たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

Entries from 2023-01-01 to 1 year

ダンキン通い『アメリカ紀行』

2019年の一時帰国中にジムのバイクにまたがって読み上げたときは、この人タバコ吸ってるだけだな〜という印象しか残らなかった。アメリカの見つかりにくいであろう喫煙所に行き、同志と言葉を交わし、3箱一気買いする。そういう喫煙者目線の生活雑記が新鮮に…

居酒屋 & ホムパ小説『愛がなんだ』

「これマジうまい、食べてみな」が頻出する居酒屋とホムパのメニュウ(『暮しの手帖』っぽい表記)とが白眉の小説。 スマホなき時代は、急にごちそうを作るとなったら、本屋へ行って料理本を立ち読みするのである。 愛がなんだ (角川文庫) 作者:角田 光代 KA…

作りたくなる小説『薄闇シルエット』

むくむく創作意欲が湧いてくる小説だった。ありあわせで作る料理、手芸、思いのままに描いたり切ったり貼ったり...。早速日系スーパーで日本メーカーのウィンナを買ってきた(なぜ)。 誰かが使うあてもないものを作りまくる手芸は、縫い物はセックスのメタ…

コーラの脅威『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』

主人公はライターで出先のホテルでリモートワークまでしているのでまあまあ早めのアダプダーだと思うが、スマホがないだけで記述が随分昔っぽく見える。 コーラは骨を溶かす、というのは私も聞かされていたし、入っている砂糖の量を角砂糖で示されるとヒェー…

ウェディングめし『本日は大安なり』

学生時代、半年ほどだがウエディングプランニングの会社でバイトをしていたときのことをいろいろ思い出していた。それから、日本各地で出席したウェディングのことも。で、この小説は、15組近くのカップルをさばいたらしい日に行った神戸メリケンパークオリ…

美味しそうなものが出てこない『アメリカの素顔』

ちらほら原文を確かめたいところがあるが、この30年以上前の名著には電子版がない。だが民族や日本に関する記述を見てもわかるとおり、読みつぐには内容が古すぎるので図書館で調べるほどの熱意はない。 ありふれたじゃがいもを取りあげてみよう。今日万人の…

生牡蠣でリーダーシップを『ハーバード・ジュリアードを首席卒業した私の 「超・独学術」』

2020年のロックダウン中、YouTubeで日本のワイドショーを流し見するようになったときに、「えっ、なんでこの人がワイドショーのコメンテーターやってるの?いくらパンデミックでも仕事選びなよ...」と思った人が何人かいて、著者もその一人。 この本は良い本…

『噛みあわない会話と、ある過去について』←orz

ふらふらと松屋やジョナサンに行った東京の徹夜明けを思いだす。あの朝も、あの朝も、あの朝も、すごくよかった。今はあのゴミゴミした街で一晩過ごしたいとは到底思えないけれど。 トローチの一気食いの例は知らないが、今はなきシーズケースのタブレットを…

土のスープ『すべて真夜中の恋人たち』

冒頭はムラカミへのオマージュだろうか。聖の語りはところどころムラカミ臭がする。インタビュー集『みみずくは黄昏に飛びたつ』は好きでよく読み返す。 みみずくは黄昏に飛びたつ―川上未映子 訊く/村上春樹 語る―(新潮文庫) 作者:川上未映子,村上春樹 新…

米国でテリヤキバーガーを食べるなら『鍵のない夢を見る』

先月辻村氏を知って湊かなえ氏以上の多作ぶりに驚いている私としては、巻末の林真理子氏との直木賞対談の「今回の受賞は、この先もきっと小説を書いていくだろうと信頼していただけたからなのかもしれないと思うようにしています」が印象に残った。 林氏がど…

なつかしのFlashサイトか?『太陽の坐る場所』

筋にあんまり関係ないが、ウェブデザインを見てデザイナーを特定できる、というのは無理がある。2000年初め、ブログ登場までならまだギリギリそういうこともあったかな。でも出版されたのは2011年、レスポンシブデザインはまだ普及していないが、とりあえず…

『傲慢と善良』密林に感謝

スペイン語ばかりが聞こえてくるランドリーで、東北の被災地のサンクチュアリを頭の中に再現して読了。辻村深月氏の作品は初めて手に取ったのだが、久しぶりにアマゾンのリコメン機能に感謝した。娯楽読書が好きでよかったなぁと思わされた。いつか映像化さ…

熱源でしかない食物『路上のX』

桐野作品の中ではあまり楽しめなかったのだが、仁藤夢乃氏の解説がよかった。食の貧しさが心のすさみに直結しているのが伝わってきてつらい。自炊のみならず、かれらが選ぶ外食もことごとくチャチくてまずそう。ごくまれにまともな食事を出されるとかえって…

八千草薫『あなただけの、咲き方で』と刺身定食

八千草薫の出演作は新聞販売店からチケットをもらった(なつかしくないですか)『天国までの百マイル』のみ。だが、一度、彼女に似ているね、と言われたことがあって(そういうのって事実はどうあれ結構意識してしまいませんか。あと、彼女はジュリエット・…

貧乏人のキャビア『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』

独り者だろうが、赤子がいようが、ルームシェア、ハウスシェアが当たり前の街に住み、10年近く3住居でシェアをしてきたので、日本ではこれほど大家さんに難色を示されるのかということが意外だった。子どもに家を出て自立しろ、と言ったものの、シェアはダメ…

犬養道子『アメリカン・アメリカ』

Apple II、「スター・ウォーズ」シリーズが世に出た年に連載されたアメリカについての随想なのだが、活版のせいか、著者の独特のテンションの文体(勝手に盛り上がりがち)のせいか、さらに一世代前に書かれているように感じる。鮮度の落ちる、あるいは今で…

『素晴らしき家族旅行』理想の料理上手

たぶん20年ぶりくらいに読み返したのだが、「今日では差別ととられかねない表現が...」の注意書きが必要だと思った。でも作者が故人じゃないから第三者が故人の作品に手を加えることは云々の言い訳が使えないなあ。その90年代に確かに使われていた言葉ではあ…

パナップ最新情報『豆の上で眠る』

まさか湊先生の小説の中でパナップの現状を知ることになるとは。グリコのサイトで見ると、なんだか別物になっている。小さくなったのにお値段も160円に。100円玉をもらってアイスを買うときによく選んでいたパナップ。今度帰国したときはぜひ食べよう。「日…

『そして、バトンは渡された』 (9) 特上寿司

これ読んで3人で特上寿司6人前いいなァと思っていたら、年明けに一貫18ドルのトロをごちそうになって魂飛んだ。統一教会系の食品卸の余禄じゃなくて、知り合いが釣ってきたやつね。 おかずは里芋の煮物に鯖の味噌煮に切り干し大根。2人分より、たっぷり作っ…

『そして、バトンは渡された』 (8) シュークリームも優しい味

カリフォルニアで意外だと思っているのは、ビアードパパがつぶれないこと。日本にいたときは駅で買っていたものだが、一時帰国したときに見たら他の店に変わっていた。そしてここにも「優しい味」が。 「ケーキはいらないし、話は終わり。帰ったらどうだ?」…

ポルトベロマッシュルーム in "Post Grad"

ちょうど先日、Habit Burgerで期間限定のportobello mushroomバーガーを食べたばかり。アンドレアとアレックスのメニューも美味しそうです。 Alex picked at the chicken sandwich she'd bought at the campus store for dinner, trying to ignore the singi…

『山女日記』(4) マネをしたと思われないように...

名物らしいと耳にし、「マネをしたと思われないように」ソフトクリームを買いに行く主人公。別にいいじゃんね、堂々とマネすれば。むしろマネアピールをしたい。お店とか街中で「あなたが食べてるそれ、何?」「どこで買ったの?」って聞かれるの嬉しくない…

『そして、バトンは渡された』(7) オムライス

ときどきケチャップご飯を食べたくなるが、トレジョのケチャップで作っても美味しくないのよ。ちょっと甘すぎるのかな。 「おはよう。朝ごはんちょうどできたよ」と、森宮さんが味噌汁のお椀を運びながら言った。「おはよう......。あれ?」私は食卓を見て、…

『本を読む女』とお店の子

学生の時に確か図書館で借りて読み、万亀が帰省してコロッケ作って喜ばれなかった話だけ覚えていた。戦前戦中のある女性史としてとても興味深いのだが、特に後半から新聞連載っぽすぎる粗さで集中できない。(実際、調べたらやっぱり元は新聞連載小説だった…