たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

『噛みあわない会話と、ある過去について』←orz

ふらふらと松屋やジョナサンに行った東京の徹夜明けを思いだす。あの朝も、あの朝も、あの朝も、すごくよかった。今はあのゴミゴミした街で一晩過ごしたいとは到底思えないけれど。

トローチの一気食いの例は知らないが、今はなきシーズケースのタブレットをお菓子がわりにしていた友達に先輩が「それ、クスリだよ」と引きながら指摘していたのを覚えている。

ところで先月出会うことができて大変喜んでいる辻村先生の作品群だが、何かのもじりも含めて「ダメそう...」と避けたくなるタイトルが多い。この短編集もそう。

徹夜で作業して、そのまま2人で駅前の吉野家でご飯を食べたり、朝マックしたりした。手伝ってもらったお礼に、私の奢りで。
「もっと高いところ奢らなくていいの?」と尋ねる私に、ナベちゃんが笑いながら「あー、じゃあ、次からは考えとくよ」と答える。白くて肉の薄い頬に、ハンバーガーのソースをつけながら言うナベちゃんのことを、本当にいい子だなぁと思った。

おやつも、チョコレートやジュース、ガムは禁止で、風邪を引いた時ののど飴とトローチだけはオーケー」
「トローチ」
それはお菓子に分類されるのだろうか。呟くと、スミちゃんがにこっと笑った。
「抑圧って怖くてさ。風邪の日に許可されたトローチが嬉しくて、飴にも甘いものにも免疫がなかったから、処方されたその日のうちに全部舐め切っちゃって母にめっちゃ怒られたよ」
「あれ、微妙に苦くない?」
「だから、そういう感覚が鈍くなるくらい甘いものに飢えてたってことなんだと思う」
スミちゃんが紅茶を一口飲む。
(中略)
お菓子は、家に遊びに来る友達に対して恥ずかしいことも多かった、という。普段、友達の家に行くと、ビスケットやチョコレートを出してもらっているのに、うちでは何も用意できない。勇気を出して母親に頼むと、「おじいちゃんにもらった干し柿があるでしょ」と言われた。

とはいえ、娘と2人だけで出かけた時にはスミちゃんにこっそりアイスを買ってくれたり、飲んでいた缶コーヒーを分けてくれたりして、スミちゃんはお父さんによく懐いていた。

辻村深月著『噛みあわない会話と、ある過去について』より