって、持ってきたサンドイッチを食べはじめる。
(中略)
山へ着いて、遅い昼食。ごはん、じゃがいもと玉ねぎのオムレツ、スープ、りんご。
主人も私も昼寝。
夜 牛肉バター焼、ごはん、大根おろし、わかめとねぎ味噌汁。

10月24日
本栖湖、西湖、朝霧高原へ行く。紅葉を見に。
昼 天ぷらうどん、おひたし、
(中略)
夜 桜めし、おでん、漬物。

談合坂の売店で、肉まん2個(主人)、シューマイ弁当(私)を買って車の中で食べる。タマに弁当の中のカマボコをやる。
(中略)
昼 ごはん、とりささみバター炒め、キャベツ千切り、春菊おひたし、わかめとしらす酢のもの。
(中略)
手打うどん製造所「はなや」で手打うどんを6玉買う。「はなや」の店の奥は障子がたてきってあって、家族は皆こたつにあたっているのか出てこない。チャンチャンコを着た男が出てきて包んでくれる。
魚屋で。かれい一切れ120円。伊達巻と紅白のかまぼこが、もう並べてある。新しい光っているブリキのバケツが重ねて積まれている。バケツには蓋がしてあって「酢だこ」とレッテルが貼ってある。
(中略)
夜 かけうどん、ニラと卵の油炒め、春菊ピーナツ和え。

12月15日(水) 晴少し風
アルプスは真白だ。
朝 ごはん、じゃがいもとニラの味噌汁(卵をおとす)、かれい煮付、蓮根炒め煮、いちご。
昼 ホットケーキ、トンカツ、牛乳、みかん。
夜 ごはん、鯖味噌煮、ニラおひたし、大根おろし。

12月16日(木) 快晴
朝 ごはん、シューマイ、キャベツ千切り、ちくわ、味噌汁。
昼 うどんバター炒め。
夜 粟餅のりまき、貝柱とねぎ清し汁。
10時ごろ、タマが外に出たがって騒ぐ。

●昭和47年

4月21日(金) くもりのち晴
昼 パン、スープ、中華風オムレツ。
夜 ごはん、すき焼。

4月22日(土) 快晴
朝 ごはん、キャベツ味噌汁、すき焼の残り、きゅうりとわかめとしらす三杯酢。
昼、河口湖フラミンゴで食事。牛ヒレ肉ストロガノフというのを主人はとった。800円。川鱒、しばえびフライ500円、サラダ300円、アイスクリームを、百合子はとった。
フラミンゴには、私たちのほか、1組客がいるだけでしんとしていた。その1組は若い男と年上らしい女で、その女は、はじめ鱒のフライをとって食べ、次にまた、牛ストロガノフをとって食べた。
夜 ごはん、たらこ、うどときゅうりとハムのサラダ、豆腐あんかけ汁。
河口湖を一周して本栖湖まで行った。

武田百合子著『富士日記』より

富士日記(50)おいしがって汗を出す

西海岸ではとりあえず冷凍の巨大鰻が手に入る。先週もうちのアメリカ人が1人でどんぶりを作成して嬉し気に食べていた。私は本当においしい鰻というものを食べないまま人生を終える気がする。イメージとしては浅草で扇ぎながら焼いてるやつ...。獲れないというのだからしかたない。

7月21日(水) 晴
朝食が終ったとき、東京から戸祭さん[大工さん]ともう一人の大工さんやって来る。談合坂をうっかり通りこしてしまったら、どこにも食堂がなかったという。
大工さんへ朝ごはん。味噌汁、ごはん、目玉焼とハム二切れ、粕漬まな鰹、きゅうりととり肉のあんかけ。
(中略)
昼 かにコロッケ、ごはん、はまぐり汁、トマト、煮豆、キャベツ酢漬。

夜 ごはん、かにたま、豆腐のおつゆ、おひたし。

7月23日(金) くもり時々雨
朝7時ごろ、地震。テレビでは震源地は道志村だといった。
朝 ごはん、味噌汁、大根おろし、うに、海苔。
昼 ワンタン。
夜 鮭と玉ねぎオイル漬、枝豆の黄身うに和え、はんぺんつけ焼き、キャベツ甘酢漬、おかゆを食べる。

7月24日(土) くもり時々雨
朝 ごはん、味噌汁、豚角煮(東坡肉)、大根おろし、いんげんごま和え。
昼 チーズトースト、玉ねぎスープ、トマト。
夜 ごはん、塩鮭、かきたま汁、茄子しぎ焼。

7月25日(日) 快晴、時々曇
朝 ごはん、味噌汁、東坡肉、大根おろし。
昼 ごはん、とろろ汁。
夜 ごはん、炒り豆腐、丸焼茄子、たらこ。
(中略)
夕方、大岡夫人、沢山のきゅうりと、卵とエクレアを持ってきて下さる。来客のおみやげをわたして下さる。

7月26日(月) くもり
朝4時、私だけ東京へ。暗い道にタマと主人、見送っている。6時少し前、赤坂に着く。
買出し。宮川のうなぎ、鱒ずし、佃煮、のり、あんみつなど。
(中略)
大岡さんへ美術全集と「青年の環」と、買出しの品を届ける。今日はうなぎとあんみつの闇屋。

朝 ごはん、うなぎ(主人)。
昼 とろろそば(花子)、山芋天ぷらそば(主人と私)。
夜 きゅうりと赤貝の三杯酢、なまり煮付(私、花子)、かきたま汁、ひらめ煮付(主人)。
(中略)
中年の主婦が3人でおにぎりを食べている。深刻な顔をし合って「お金を貸したのにいまだに返してくれない某さん」についてワル口をいっている。暗いスゴい顔をしている。
溶岩菓子2箱400円、鈴200円。
いか(焼きいか)150円、とうもろこし100円。
(中略)
若い男の運転するマークIIがとまって、中から、おじいさん2人とスーツ姿の太ったおばあさんが降りた。草むらへ入って野苺を夢中になって採って食べはじめた。
(中略)
S農園まで下って、昼食におそばを食べ、山へ戻る。

7月28日(水) 晴ときどき曇
朝 ごはん、豚角煮、味噌汁、丸焼茄子、大根おろし。
(中略)
夜 ハンバーグステーキ、ごはん、スイカモモ、ぶどう。
庭の大根を抜いて大根おろしにしたら、とても辛かったが、却っておいしかった。主人、おいしがって汗を出す。

夜 ごはん、いかつけ焼、生鮭バター焼、玉ねぎバター炒め、きゅうりと揚玉中華風(にんにく入り)三杯酢、なまりとひじき煮付、つまみ菜冷やし汁。

7月30日(金) 晴のち曇
朝 ごはん、たらこ、味噌汁、オムレツ。
(中略)
終って昼食。
ごはん、ゆで豚、精進揚げ、山芋天ぷら。
(中略)
夜 野菜スープ、ごはん、佃煮。

7月31日(土) 快晴
朝 ごはん、うに、のり、納豆、野菜スープ。
昼 ふかしパン、スープ。
夜 おかゆ、コンビーフ、鮭と卵油炒め。
(中略)
午後1時、読売新聞社のインタビューの人来る。
ビール、コンビーフ、じゃがいもフライ、山芋天ぷら、を出す。

8月1日(日) 快晴
くらくらするほどの青空。今日は日曜だから山を下りない。一日、草を刈る。
朝 ごはん、たらこ、うに、のり、納豆。
昼 お好み焼、スープ。
夜 ごはん、かにコロッケ、清し汁。

昼 チーズトースト、スープ、トマト、じゃがいも粉ふき。
夜 ごはん、オムレツ(主人)、いわしみりん干(私)、トマト、大根レモン漬。

うなぎ、食料品どっさり、郵便物、雑誌など持って、1時半家を出る。
暑い暑い。くらくらするほど暑い。中央道のパトカーのお巡りさんも休んでジュースを飲んでいる。
3時半、山へ戻る。
夜 うなぎごはん、はんぺんとみつば清し汁。

武田百合子著『富士日記』より

富士日記(49)おはぎ

おはぎは成人してから美味しいと思い始めた食べ物のひとつ。大人になるっていいよね。

6月3日(木)くもり、夜になり雨
朝 ごはん、鮭と卵と玉ねぎの油炒め、じゃがいもとわかめ味噌汁、みつばの酢味噌和え、夏みかん。
昼 カレーライス。私はドーナツを食べる。
夜 ラーメン(野沢菜と肉の油炒めをのせる)、プリンスメロン。
畑の菜っ葉の間引き。

6月4日(金) 雨風つよし
朝 ごはん、炒り卵、海苔、大根味噌汁、夏みかん。
昼 ごはん、牛肉大和煮、白菜炒め、きゅうりといか酢のもの。
夜 かけうどん、茄子と豚肉の中華揚げ煮。
雨が降るたびに、草はのび、葉や枝はひろがり、緑は深まってきて、時間が刻々過ぎ去ってゆく。毎年私は年をとって、死ぬときにびっくりするのだ、きっと。

朝 ごはん、ひらめ煮付、焼き茄子の実の味噌汁、コンフリーおひたし、山椒佃煮。
昼 ごはん、海苔、うに、卵焼。
夜 かけうどん、きんぴらごぼう、ほうれん草おひたし。
主人の電気毛布をしまう。

6月20日(日) 小雨、一日中降ったりやんだり
朝 ごはん、味噌汁、のり、うに。
昼 ふかしパン、スープ。
夜 ごはん、豚肉と高野豆腐煮付、きゅうりと油揚げとピーマンのにんにく醤油漬。グリンピース塩茹で。

6月21日(月) 終日、雨
朝 ごはん、味噌汁、鮭の罐詰、大根おろし。
昼 グリンピースごはん、コンビーフ、スープ、青菜炒め。
夜 湯豆腐(ベーコンと玉ねぎ入り)、パイナップル。

6月22日(火) くもり時々小雨
朝 ごはん、麻婆豆腐、かきたま汁、茄子丸焼。
昼 ごはん(焼きにぎり)、はんぺんとみつばの清し汁、サラダ。
夜 おかゆ、コンビーフ、春菊おひたし、バター、のり、うに。
庭の野ばらがだんだん咲く。

朝 ごはん、シューマイ、大根味噌汁、トマト。
昼 ごはん、はんぺんとみつばの清し汁、炒り卵とひき肉甘辛煮、プリンスメロン。
夜 かけうどん、ひじきの煮たの、ひらめ煮付。
夜になって豪雨となる。
昼間は二人ともぐっすり昼寝した。

朝 ごはん、豆腐味噌汁、ひらめのそぼろ、のり、卵、トマト。
昼 パン、野菜スープ、鮭と玉ねぎ酢油漬。
夜 グリンピースごはん、いんげんごま和え、がんもどき煮付、とりささみフライ。
(中略)
プリンスメロン120円、プラム1箱130円、夏みかん120円。
プラムは真赤なのに、おどろいた、このまずさ!!
隣りへしらすをあげたら、ほうれん草をくれた。

6月30日(水) 雨時々曇
朝 ごはん、じゃがいもとキャベツ味噌汁、わかめと玉ねぎサラダ、まぐろ罐詰、大根おろし。
昼 ごはん、オムレツ、清し汁、トマト。
夜 釜あげうどん、プリンスメロン。

主人はおそばを4、5人の客と食べていた。

主人は「ワグナーをきいていたら霊感が湧いて、小説の題を2つも考えてしまった」と言った。大岡さんは「貸してやるから持っていっていいよ」とおっしゃった。大岡さんは「タダでこのレコードは貰ったけれど、本当は14万円ぐらいするぞ」とおっしゃった。
お刺身を御馳走になった。楽しかった。

7月10日(土) 快晴
午前中、朝霧高原へ主人を乗せて行く。帰り、河口湖一周、サニーデで昼食。カレーライス(主人)、ミックスサンド(私)、660円。
(中略)
夜 ごはん、とろろ汁、塩鮭、大根葉漬物。

7月14日(水) 快晴
朝 ごはん、ベーコンオムレツ、牛肉そぼろ、味噌汁。
昼 とろろ汁、ごはん、塩鮭、トマトサラダ。
夜 卵のおじや、牛肉そぼろ。
陽ざかりに草刈りをする。夕方も草刈りをする。顔が火傷をしたように熱い。あまりながくしていたら気持がわるくなる。やめたら癒った。

7月15日(木) 快晴、夕方雨
朝 ごはん、味噌汁、うに、のり、卵、いわし大和煮。
昼 パン、野菜スープ、トマト。
夜 ごはん、コンビーフ、たたみいわし、おひたし、清し汁。

7月16日(金) 快晴
朝 ごはん、味噌汁、大根おろし、佃煮、卵、のり。
昼 うどんバター炒め。
夜 ごはん、とろろ汁、塩鮭。
(中略)
お盆なので仏様に作ったから、と大きなおはぎを4つ下さる。おはぎは本当においしかった。のどをすべるように入っていった。主人は1つ食べた。私は3つ食べた。

武田百合子著『富士日記』より