たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

アメリカ

日本人会『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(19)

日本国外で日本人ばかり誰かんちに集まって日本のもんを作って食べるのはたしかにとても楽しい。でも、彼女たちみたいな寿司は、面子に職人がいた一度だけだな。目の前で巻いてくれた手巻きが最高だった。これまでやったことがあるのはお鍋とかお好み焼き、…

トマトとシャンボン『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(18)

XXを食べると疫痢になる、という親の心配は向田邦子のエッセイにも書かれていたな。 「トマトだけ切ってくれればよいわ」 といって、トーストにトマトをはさんで、 「あーおいしい」 なんて思っているのだから、人間の好みも変るものだ。トマトを好きになっ…

アメリカでおいしいのは?『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(15)

「アメリカでおいしいのは、なんといってもローストビーフ」だそうだが、私の住む街でそこまで美味しいのに出会ったことはないなぁ...。その手の業態のお店もどうしてもステーキ、ハンバーガーになってしまう。ニューヨークを中心とした東海岸のダイナーのほ…

ドリアン『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(14)

「日本は果物にめぐまれた国で、あまり高価でもなく」という記述があり、イチゴ、白桃が挙げられているけど、今の日本は米国と比べると果物の敷居が高いと思う。こっちの人は手軽にスナックにしてるけど日本では日常食とは言えない感じ。 1年ズレこんだはず…

豆料理の缶詰『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(11)

最低限の健康な食生活の原則として、いちばん簡単でシンプルに聞こえる助言が「1日1回マメ類をたべる」「ひたすら食べるものの種類を増やす」である。それを聞いてからChipotleでも必ずマメを入れてもらうようになったし(それまではメキシカン料理のマメは…

大正9年のマンハッタンの日本人『らんたん』(4)

ゆり(30代)はコロンビア大学に、道(40代)はユニオン神学校に通学。ふたりで留学生活。こんなの楽しいに決まってる。そこにロックフェラー家との邂逅が。 訪問客の誰もが遠慮なくよく食べるので、道とゆりは週の最初に一週間分の献立を女中さんも交えてよ…

ブナの実入りのサンドイッチ『らんたん』(3)

欧米の物語にでてくる食べ物の描写にうっとりするのは大正の時代も今も変わらない。 アーラムは進歩的な学校で何をするにも男女平等です。だけど、女子寮の門限が6時で男子は夜間外出自由なことだけがどうにも納得が行きません。でも、その分、男子たちは私…

フレンチドレッシング『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(2)

手作りしたフレンチドレッシングのおいしさは、小学校の調理実習で知った。英語だのプログラミングだの壺仕込みの道徳だの、新しい科目がぎっしり詰め込まれた今の小学校で、調理実習をやる時間はあるのだろうか。そもそも家庭科の授業は...。 昼間ご馳走を…

たまごとセーヌ河『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(1)

レシピの説明がちょいちょい出てくることもあり、他の作品になく数字の扱いが興味深い。単語のひらき方は堺雅人のエッセイに似ている。どちらが先かはわからないが、連載誌だった『暮しの手帖』のかなづかいも思わせる。XX風を「ふう」に開くとことか。活版…

フライドチキンとからあげ『大草原の小さな町』(2)

フライドチキンと鳥のからあげは少なくとも日本人からしたら別もんだよな。ケンタはすでに大阪万博の年に日本上陸していて、本書は80年代に出た訳書だが、まだ一般用語としては使えなかったのかな。 とてもしあわせな毎日だった。野菜は順調に育っていたし、…

母さんと安倍『大草原の小さな町』(1)

ワイルダーがキャンセルされるようになった昨今ではなく、90年代の子どものときに読んでも「こういうことを地の文で書いてはダメなのでは」と十分ドン引きさせられた部分。改めてこだま・渡辺訳で読んでみて、この母さんの「インディアン」についての言い草…

セサミチキンとSpaghettiO "Evicted"

Matthew DesmondのEvictedの邦訳が出たと聞き、さすが採算度外視の日本語翻訳出版界!と感嘆・感謝するのと同時に、遅っ、と思わざるを得なかった。紹介されないよりはるかにいいし、決してこの本に書かれた貧困の状況が大きく変わったわけではないとはいえ…

「敬虔な」家庭でも起こる摂食障害 Becoming Free Indeed

世のメディアから遮断され、学校にも通ってないのに(母親とIBLP教材によるホームスクーリング)摂食障害になるのはちょっと意味がわからない。IBLPの環境も世間と同じ程度には有害なんだろうと推測するしかない。 It helped me to know that I could eat su…

昭和から平成『笹の舟で海をわたる』

終戦から阪神大震災まで盛りに盛り込んだ『フォレスト・ガンプ』みたいな忙しない話だった。ラスト2割の駆け足っぷりがザッツ連載小説。「てんぷら」の表記がゆれているのは原文ママです。 笹の舟で海をわたる 作者:角田 光代 毎日新聞出版 Amazon 金太郎さ…

ダンキン通い『アメリカ紀行』

2019年の一時帰国中にジムのバイクにまたがって読み上げたときは、この人タバコ吸ってるだけだな〜という印象しか残らなかった。アメリカの見つかりにくいであろう喫煙所に行き、同志と言葉を交わし、3箱一気買いする。そういう喫煙者目線の生活雑記が新鮮に…

美味しそうなものが出てこない『アメリカの素顔』

ちらほら原文を確かめたいところがあるが、この30年以上前の名著には電子版がない。だが民族や日本に関する記述を見てもわかるとおり、読みつぐには内容が古すぎるので図書館で調べるほどの熱意はない。 ありふれたじゃがいもを取りあげてみよう。今日万人の…

生牡蠣でリーダーシップを『ハーバード・ジュリアードを首席卒業した私の 「超・独学術」』

2020年のロックダウン中、YouTubeで日本のワイドショーを流し見するようになったときに、「えっ、なんでこの人がワイドショーのコメンテーターやってるの?いくらパンデミックでも仕事選びなよ...」と思った人が何人かいて、著者もその一人。 この本は良い本…

犬養道子『アメリカン・アメリカ』

Apple II、「スター・ウォーズ」シリーズが世に出た年に連載されたアメリカについての随想なのだが、活版のせいか、著者の独特のテンションの文体(勝手に盛り上がりがち)のせいか、さらに一世代前に書かれているように感じる。鮮度の落ちる、あるいは今で…

ポルトベロマッシュルーム in "Post Grad"

ちょうど先日、Habit Burgerで期間限定のportobello mushroomバーガーを食べたばかり。アンドレアとアレックスのメニューも美味しそうです。 Alex picked at the chicken sandwich she'd bought at the campus store for dinner, trying to ignore the singi…

エリザベス・キューブラー・ロス博士の自伝から

3時間ほど列車待ちで寄ったことがあるだけのスイス。寄宿学校に留学していた子が「あの国には選択肢がない。スーパーに牛乳もチョコも1種類しかない」と言っていて、さすがに1種類は大げさだろうが、あまり面白い国ではなさそう...と思い込んでいた。でも、…

In solidarity. Chanel Miller "Know My Name: A Memoir"

---注:当時、一番ムカついた加害者の父親のステートメント I was always excited to buy him a big rib-eye steak to grill or to get his favorite snack for him...Now eats only to exist. -----------------------------------------------------------…

1940年代ニューヨーク Elizabeth Gilbert "City of Girls" 

今のマンハッタンはチポレだらけやからね...(嘆息) I sat in the diner car for the whole ride, sipping malted milk, eating pears in syrup, smoking cigarettes, and paging through magazines. My prettiness, to be sure, is why a handsome man in …

それでも食を知ることができた強さと知性 "Finding Me"

11年近くの監禁中だけでなく、生まれてから誘拐されるまでの食生活も悲惨すぎる。特に缶詰やパッケージ食品の固有名詞がしっかり出してあるので「ひとつでも食べたくないのに、毎日あれだけ...ありえん」と。そんな中で美味しいものの楽しみをを記憶し、食卓…

ホワイトハウスまで Hope: A Memoir of Survival in Cleveland

ものすごく近くにアレの君臨を今も信じ続けている人がいることを知ってしまった日に...。 勇気に感謝。バイデン副大統領(当時)の歓待に感謝。 We sit on the couch, and he hands me a cold ham-and-egg croissant. A little after five, after I haven't …

しあわせのために食べる Life After Darkness

ミシェルさん改めリリーさんの勇気に乾杯。この本の感想はこちら。 Rachel basically spooned some sort of strained porridge into me.[...]The day after I found that out, I went into the kitchen and started to cook for myself. And I mean I cooked…

ヨーロッパあちらこちら 犬養道子『お嬢さん放浪記』

本書で、犬養さんが療養していたサナトリウムが近所にあったことが分かって驚いた。 お嬢さん放浪記 (角川文庫) 作者:犬養 道子 KADOKAWA Amazon <アメリカ> アメリカに行ったら、浴びるほど飲もうと楽しみにしていたアイスクリーム・ソーダも、ついぞ口に…

インスタントコーヒーにドーナツ 篠田節子著『恋愛未満』

印鑑の記述、やっぱりナンセンスよね...。署名文化の国にいる私も、「本人の代わりにマネしてサインする」とか普通にある。小さな会社では、留守の多い社長のために、何人か代筆していいことになってる人がいたり笑。同じナンセンスなら、署名のほうがいいよ…

東京のホテル飯をばっかり食べする若き日のホイットニー・ヒューストン

The first summer, I think Nippy spent almost all of her time in the pool. Between that, the pool table in the basement, and John grilling burgers and hot dogs in the backyard, we always had a bunch of kids hanging around. They'd come over …

遠きにありて、みんなで食べるハワイアン『アロハ魂』

すでに会食の場面がなつかしいなあ...。こんなにみっちり座って一緒に食事できたのだ。今年の初めまで。次にハワイに旅行に行けるのはいつのことになるのだろう。 せめて、今週はOno Hawaiianにチキン+ご飯+マカロニサラダ(申し訳程度のレタス付き)のラン…

栄養士が見た70年代のニューヨーク『朝子ニューヨークへ翔ぶ』

夕方は待望の"紅花"レストランへ火鉢焼きを食べに行く。"紅花"は、全米どこでも有名で、私が後にワシントンD.C.やシカゴに行ったとき「"紅花"がよいとタクシーの運転手にまですすめられた。 鉄板焼きのえびには皆大喜びであったが、上質の牛肉の霜ふりには神…