たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

富士日記(21)あわててワカマツを服む

祝い事に限らず、一部の地域住民のイベントで特定の食品だけ消えるのは都会でもよくあること。最近は感謝祭当日でさえ開いているスーパーが増えたが、バニラアイスクリームが全然ないとか。(みんなパイ・アラモードにする)

8月20日(日)くもり 夜に雨
朝 ホットケーキ、トマトと玉ねぎスープ。
(中略)
今日は本栖へ泳ぎに行く。昼食用の、のりまきを作る間、ワカサギを掬う網を2人は作る。
(中略)
夜 ごはん、とりフライ、サラダ、いんげんバター炒め、さつまいもから揚げ。

門に大岡さんの車がある。奥様が庭を戻ってこられたところ。「今、お魚を置いてきました」。
黒鯛1尾、イナダ3尾、イセエビ1尾。頂いた。
黒鯛はカラアゲにする。イナダは煮る。イセエビを茹でる。順繰りに食べることにする。たのしみ!!
(中略)
夜 黒鯛カラアゲ甘酢あんかけ、焼き茄子、ごはん。
主人満腹。満足して、はやばやと眠る。

8月22日(火) くもり時々雨
朝 ごはん、のり、納豆、うに、卵とじゃがいも炒め、味噌汁(玉ねぎ)。
昼 ごはん、イナダ煮付、佃煮、キャベツ酢漬。
夜 ごはん、豚肉衣揚げ、サラダ、さつまいもから揚げ。
(中略)
3人ともいらっしゃい、といわれるが、私と花子は遠慮して、武田だけ、夕食に作った肉の衣揚げを少し持って行く。

朝 ごはん(肉の揚げたのをカツ丼風にする)、わかめ味噌汁、トマト。
(中略)
昼 トースト、かに玉、紅茶。
(中略)
夜 ごはん、キスの干物、佃煮、あんかけ豆腐、煮豆。

朝 ごはん、のり、うに、大根おろし、佃煮。
昼 のりまき、鮭のコロッケ。
夜 ごはん、さんま塩焼、大根おろし、糸こんにゃく油炒め煮、茄子しぎやき。

手打うどんを買いに酒屋に寄ると、裏の家で赤ん坊が生れ、近所の衆が祝いに持って行くので、全部売れてしまったという。

8月25日(金) 晴のち俄か雨
朝 ごはん、コンビーフキャベツ、納豆、のり、じゃがいも味噌汁。
午前中の陽射しつよく、ペンキ塗り、手すりを終える。
昼 トースト、ベーコンエッグ、花子はラーメン。
(中略)
夜 ギョーザ、にらを入れたギョーザ、おいしい。追加を作って食べる。

8月26日(土) くもり、むし暑し
朝 ごはん、納豆、のり、うに、大根おろし、じゃがいもとベーコン炒め。
これはにんにくを入れるとおいしい。
(中略)
昼 ふかしパン、スープ、紅茶、果物ゼリー、茄子中華風炒め。
職人、今日は休み。
夜 ハヤシライス。
7時、私と花子、吉田の火祭りへ。主人、日中は「俺も行ってみるかな」と言っていたが、ハヤシライスを沢山食べたら眠くなった、と言う。
(中略)
味噌おでん2本買って食べながらみる。
(中略)
テーブルには新しいビニール布を掛け、客を通してビールを抜き、さしみとトンカツを食べている。
(中略)
祭りで買ってきた醤油団子をお茶を入れて食べる。私と花子も食べる。

8月27日(日)くもり後快晴
朝 ごはん(昨日、縁日で買ったお赤飯をふかす)、のり、うに、卵焼、大根おろし。
(中略)
お昼に、やきとりとぶどうを出す。
(中略)
昼 ごはん、いわし大和煮、焼き茄子。

朝 ごはん、茄子とみょうが味噌汁、納豆、のり、コロッケ。
(中略)
外川さんはビール、関井さんは石衣とせんべいとお茶。

おかみさん、花子にネオマスの緑色の房のぶどうを一房くれる。

昼 ビール(主人、白土さん。私は少し)、肉団子、かに玉、御飯。
(中略)
白土さんを送ってから、主人、駅でそばを食べる。そば70円。ピース(5)千円。
(中略)
夜 ごはん、肉団子(花子、私)、釜あげうどん(主人)。

8月30日(水)1日中、雨。
朝 ごはん、のり、うに、卵、煮豆、大根味噌汁。
私が煮豆を食べると糸をひいたので、先に食べていた主人は、あわててワカマツを服む。私は服まない。私が煮たうずら豆である。
(中略)
昼 やきそば(とり、桜海老、キャベツ、ねぎ入り)、関井さん、私、花子。釜あげうどん、主人。
(中略)
「文芸春秋」の山本さん、ぬか雨の中をみえる。ビール、ロースハムを出す。
(中略)
大岡さんがいつもねころぶところのテーブルに、カナッペがお皿に盛っておいてあった。
(中略)
夜 ハム茶漬(主人、花子)、ごはん、かに玉(私)。
ぺたぺた、ぽとぽと、もの淋しい雨である。これで夏休みも終りである。

大箱根で一休み。
おでん1皿100円(百合子)、罐ビール100円、カレーライス160円(主人)、牛乳30円、ソフトクリーム60円。

武田百合子著『富士日記』