たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

富士日記(14)おでんのハンペンだけ

百合子さんが見ているのは、大河ドラマ第4作の『源義経』だろうか。今年はまた三谷作品をやっているらしいですね。『新選組!』『真田丸』は完走した私だが、どうも手が伸びない。

ところで、『真田丸』は著作権侵害サイトで見るしかなかった。なぜなら、いまだにNHKオンデマンドが日本国内限定だからだ。その言い訳は山ほど思いつくが、海外でも(VPNとかではなく)ネットで普通に公開されていないなら何のための配信かと思う。在外邦人としては「もちろん有料でいいので正規のきれいな映像を見せておくれ!」とずっと思ってるのに。

朝 ギョーザ10個ずつ、スープ。
昼 ふかしパン、まぐろオイル漬、サラダ。
夜 パン、チキンカツ、とろろ、もやし炒め、豆腐味噌汁、犬にもカツをやる。
主人が寝てから、一人でテレビをみている。源義経。近頃は追われる筋となってきたので面白い。今日などはとても可哀そうであった。静御前は可哀そうでない。のろのろとしていて、何一つ戦わないし、重いものを持たない。バカのようである。今日は忠信戦死の場であった。雪の中を義経と家来がとぼとぼと歩いて行くところが哀れであった。(中略)今日は、おかゆも出てこず、ただ雪の中だけであった。いつも必ず、おかゆを食べるところがでてくる。

朝 ごはん、さんま味つけかんづめ、大根味噌汁、佃煮、のり、卵。
(中略)
昼 餅にのりをまいて食べる。清し汁。
(中略)
おばさんは、千葉の人にもらったという、里芋を袋に入れてくれる。やまいもを買うと運び易いように箱につめてくれた。
「恰好のよさそうのは、先生や知り合いにやって、一寸寄ったお客さんには恰好のわるいのをやる。『ひねこびた恰好のは、粘りがあって余計うまい』なんどと言うと、わざわざデコデコしたのを選って『うまそうだなあ』なんどと言い乍ら買っていくだ」「未亡人や未成年者は食べるべからず、なんどと言えば、余計売れるだ」と、おじさんは言った。
(中略)
夜 ほうとう(豚肉団子入り)、とろろ。
5時少し過ぎに夜ごはんを食べてしまった。

野鳥園入口のそば屋で、そば2杯140円。汁が甘くて、そばがやわらかい。河口湖の駅そばの方がおいしい。
昼 餅のつけ焼、とりのスープ。
そのあと、あんかを入れて、私も主人もねる。6時間位眠りこける。起きて夜ごはん。夕方からはぐっと冷えこんできて、この前きていたときより、ずっと寒い。
夜 ごはん、粕漬さわら、大根味噌汁、じゃがいもと豚の炒め煮。

11月29日(火)曇時々小雨
朝 パンと豆乳(百合子)、ごはん、オイルサーデン、大根おろし、のり、佃煮(泰淳)。
(中略)
昼 ごはん、ハヤシビーフのかんづめをあけ、ハヤシライスにする。福神漬。主人、ハヤシライスは、いつ食べてもうまいと言った。
夕方、晴れてくる。風はつよい。
夜 手製クッキー、ポタージュスープ(とり肉入り)、サラダ。

松田ランドで一休み。カニコロッケ、ライス付を2人とも食べる。今日は丁度ひるどきで4組ほど客があった。このまえ東京への帰りに寄ったときは、近くの飯場の人が、カレーライスとカキフライを注文していた。店の女の子が「カキフライにライスをつけますか」ときいたら、その人は、しばらく考えていて「ライスカレーについているから、そんなには食べられない」と答えていた。
(中略)
夜 ひき肉、ねぎ、青のりを入れたお好み焼、スープ、佃煮、煮豆のかんづめ。

朝 おでん(私)、ごはん、ハム、おでんのハンペンだけ(主人)。
(中略)
4時半、お茶とみかんとクリームパンを食べて、早々に車を飛ばして帰る。
(中略)
今日はスタンドに以前勤めていた女事務員の結婚式があったとかで、おばさんはコテコテに髪を結いあげていた。鯛ときんとんらしい折詰もテーブルに置いてあった。
夜 ごはん、生鮭バター炒め、小松菜と桜えび炒め、じゃがいもから揚げ。
ねるとき、開拓村のあたりを走るとき真暗だったことや、歌を歌って走ったことや、富士宮の町の様子など主人に話した。カレーパンを売っていたというと、明日は帰りに買ってきてくれと言う。

武田百合子著『富士日記』より