たべもののある風景

本の中で食事するひとびとのメモ帳2代目

日本

なつかしのFlashサイトか?『太陽の坐る場所』

筋にあんまり関係ないが、ウェブデザインを見てデザイナーを特定できる、というのは無理がある。2000年初め、ブログ登場までならまだギリギリそういうこともあったかな。でも出版されたのは2011年、レスポンシブデザインはまだ普及していないが、とりあえず…

『傲慢と善良』密林に感謝

スペイン語ばかりが聞こえてくるランドリーで、東北の被災地のサンクチュアリを頭の中に再現して読了。辻村深月氏の作品は初めて手に取ったのだが、久しぶりにアマゾンのリコメン機能に感謝した。娯楽読書が好きでよかったなぁと思わされた。いつか映像化さ…

熱源でしかない食物『路上のX』

桐野作品の中ではあまり楽しめなかったのだが、仁藤夢乃氏の解説がよかった。食の貧しさが心のすさみに直結しているのが伝わってきてつらい。自炊のみならず、かれらが選ぶ外食もことごとくチャチくてまずそう。ごくまれにまともな食事を出されるとかえって…

八千草薫『あなただけの、咲き方で』と刺身定食

八千草薫の出演作は新聞販売店からチケットをもらった(なつかしくないですか)『天国までの百マイル』のみ。だが、一度、彼女に似ているね、と言われたことがあって(そういうのって事実はどうあれ結構意識してしまいませんか。あと、彼女はジュリエット・…

貧乏人のキャビア『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』

独り者だろうが、赤子がいようが、ルームシェア、ハウスシェアが当たり前の街に住み、10年近く3住居でシェアをしてきたので、日本ではこれほど大家さんに難色を示されるのかということが意外だった。子どもに家を出て自立しろ、と言ったものの、シェアはダメ…

『素晴らしき家族旅行』理想の料理上手

たぶん20年ぶりくらいに読み返したのだが、「今日では差別ととられかねない表現が...」の注意書きが必要だと思った。でも作者が故人じゃないから第三者が故人の作品に手を加えることは云々の言い訳が使えないなあ。その90年代に確かに使われていた言葉ではあ…

パナップ最新情報『豆の上で眠る』

まさか湊先生の小説の中でパナップの現状を知ることになるとは。グリコのサイトで見ると、なんだか別物になっている。小さくなったのにお値段も160円に。100円玉をもらってアイスを買うときによく選んでいたパナップ。今度帰国したときはぜひ食べよう。「日…

『そして、バトンは渡された』 (9) 特上寿司

これ読んで3人で特上寿司6人前いいなァと思っていたら、年明けに一貫18ドルのトロをごちそうになって魂飛んだ。統一教会系の食品卸の余禄じゃなくて、知り合いが釣ってきたやつね。 おかずは里芋の煮物に鯖の味噌煮に切り干し大根。2人分より、たっぷり作っ…

『そして、バトンは渡された』 (8) シュークリームも優しい味

カリフォルニアで意外だと思っているのは、ビアードパパがつぶれないこと。日本にいたときは駅で買っていたものだが、一時帰国したときに見たら他の店に変わっていた。そしてここにも「優しい味」が。 「ケーキはいらないし、話は終わり。帰ったらどうだ?」…

『山女日記』(4) マネをしたと思われないように...

名物らしいと耳にし、「マネをしたと思われないように」ソフトクリームを買いに行く主人公。別にいいじゃんね、堂々とマネすれば。むしろマネアピールをしたい。お店とか街中で「あなたが食べてるそれ、何?」「どこで買ったの?」って聞かれるの嬉しくない…

『そして、バトンは渡された』(7) オムライス

ときどきケチャップご飯を食べたくなるが、トレジョのケチャップで作っても美味しくないのよ。ちょっと甘すぎるのかな。 「おはよう。朝ごはんちょうどできたよ」と、森宮さんが味噌汁のお椀を運びながら言った。「おはよう......。あれ?」私は食卓を見て、…

『本を読む女』とお店の子

学生の時に確か図書館で借りて読み、万亀が帰省してコロッケ作って喜ばれなかった話だけ覚えていた。戦前戦中のある女性史としてとても興味深いのだが、特に後半から新聞連載っぽすぎる粗さで集中できない。(実際、調べたらやっぱり元は新聞連載小説だった…

『山女日記』(3) ウニ、フランスパン

アメリカ人は山の上でも下でもトレイルミックスが好きだが、私はあれを食べたいと思わないんだよいな。なんかナッツを消化すること自体が疲労する。 汗をかいたときはスパムむすびがものすごく美味しいと思う。 二人の前にはせんべいの袋やチョコレートの箱…

『そして、バトンは渡された』(6) 試験前の夜食

中学生になって初めて夜食を許されたことは忘れられない。ま、最初は小学校のテストとの違いが何もわかってなくてひどい成績でしたけどね。夜食まで食べて遅くまで何をやっていたのかと。 「はい。うどん」夜、部屋で勉強をしていると、ノックをして森宮さん…

『山女日記』(2) 山で沸かすコーヒー

山の中でコーヒー沸かすのいいな〜。私は山コーヒーの経験はないが、味噌汁を沸かしていただいたことはある。軽装備で行けるコースながら、地元のレスキュー隊で副業でガイドをしている方に案内をしていただいたとき。登る前にスーパーに行ってお弁当を買い…

『そして、バトンは渡された』(5) アズる

料理をいやそうにいじり回す人(父親語では「アズる」という)と同じ食卓についていると落ち着かないのはよくわかる。もちろん、食事は命にかかわることであっていろいろ事情もあるから絶対ジャッジはしないけど、アズっていることを相手になるべく気取らせ…

『そして、バトンは渡された』(4) 手作り餃子

餃子は数多ある大人になってから好きになった食べ物のひとつだ。ただ、これに関しては「実家のしか知らなかったときはとくに興味がなかったが、外のを食べてみて美味のポテンシャルがあることを知った」料理である。実家のはニラがやたら多かったんだよね。…

『山女日記』(1) いちご大福

実は、途中まで、『淳子のてっぺん』『バッグをザックに持ち替えて』の著書がある唯川恵先生の小説だと思い込んで読んでいた...。もちろんそれで読書体験が変わることはないのだが、なんかすいませんという気になった。Kindleだと毎度表紙を見ることもないの…

『そして、バトンは渡された』(3) 学食

日本の大学の学食、好き。と言っても在学時はそんなに安いとも感じられずほとんど行かなかったが、卒業してから、幸い?仕事で方々の大学に行く機会があって、中でも同志社大、阪大、京都芸大のは思い出深い。女子大はオサレメニューやデザートもいっぱいあ…

『そして、バトンは渡された』(2)ザ・優しい味

瀬尾まいこさんの文章にはハッとする修飾が随所に見られる。「まっすぐに涙を落とした」とかね。でも、写経してみると、「優しい味」をわりと多用していることがわかった。 「優しい味」は私にとって思うところの多いフレーズで、最初にピックアップしたのは…

『そして、バトンは渡された』(1)勝つ丼

日本食レストランでバイトをしていたとき、かつ丼は大人気だった。でも、アメリカ人、結構ご飯を残すんだよな〜。あの店の飯比がおかしかったのかな〜。 こないだ3年ぶりに日本に行って、なか卯の丼(かつ丼ではなく牛玉丼)を食べられたのはほんとうに嬉し…

『オール讀物』と大判焼きとパジャマと 林真理子『成熟スイッチ』

あまりにも共感した箇所。本のある光景はしあわせよ。今はさらに書店や「貸本屋」に行かなくても、ゴロゴロしたまま本を買って読み始められるという20年前は想像もしなかった世界なのだが、学生時代に図書館から出てくるときのホクホク感、就職してからの湯…

桐野夏生『ハピネス ハピネス・ロンリネス』タワマンの食生活

本筋に関係ないけど、高〜いビルに住みたがる人の気がしれない。高〜い集合住宅で育つ子と土のそばの一軒家で育つ子では人生観が全然違うだろうな(どっちのほうがいいという話ではない。もちろん)昔、一瞬不動産の広告を作っていたことがあった。まだ入居…

林真理子著『テネシーワルツ』

この昭和の終わりに発表された小説を20年ほどの間に3形態で読んでしまったことになる。単行本、文庫本、そして文庫本を底本にした電子書籍。スタアが出先で振袖の着付け直しができなくなったところに洋服を持ってかけつけ、その表情の不潔さにゾッとする、と…

海を渡る「ジャワカレー」湊かなえ『往復書簡』から

そう、アメリカで入手できる日本のカレールーの中でも私の観測範囲ではジャワカレーが一番人気だ。この彼のようにあえて「ジャワカレー」を指定する。他のと比べて高めなことが多いが、こくまろよりゴールデンカレーよりジャワカレー。最悪妥協して一部の米…

『幸福な食卓』から

初めて手に取った瀬尾まいこ氏の小説。大変よかったのだが、兄妹で「愛おしい」「ぎゅっとしたい」と言い合うのが気持ち悪い。フィクションだけど。フィクションだから。 最近、空腹だけど何も食べたいものが思いつかない、無理には食べたくない、みたいな状…

林真理子『ミルキー』

些末なことだが、会話の中で「カレーライス」とは言わないよね。でも、中学校で美術の先生と理科の先生が結婚することになって、異動が決まったほうの先生が朝礼で挨拶に立ち、「みんなの目が三角形になってるんだけど...。XX先生(お相手)とはパチンコに行…

湊かなえ『母性』から

「当時の少女マンガの主人公はこれが好きだったし、タイトルにもミントという言葉はよく使われていた」←わかる。荒川静香氏が歯磨き粉みたいで苦手だと言っていたっけ。 そんな状態で、喫茶店で売っているケーキを2つ詰めてもらった箱を、お母さんと一緒に食…

『燕は戻ってこない』から

『東京島』(何も覚えてない)以来、10年ぶりに手に取った桐野夏生。最近の作品は、冒頭の5ページで無理になったりしたのだが、今回本作を読むことができて、ずっと書き続けてくださってありがとう、という気持ち。面白かった。終わりもすごくよかった。私も…

富士日記(57)ついに完結

中断を経た終盤はやや毛色が変わって夫氏のセリフの書き取りが増え、初めから読んできた読者にとっては『エースをねらえ』11巻以降のような寂しさがある。 この「おいしいと言う」の連打が「あめゆじゅとてちてけんじゃ」っぽい。 9月14日裏の氷川様の祭礼。…